Fashion. Beauty. Business.
イケイケ30歳社長に心つかまれた!
ロン毛にトンボ眼鏡という、実にイケイケ(死語ですか?)な雰囲気のyutori片石社長(30歳)ですが、「組織は一度道しるべを決めたらそこに重力が発生してしまう」「大変さを抱えながら、いかに会社の価値を磨いていくかに企業としての本質を置いている」と、出てくる言葉はどれも芯を食っていて強い!こんな言葉がポンポン出てくるリーダーって、年齢問わずそうそういないですよね。
「ファッションって、どこまでいっても本来は若者のもの」「(他の経営者は)若くないからじゃないですか」といった言葉に、ギャー!と悲鳴を上げつつ頼もしさを感じる元・若者な業界人は多いと思います(私含む)。あのころの初期衝動を思い出し、頑張ろう!とミドルも心掻き立てられるインタビューですのでぜひお読みください。
片石社長のyutori経営「終身雇用が最高でしょ!」、社員は平均23.8歳 ・180人を率いる
PROFILE: 片石貴展/yutori社長

今、業界人の注目を集めるアパレル企業といえばyutoriだ。2023年12月にアパレル企業史上最短上場を達成したが、片石貴展(たかのり)社長は30歳で、社員の平均年齢は脅威の23.8歳。社員の若さ故の初期衝動をエンジンに成長を続けており、24年3月期の決算では前期比74.9%増を達成している。自社のYouTubeチャンネルに登場する個性的で華やかな社員たちの様子に“Z世代企業”とカテゴライズしてしまいそうになるが、片石社長自身は「終身雇用最高」と話すなどどうやら見た目とのギャップがありそう。とにかく気になる存在のyutori片石社長に、経営方針から自身のコンプレックスまで聞きたい質問をぶつけてみた。
他企業との違いは圧倒的な若さ
WWDJAPAN(以下、WWD):yutoriといえばマルチブランド経営。すでに29ブランドを運営し、5年後には数億円規模で70ブランドの保有を掲げている。その方針は今後も変わらない?
片石貴展yutori社長(以下、片石):変わらない。むしろ個々人の好みがどんどん細分化していっているから、創業当初に描いていたブランド数より増やさないといけない感覚がありますね。組織は一度道しるべを決めたらそこに重力が発生してしまうので、メインブランドを100億にする方針で進めていた組織がマルチブランドに切り替えるのってかなり難しい。僕らは最初に考えていた見立てが予言的だったというか。しっかり時代がその方向に変わっていったなとは思います。ラッキー。
WWD:ブランドが多いとオペレーションが大変になると思うが、それはどう捉えているか。
片石:最初からブランドをたくさん作るという前提に基づいた組織設計をしているから、イレギュラーな対応はあってもそれを大変だとは捉えていない。ブランドの管理は大変ですけど、大変さを抱えながらいかに会社の価値を磨いていくかってことに企業価値の本質を置いている。全然やるよっていう気持ちでいます。
WWD:アパレル経営者は多種多様なブランドを展開したいと言いがちだが、実現できている企業は少ない。yutoriはほかと何が違うのか。
片石:若くないからじゃないですか。自戒を込めてあえて断定的に言っていますが。ファッションってどこまでいっても本来は若者のものだと思うんです。ストリートファッションを生み出すカウンターカルチャーって熱量と衝動から来るものだし、その無鉄砲さも含めて若さ故のものかなって。その爆発力に自分はすごく魅力を感じる。誰かが狙って作ったものじゃなくて、自然発生的にそうなってしまったリアリティーのあるムーブメントが面白いなって。うちは若者の初期衝動をビジネス化することを掲げているけど、「初期衝動」と、維持が必要なビジネスって本来は矛盾を抱えている。だからいかに品良く狙いを入れるかはすごく難しいところだなと思います。
WWD:新ブランドはどういう流れで立ち上がる?
片石:コンペとオーディション形式の2軸あります。コンペは大体半年〜3カ月に1回の頻度で新規のブランドアイデアを募ってかぶったものを採用しています。感度の高い子たちの間でかぶるってことは流れが来るってことなんで。ただそれだと、社員の置きに行ったアイデアを手堅く立ち上げるってことになりがち。なので外部からも参加できるオーディションが効いてくるんです。オーディションにおいては僕も社員と票数は同じなので、最後まで誰が受かるか分からない。意思決定のロジックを分散することがブランドの多様さにつながっています。
若者の初期衝動と横意識が推進力
WWD:社員の意欲や能力を引き出すメソッドはある?
片石:ミニマルな単位で組織の機能を分けて、自発的な意思決定を促す。例えば、SNS運用の担当になったら、基本的に責任はその子が全部持っています。短期的に失敗しても中長期で成長するよねっていう考え方なんで。上から言われるより、自分がやりたいからやるエネルギーの方が高い。そういうピュアな衝動を会社として尊いもの、価値の大きいものと定義しています。あとは、やっぱり競争意識もあるのかな。同世代のセンスが良くて魅力的な子が社内にたくさんいるんで。結局、若い時って競争したいじゃないですか。横を意識して仕事するマインドが組織の勢いにうまくつながっているのはすごくあると思います。
WWD:yutoriの強みは若者の初期衝動。しかし、当然ながら社員は年を重ねていくがそれはどう捉えている?
片石:若い子に売るって決めたブランドはちゃんと若い子がクリエイティブディレクターをやる。その新陳代謝を継続すれば、ブランドが年を取れば取るほど自分たちのマーケットの守備範囲は広がっていくだろうと考えています。ただ、会社として若い子の採用は常に継続していかないとダメだなっていうのは思いますかね。
WWD:認知向上を目的に始めた自社YouTubeも、採用エントリー数の増加につながっている。
片石:なんの演出もせずに会社の内情をそのまま出しています。社内のありのままを流して平均再生回数5万回とか取れるのが直近の目標ですかね。上場企業というレッテルとyutoriが持つ若さや面白さのギャップがいい方向に働いているなっていうのをすごく感じます。未上場でクリエイティブで独創的で若い子がたくさんいる会社なんてたくさんある。クリエイティビティの面で言ったらそこには劣ると思いますけど、上場企業の中ではかなりエキセントリックな集団だと思うんで。
WWD:採用の基本方針は会社とのマッチング?
片石:そうっすね。けど、面接、課題、社長プレゼンなど意外とステップは多いんです。学歴は僕自身は全然見ていません。一応、採用基準としては優しい、強い、面白い。ほぼ日の受け売りなんですけど(笑)。若い子だったらやっぱり数字、ある程度フォロワー数がいる子じゃないと受からなくなってきている。ファッションなんで、見た目良くておしゃれで協調性もあって人間的に面白くてって、もうほぼ全部持っているやつみたいな感じ。300人応募があって1人受かるか受からないかくらい、かなり狭き門です。
WWD:社員に対してはどのように向き合っている?
片石:自社YouTubeのコメント欄で衝撃的だったのが、「なんでこんなダメなところがある人が会社で働けるの」みたいなコメントがあったこと。捉えている時間軸が一般とは全然違うんだなと思いました。僕は一生yutoriをやるし、社員もそうだと思っている。つまり終身雇用です。時間軸が長いと、人の可能性を待てる時間も長くなる。構造的に僕らが強いのはそこにあるかなとは思います。
WWD:終身雇用。時代と逆行していますね(笑)
片石:終身雇用最高じゃないですか。ちゃんと給料も上がって個人としても成長し続けていく終身雇用ができたら一番いい。そう思いませんか?組織の内情は見た目ほど今っぽくなくて、ある意味昭和な面があります。例えば、みんなめちゃくちゃ飲みに行くとか、喫煙率が超高いとか。いわゆるZ世代のイメージって、基本リモートワークで働いて無駄な関わりはしない。でも、うちは基本フル出社でオフィスも私語めっちゃ多いんで。全然スマートじゃないですし、古き良きみたいな部分は多分にあります。
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アシックス、テニス事業を「ランニングに次ぐ収益の柱に」 社長直轄で強化開始
アシックスは、テニスやバレーボール、サッカー、ワーキングシューズなどで構成するコアパフォーマンススポーツ(CPS)事業の成長戦略を発表した。CPS事業の中でも特にテニスシューズは、圧倒的な基幹事業である「ランニングに次ぐ収益の柱に育てる」と富永満之社長COO。富永社長直轄の“Tプロジェクト”を立ち上げ、トッププレーヤーとの製品の共創や草の根でのブランド浸透の両面で強化を進める。2026年12月期には、テニスシューズで売上高300億円を目指す。
「先日、全仏オープンテニスを視察に訪れ、当社製品のマーケットでの強さ、伸び代を実感した」と富永社長は投資家やアナリストに向けた説明会でコメント。全仏大会に出場した男子選手128人のうち、グランドスラム24回達成のノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)選手を含む31人がアシックスのシューズを着用しており、うち20人はアドバイザー契約選手以外だったという外部調査を提示した。アシックスの31人に対し、競合のナイキは21人、アディダスは16人と、アシックスがシェア1位。結果を受けて「多くの地域においてテニスシューズでアシックスはシェア1〜2位となっている」と自信を見せつつも、「競合メーカーも強く圧倒的な1位とは言えない」と続ける。
ランニングカテゴリーで行ってきたのと同様に、ユーザーテストで集めたアスリートやテニス愛好者の声と、アシックススポーツ科学研究所による動作分析などのデータを融合し、製品を進化させていく。また欧州を中心に、選手たちへの影響力が大きいコーチが参加するテニスアカデミーを活用し、ブランドへの信頼感を醸成、シェア拡大につなげる。「ランニングのトップ選手は一般消費者にはなじみがないケースもあるが、テニスのトップ選手はスーパースターであり、それゆえラグジュアリーブランドが選手をスポンサードしていることもある。われわれもテニス選手と契約することで、会社やブランドとしての認知向上につながれば」という狙いもある。
CPS事業ではテニスに次いで、バレーボールなどのインドアスポーツ、さらに国や地域のニーズに合わせて、サッカー、バスケットボールといった競技も強化していく。アシックスのカテゴリー別23年12月期売上高は、基幹のパフォーマンスランニングが前期比10.7%増の2859億円。CPS事業は同33.2%増の721億円、カテゴリー利益は128億円だった。オニツカタイガー事業やスポーツスタイル事業も成長著しいが、売上規模としてはCPSがパフォーマンスランニングに続く。
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「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。
