ファッション

北村匠海と「ディオール」のもの作りと表現の共鳴

「ディオール(DIOR)」が2024-25年秋冬メンズ・コレクションを1月19日に発表した。日本から参加した俳優、アーティストの北村匠海は主演のネットフリックス(Netflix)オリジナルドラマ「幽☆遊☆白書」が週間グローバルTOP10で初登場1位を獲得するなど、その活躍は言わずもがな。一方で11年からは4人組バンド、DISH//のフロントマンとして活動している。

北村は今回、初めて訪れたというパリの街と時を超えて息づく「ディオール」の歴史や美意識、もの作りが自身のクリエイティビティーを刺激したという。短い滞在となったパリの思い出とともに自己表現と「ディオール」から受けた影響について話を聞いた。

演じることが全ての表現の根底

俳優、アーティストとして活動する北村。俳優としては小学生のころからキャリアを積み、またDISH//のフロントマンとしての顔を持ちながら、さまざまなことに挑戦する。北村が表現をすることについてのこだわりは実にシンプルだ。

「僕は俳優として映画やドラマに参加したり、アーティストとしては言葉を書いて届けたり、作曲もしています。どれもが違うベクトルの中で、自分のスタンスは1枚何かをかぶっている感覚。演じることが好きなことが理由かもしれないですが、常に何かを演じているので、誰にでもなれることが自分の基本姿勢なんです。役者であることが全ての表現の根底にあるという気がします」。

一見、視点が内に向くアーティストと“何か”になりきる俳優とでは、真逆のアプローチのように見える。自身の個性や感情とはどのように対峙してきたのか。

「役を演じるときの自分は作品の1つのピース。役者として生きてきた時間も長いので、さまざまなピースを持っているから、普段では感じ得ない感情がいくつも引き出しにあるんです。実際に自分が体験したことのない役を演じることもあります。現実ではなく芝居の世界ですけど、そのときの感情はとてもリアルなんですよね。その、現実と想像上の感情の相互作用が俳優にも音楽にも生きているんだと思います」。

「ディオール」のもの作りへの共鳴

役柄の感情の起伏を丁寧に捉え、繊細な芝居を得意とするのは、自分の興味に純粋に向き合ってきたから。その積み重ねが今の北村匠海を作った。

「いろんなものの融合体でありたいと思うんです。常に何かを演じ続けていないと立っていられないからなんです。すごく大股で立っていて、両足の間にはいろんな表現の塊がブワーッて連なっている。どこを切り取っても自分であって、自分じゃないような感覚を持ち続けています。あらゆるものを横断して、いろんな街の空気を吸って、自分じゃない自分を探し続けた先にあるのがオリジナリティーだと思います」。

では、あまたの表現を続ける北村に「ディオール」のもの作りはどう映り、どんな影響を与えたのだろうか。

「今まで、『ディオール』を着たときに、なぜ自分の肌に合うのかずっと疑問に思っていたんです。今回、『ラ ギャラリー ディオール』でブランドの歴史やクラフツマンシップといったもの作りの原点を知って、答えのヒントが分かったような気がします。それは“ルーツ”です。デザイナーのバトンがつながれていく中で、それぞれのオリジナリティーは積み重ねられるけど、一貫してムッシュ ディオールが作り上げたルーツが存在していますよね。例えば、自分自身のルーツをたどると、子どものころからフランス映画やさまざまな監督の作品を見てきたし、音楽はブリットポップを聴いて育ってきた。何かを表現するときに迷ったらルーツに立ち返るようにしています。そうして、安心だったり居心地の良さだったりを感じることができて、初めて前に進める感覚があります」。

改めて「ディオール」と出合い

今回はパリの街に雪が降り積もる中、「ディオール」を着て街を歩いたときに感じたことがあるという。

「フィッティングをしたときに、率直に美しいと感じたし、何より着ていて楽しかったんです。僕は趣味の音楽、レコードも古いものが好きなんですけど、最近、自分の好みが少しずつ変わってきたんです。ルーツに今が重なる瞬間というか、今回でいうと、自分の好きなスタイルに『ディオール』のエレガントさがつながってうれしい。端的に今の『ディオール』に触れている高揚感ともの作りから感じる心地よさも加わって、改めて出合い直したという感じです」。

時には内面をむき出しにしたり、寡黙なキャラクターを演じたり、繊細な芝居とは異なり、自身のプライベートでは感情の起伏が少ないという。そんな北村が今回の撮影で自分の新たな一面に気付いたこともあった。

「演じる役によっていろいろな印象を持たれるんですが、プライベートだと感情の起伏が少ないんです。例えば『幽☆遊☆白書』で演じている浦飯幽助のようなイメージとは違うんですよね。プライベートでは落ち着いて毎日を過ごしている中で、今回はパリで『ディオール』の洋服を着たときに、『自分って、こんな無敵な感情になれるんだ』っていう、すごくポジティブなマインドを感じました。なぜかはわからないですが、今は楽しくて帰りたくないっていう気持ちです」。

「幽☆遊☆白書」の世界的ヒットも追い風になったのか、今後は「日本の映画やドラマ、音楽がさらに世界に広がっていくこと」が理想と話し、そのためには「いろんなことをキャッチしていくことが必要だと再確認できました。未来に向けて何を吸収できるかは分からないですけど、またこの場所に戻ってきたいです」と将来を展望した。

MODEL : TAKUMI KITAMURA
MOVIE DIRECTION:KEISUKE OGAWA
PHOTOS : KAE HOMMA
HAIR:YUJI OKUDA (ARTLIST PARIS)
MAKEUP:AYA FUJITA (CALLISTE AGENCY)
COORDINATION:KO UEOKA
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クリスチャン ディオール
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