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シップスが初のECブランド
昨年あたりから、ユナイテッドアローズが2021年秋にスタートした「シテン」のキルティングバッグを持っている若い男女を街で見かけることが増えています。「シテン」は今は実店舗も出店していますが、当初は同社初のECブランドとして、弱みである若年層開拓のために立ち上げられました。
シップスも同社初のECブランド「カランシエル」を7月に立ち上げます。詳細は1本目の記事をお読みいただきたいですが、若者向けの「シテン」に対し、「カランシエル」は40代女性向け。元々シップスファンだったけれど、今は離れてしまっている層などがターゲットでしょうか?「シテン」同様のヒットを期待したいですね。
シップスが初のECブランドを今秋立ち上げ 40代女性に向けたフレンチスタイル
シップス(SHIPS)は、新たなウィメンズブランド「カランシエル(QUARANCIEL)」を、2023-24年秋冬シーズンから始動する。同社初の試みとして、7月14日に立ち上げる公式ECサイトを主販路に販売する。
40代女性をターゲットに、フレンチスタイルを軸とした上品で洗練されたアイテムを提案する。商品構成はアパレル8割、雑貨2割。本格的なメンズ仕様のディテールと、スタイルを美しく見せるパターンメーキングが強みだ。
たとえば、ブレザーは直線的でメンズライクなシルエットながら、絶妙なカーブを描く大きめのピークドラペルで女性らしさを表現した。素材は尾州のポリエステルレーヨンを採用し、最終加工でドライなタッチに仕上げた。膨らみと張り感、仕立て映えする自然な光沢が特徴だ。ブレザーと同素材のクリースパンツは、ヒップ回りにゆとりを持たせつつ、裾に向かってシャープに入った脇のラインが腰の位置を高く見せてくれるためスタイルアップが叶う。トレンチコートは、高めの台衿や肩のガンパッチ、ウエストや袖口のベルトなどの本格的なディテールは残しつつ、ポリエステルを採用することで、通常の綿ギャバジンのトレンチコートよりも軽量に仕上げた。
価格帯は、主力業態の「シップス」と「シップス エニィ(SHIPS ANY)」の中間に位置し、中心価格はアウター1万6000~2万5000円、ジャケット1万6000~2万円、ワンピース1万2000~1万5000円、ボトムス1万1000~1万4000円、トップス1万~1万3000円。
公式サイトやSNSでは、通勤着の悩みを解消する着回しやメイク術、商品紹介のショート動画などの「多忙な女性に寄り添う」コンテンツを企画する。また、スタッフによる有人チャット接客サービスを提供し、D2Cブランドならではのデジタルを活用した相互コミュニケーションに力を入れるという。
現在シップスは、主力業態の「シップス」で46店舗、「シップス エニー」は8店舗運営する。「シップス」では、「ゼロ バイ ワンズ(0 BY ONES)」や「シップス リトル ブラック(SHIPS LITTLE BLACK)」などのレーベルを販売する。同社は「カランシエル」について、「『シップス』ネームが入らない単独レーベルとして、メインレーベルの1つに育てていく。強みを生かした商品群を、より明確なターゲット層に届けることで新規顧客の開拓を狙う」と話す。
「フェンディ」の軽やかなクラフツマンシップ賛美に喝采 2024年春夏メンズショーに隈研吾コラボも
「フェンディ(FENDI)」は、イタリア・フィレンツェのメンズ見本市ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)にゲストとして参加し、2024年春夏メンズ・コレクションを現地時間15日に発表した。会場は、同ブランドがフィレンツェ郊外の田園地帯に22年秋に新設したレザーグッズの生産拠点「フェンディ ファクトリー」だ。ショー開催の数日前に、国際的な建築物の環境性能評価制度“LEED”の最高評価レベルであるプラチナ認証を取得した場所でもある。地元の植物と、「フェンディ」が新しく植えたオリーブ園が広がる穏やかな地で披露したのは、クラフツマンシップへの賛美をスタイルへと転換した、同ブランドらしいユーモア溢れるクリエイションだった。
ゲストが会場に到着すると、職人たちがバッグやレザーグッズを実際に製作している現場の合間を進んで行く。職人の年齢層は、ベテランから若い世代までさまざま。ゲストは、生産レーンの間に設置されたシートに座るまで、全てのアイテムが職人たちの丁寧な手作業を経て形になっていく様子を見ることができた。
手仕事と最新技術の融合
24年春夏メンズ・コレクションは、職人たちの手仕事とテクノロジーの融合をスタイルで表現する。ベースとなるのはメンズでは普遍的なワークウエアだ。コットンとレザーを使ったワークウエアらしいパッチポケットをコレクション全体に散りばめ、胸元のネームカードや首にかけたメジャーでユニホーム感を一層強調させる。
ファーストルックは、ベージュのコートとスラックスのセットアップに、肌が透けるほどざっくりと編んだニットを合わせた。ベーシックなシャツはワンピースのように縦長に変化させ、ワークエプロンをスカートのようにスタイリングしたりと、硬質なワークウエアに、しなやかなフォームやフェミニンなディテールを取り入れていく。ワークの再解釈として、ハサミやドライバー、ハンマーなどをシャツの柄としてプリントするアイデアは、「フェンディ」らしいユーモアだ。トスカーナの風景に思いを馳せて、カラーは焼けたような色味のブラウンやテラコッタ、深いインディゴを多用。アイコニックな“FF”ロゴは、ニットのシアリングコートに織り込んだり、デニムにはジャカードで浮き上がらせたりと、あらゆる手法でクラフツマンシップと象徴的なモチーフを結び付けた。
アクセサリーは、シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)=アーティスティック ディレクターの軽やかなクリエイションを「フェンディ ファクトリー」の確かな技術で形にする。かごの編みや結び目で装飾したジャカードの“ランチ バッグ”や、レザーをデボスした“スケール”などでアイコンバッグ“バゲット”“ピーカブー”などをアップデート。新作のミニハンドルバッグ“フェンディ キヨード(FENDI CHIODO)”にはシボ感のあるグレインレザーを使い、繊細な構造に仕上げている。
隈研吾との協業も披露
さらに、建築家の隈研吾と協業したプロジェクト“フェンディ ケンゴ・クマ”のアイテムも披露した。“ピカーブー”や“バゲット ソフト トランク”、スニーカー“フェンディ フロー”に、隈建築を象徴する編み上げた竹や、シラカバ樹脂、布から作った紙と和紙を混ぜた和蘭(わらん)紙のほか、トスカーナのオリーブの木で構築した。自社だけでなく、国やジャンルを超えてクラフツマンシップを讃える姿勢を見せた。
フィナーレには、シルヴィア・フェンディ=アーティスティック ディレクターを先頭に、ファクトリーで働く職人たちが列をなしてランウエイを歩いた。それぞれの表情を見ていると、慣れない状況にややはにかみながらも、誇らしげに堂々としている姿が印象的だった。昨今のショーのフィナーレは、多くのゲストがモデルにスマートフォンを向けるため、大きな拍手に包まれた雰囲気はなかなか見られない。しかし「フェンディ ファクトリー」の職人たちに送られた拍手は、どのショーよりも盛大だった。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。