ファッション

Z世代大学生が語る「私たちがレザーを選ぶ理由」【革製品のサステナビリティを考える Vol.1】

 ファッションアイテムを手に取る際に、「素材がサステナブルかどうか」を意識する消費者は増えている。あふれる情報の中から取捨選択し、自らの選ぶ基準を持つことが必要だ。本連載では大学生、セレクトショップ社員、ファッションデザイナーといった、業界のさまざまな立場にある人々にインタビュー。ファッションの定番素材である「レザー」との関わりやイメージを聞いた。第1回はファッションサークルに所属する大学生2人。Z世代の目にレザーという素材はどう映っているのか。

長く使えて、古くさくならない

橋本圭史さん(以下、橋本):今日着ているレザーコート、かっこいいね。

関日真里さん(以下、関):これ、実は祖母のお下がりなんだ。自分で何度も修理しながら着てる。母のお下がりでもらったレザージャケットもお気に入り。

橋本:かっこいいお母さん、おばあちゃんでうらやましい!昔のものなのに、全然古臭くない。

関:いつかこれを自分の子供にも着てもらえたら、なんて思って大切にしてる。橋本くんが着ている革ジャンはまだ結構新しいみたいだけど、自分で買ったの?

橋本:二次流通で購入した「ブラックミーンズ」で、7万円だった。レザーって流行に流されないし、いつになっても着られる“保証”があるから、後悔もない。ただ、新品で買うなら清水から飛び降りる覚悟は必要だね。

革のムードやカルチャーは
他の素材では「代えがきかない」

WWDJAPAN(以下、WWD):革の魅力とは?

橋本:初めて革製品を買ったのは高校1年生の時で、財布だったと思います。そこから汚したり、傷つけたりしてかっこよくしていく、革独特の魅力にのめり込んでいきました。この革ジャンも着倒しながら、自分の人生の一部にしていけたらなって思います。

関:私はどちらかというとモードな服装が好きなんですが、そういうテイストの服装に合わせても艶っぽく見せてくれるのはレザーならでは。(レザーは)ファッションアイテムとして、懐が広い素材だと感じます。ただやっぱり、高い.....!自分でも気に入ったら買おうかなと思うんだけれど、なかなか価格もあって勇気が出ずに、そのままずるずるきてしまって。

橋本:ファッションサークルに所属している僕らでさえこうなんだから、一般の若者が革製品を手に取ることは、めちゃくちゃハードルが高いだろうね。実際に着てみてどれだけテンションが上がるかとか、どうやって手入れしたら長く使えるのかみたいな、革の面白みや付き合い方を身近に感じられたら、興味を持つ若い人も増えそう。

革にまつわるさまざまな言説
最も信用できる情報は“人”

WWD:近頃は環境への配慮をうたった代替素材も出てきている。

橋本:知っています。植物由来の素材を使っていたり、リアルレザーよりも安価に手に入ったりするようですね。SNSを見ていても、そういった素材を使った服をカッコいいビジュアルで見せているブランドを目にすることも増えていて、「おっ」と思うことはありますね。

関:ただ、それを革の代わりとして買うかと言われると・・・・・・どう?

橋本:やっぱり実際にものを見てみると全然違うかな。僕は元々バイクとかパンクみたいな文脈から興味を持って革製品に触れた。時代遅れな感覚かもしれないれど、レザーにしか感じられない土くさくて、男くさいムードが好き。革が持つムードやカルチャーは、他の素材では取って代われないものだと思う。

WWD:レザーの製造工程などに関する知識は?

関:革を作るために動物を殺めることはなく、食肉用の副産物である皮を使っていることは聞いたことがありました。私は大学の家政学部服飾美術学科でファッションのことを主に学んでいて、授業の中ではサステナビリティに触れることもあります。

橋本:僕の専攻は国際経済関連で、サステナビリティやSDGsは必ず触れるテーマ。だから周りの学生よりは“意識が高い”のかも。

関:私たちのように、比較的サステナビリティと結びつきやすい領域を勉強している学生と、そうでない学生の知識や意識の差はどんどん開いていると感じます。興味がある人は積極的に発信までするから目立つし、興味を全く持たない人もいる。大学の授業では、革について「環境に悪い」という言説を紹介されることもあるし、一方で「サステナブル」な方向に世の中が傾きすぎて、その歪みも生まれているということを耳にする。そういう知識も蓄えながら、自分なりの判断軸を持ちたいと思うな。

橋本:ネット記事にもいろんな言説があふれているし、インスタグラムではいろんな情報が流れ込んでくる。目の前の情報を鵜呑みにすることなく、一旦自分の中で腹落ちするまで解釈することが大事だと思ってる。

関:私は服に関することであれば、一番信頼できる情報源は、周りにいる人の話。ブランドや素材なら、それを着ている友達やセレクトショップの人に聞くのが1番いいと思っているし、そういう人が薦めるものを手に取りたい。私は個人的には、価格がリーズナブルというだけで安易に手を伸ばすこと自体に、抵抗を感じる。世の中にはすでにいい素材や思いを持って作られた服があるのだから、それを大切に長く使ってあげることが一番サステナブル。革製品もそういう理由で手に取る。それが私の持論かな。

革にまつわる4つの“誤解”
解消へ取り組みを加速

 革のタンナーや革製品の製造、卸業などでつくる日本皮革産業連合会は、皮革や革製品のサステナビリティを発信するステートメント「Thinking Leather Action」を策定した。事業の座長を務める川善商店社長の川北芳弘氏は、皮革と革製品に関しては近年、4つの“誤解”が生まれているとする。「皮革/革製品のために動物を殺しているという誤解」「革製品を作るのをやめれば、畜産でのCO2が減るという誤解」「天然皮革は石油素材に比べて環境負荷が高いという誤解」「革の代替素材は天然皮革よりサステナブルであるという誤解」を挙げる。正しい理解促進のため、企業や学生向けの出張講演やプロモーションなど、組織としてさまざまな取り組みを進める。

問い合わせ先
日本皮革産業連合会
03-3847-1451