ファッション

「リーバイス」のジーンズ150年の歴史 アメリカと共に繁栄し、世界中に支持されるまで

 リーバイ・ストラウス(Levi Strauss)社は、今から150年前の1873年、リベット付きのワークパンツを世に送り出し、後年、そのパンツは「ブルージーンズ」と呼ばれるようになった。つまり今年は、「リーバイス(LEVI’S)」がジーンズを生み出して150周年のアニバーサリー・イヤーだ。
 この150年の間、「リーバイス」はどんな歴史を歩み、世界中の、誰もが知っているブランドへと成長を遂げたのだろうか?ここでは世界の歴史、世界のファッション史、時代を彩ったオピニオンリーダーとの関係性などを踏まえながら、「リーバイス」の150周年の歴史を振り返る。

20〜30年代のインフルエンサー、
カウボーイを起用

 1920年代は、アメリカの爆発的な繁栄とともに「リーバイス」も世界的なブランドへと飛躍を遂げた時代だ。第一次世界大戦やスペイン風邪から解放されて自由を手に入れた20年代のアメリカの大衆文化は急速に広がり、ファッションの世界ではヨーロッパ由来の貴族的なドレスからアメリカで広がったミニ丈のワンピースなど、活動的なスタイルが台頭。同じくアクティブな「リーバイス」のジーンズは、新天地アメリカのシンボルとして、世界中で憧れの存在となった。
 その世界的な普及には、当時から革新的な広告や宣伝活動の影響も大きい。リーバイ・ストラウス社は当時、ブランドとジーンズを代表するアイコンとして、文学や映画の世界で人気を博すようになった人物であり、早くから「リーバイス」のファンだったカウボーイをチョイス。彼らが登場する広告を英語やスペイン語、ポルトガル語、中国語などの多言語で制作した。また、ジーンズ自体もアップデートを続けたほか、36年には競合との差別化も兼ねて「LEVI’S」の文字を縫い込んだ赤いタブを作成、右のバックポケットの左側に縫い付けている。
 40年代になると、世界は第二次世界大戦の影響を色濃く受けるようになる。アメリカ政府は、今もアイコニックなディテールの「アーキュエットステッチ(バックポケットの二重のアーチのステッチ)」は、「装飾であり、何の機能も満たさない」として取り除くよう通達。これに対してミシン職人はバックポケットにペイントを施してデザインを守った。日常生活に節約が求められた中で簡素化して世に送り出されたジーンズは、いかにデニムが世界中で大勢に愛されていたのか?と同時に、戦時下でも日常生活に欠かせない衣料品だったのかを物語っている。

70年代以降は、
カウンターカルチャーと接近

 戦後も、「リーバイス」のジーンズは社会と共に発展を続ける。「リーバイス」が本拠を置くサンフランシスコは、世界に先駆けて60年代にはカウンターカルチャーが台頭。多様性の尊重と音楽を中心とするカルチャーの台頭を印象づけた70年代のヒッピームーブメントでは、ジーンズは自由の象徴として若者の支持を集め、ますます飛躍した。
 若者の支持を集めたのは、「リーバイス」が当時から政治スキャンダルの問題点などを広告ビジュアルやアートコンテストなどで積極的に発信してきた影響も大きい。73年に発表した「リーバイス デニムアート コンテスト」は、リーバイスのジーンズやシャツに装飾を施し、その作品をスライドで送ってもらうというもの。同年の受賞作品の1つは、時の大統領が辞任するまでに至った政治スキャンダル、ウォーターゲート公聴会の問題点を炙り出したもので、世間に「リーバイス」のスタンスをアピールした。
 また81年には女性のための「リーバイス」“501”を発表。ジェームス・ディーン(James Dean)の遺作となった映画「ジャイアント」(56年)のワンシーンを再現したテレビCMは、「歴史上初めて」の女性の声とともに、彼女たちのための特別なカットのジーンズを発信し、大きな話題を呼んだ。91年には地元サンフランシスコのプライド・パレードで、リーバイ・ストラウス社のレズビアンとゲイによる従業員協会がダイバーシティを求めて街を闊歩(かっぽ)している。
 自由を欲する若者が意志を持ってブルージーンズを選ぶ姿は1989年11月、ベルリンの壁に集まったジーンズ姿の若者の姿で、多くの人の記憶に留まった。

パックからITまで、
世界中のオピニオンリーダーも支持

 「リーバイス」に魅了されているのは、若者だけに止まらない。世界各国、カルチャーからビジネスまで、老若男女幅広いオピニオンリーダーの支持も集めている。70年代以降の「リーバイス」のファンは、パンクロックの生みの親と言われるパティ・スミス(Patti Smith)から、アップルを創業したスティーブ・ジョブス(Steve Jobs)までさまざま。黒いタートルネックと共に「リーバイス」の“501”を愛したスティーブ・ジョブスは、ウエストの内側にサスペンダー用のボタンを自ら取り付けるほど、こだわりを持ってジーンズを楽しんでいた。
 20世紀最後の1999年には、「リーバイス」の“501”ジーンズは米「タイム(TIME)」誌が選ぶ「今世紀最高のファッション(The Best Fashion of the Century)」に選ばれ、ローリン・ヒル(Lauryn Hill)のカラフルな刺しゅう入りジーンズなどが、その快挙に花を添えた。
 2000年代に入ってもオピニオンリーダーとの強固な関係性は続き、スヌープドック(Snoop Dogg)などは「リーバイス」への思いを公言・体現。アルバム「プッシュ」では、特別にカスタマイズした「リーバイス」のトラッカージャケット姿で登場している。

150周年キャンペーンをスタート。
世界中の人の「リーバイス」物語を発信

 そんな「リーバイス」の、150周年を祝うキャンペーンのキックオフは、オピニオンリーダーのみならず、世界中のさまざまな人と「リーバイス」の物語にフォーカスするものだ。
「The Greatest Story Ever Worn(最高の物語をはこう)」という名のキャンペーンは、“序章”としてアメリカの女性映画監督メリナ・マッスーカス(Melina Matsoukas)がメガホンをとったショートフィルム「宝物のような貨物(The Greatest Story Ever Worn)」を公開。2作目の「フェアな取引(Fair Exchange)」は、家族の一員として愛されている牛と、「リーバイス」の“501”を交換した息子の物語だ。ジョージアの寒い冬を背景に、“501”というジーンズが何か大きな夢への道しるべであることを描いている。
 「The Greatest Story Ever Worn」は、“501”の150周年記念の始まりを意味している。ブランドは今年、世界各地でアニバーサリーイベントを開催、今後さらなるストーリーを共有する予定だ。

問い合わせ先
リーバイ・ストラウス ジャパン
0120-099-501