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コロナで手芸が注目されたけど……
コロナでステイホームが広がった際、自宅で楽しめる趣味として手芸が注目されました。20代女性に消費動向を取材したときにも、「手芸にハマっている」ということで自作のピアスを見せてもらいましたが、それがまさに、本日紹介する1本目の記事に出てくるような某ラグジュアリーブランドのボタンをリメイクしたもの。ドキッとしました。
ブランドの商品を自分でリメイクしてフリマサイトやSNSで販売するのは明らかに商標権の侵害ですが、「個人で楽しむ分には問題ない」と思っている人も多そうです。しかし、この記事を書いた法律に詳しい平川裕ライターによると、「“個人で楽しむ”の線引きが難しいのが現代」だそう。友達の間でリメイク品が評判になって、無償でも何度も人にあげたりすれば法的にNGになることもあるんだとか。ファッションの業界として、こういうリテラシーは世の中にしっかり伝えていく必要がありますね。
安易な“アップサイクル”や“リメイク”にご用心 商標権侵害でトラブルになるケースも
サステナビリティに対する意識の高まりから、アップサイクルやリメイクに着目するブランドや企業が増えてきた。また、ハンドメイドマーケットの台頭やSNSの普及によって、個人が気軽にハンドメイド作品を売買できる時代が訪れている。
アメリカのジョージア州・アトランタに拠点を置くコスチュームジュエリーブランド「シバー+デューク(SHIVER + DUKE)」もアップサイクルを押し出すブランドだの1つだ。ビンテージパーツを再利用し、新しくコスチュームジュエリーに作り替えて販売していた。自社ECと10軒程度(卸した点数は確認できるだけで約200点)にしか卸していなかったような小規模なブランドだが、「シャネル(CHANEL)」のボタンをイヤリングなどにリメイクして販売したことで、「シャネル」から商標権侵害で訴えられる事態を引き起こしてしまった。
「シャネル」は、「シバー+デューク」が「シャネル」の“CC”ロゴのボタンをイヤリングやネックレス、ブレスレットなどに加工して販売したことが商標権侵害だと主張し、権利侵害と認められる商品の廃棄や損害賠償を求めた。最終的にこの件は、「シバー+デューク」が保有する「シャネル」のロゴ付きパーツなどを全て「シャネル」に引き渡し、ウェブサイトや広告などからも全て削除することで2022年11月に和解した。また、今後同様の商品を販売したり宣伝した場合には、高額な損害賠償(例えば侵害品を販売した場合、1点あたり5万ドル(約655万円)の支払など)を行うことを裁判所から命じられた。
「シバー+デューク」はイヤリングなら70ドル(約9170円)前後、ブレスレットなら高くても90ドル(約1万1790円)程度で購入できるアイテムを販売しているブランドで、和解の内容から見ても、「シャネル」は金銭的な賠償が主目的ではなく、「安易に人気ブランドのブランド力にフリーライドすると痛い目を見る」ということを知らしめるための訴訟だったようにも見受けられる。
日本のC to Cプラットフォームをパトロールしてみると、人気ブランドのロゴを利用したリメイク品などは数点しか発見できず、侵害品を流通させまいとするプラットフォームやブランドの努力が伝わってくる。他方、インスタグラムで検索すると依然として侵害品とみられるリメイク品を販売しているアカウントを相当数見つけることができる。
ラグジュアリーブランドをはじめとする各ブランドは、そのブランド力を維持するために多大な投資を行い、ブランドを育ててきたからこそ今の地位や人気がある。ECを利用して誰でも簡単に売買が可能となった時代だからこそ、「シバー+デューク」のようにビジネス規模が小さくてもブランドの目に留まる確率は高まっており、フリーライドすることの違法性や危険性をしっかりと理解する必要があるだろう。
「カナダグース」が自社製品の2次流通プラットフォームを開設 中古品販売と下取りを実施
カナダ発のライフスタイルブランド「カナダグース(CANADA GOOSE)」は、自社製品の2次流通プラットフォーム「カナダグース ジェネレーションズ(Canada Goose Generations)」を開設した。同プラットフォームでは、ウィメンズとメンズ、ユース、キッズ、ベビーのカテゴリーの中古品の販売と、「カナダグース」のギフトカードと交換できる下取りサービスを行う。さらに、65年の歴史を持つ同ブランドのアーカイブからビンテージ品も販売する。立ち上げに当たり、全カテゴリー合計で約2500点の販売商品をそろえた。アメリカ限定のテスト運用から始め、年内にはカナダでの開設を予定。将来的には世界での展開を目指す。
下取りサービスは、まず商品のタグについているスタイルナンバーを登録し、その後、元払いの発送伝票が届き、対象品を発送する。専門チームが状態を査定した後、10日以内には評価に応じた額のギフトカードが送られてくる仕組みだ。ギフトカードは「カナダグース」の店舗やオンラインで使用できる。評価は、「まあまあ」「良い」「とても良い」「素晴らしい」の4段階を基準に、最大で小売価格の60パーセントで査定される。例えば、小売価格1250ドル(約16万3700円)のダウンロングコート“ミスティーク パーカ(Mistique Parka)”が「素晴らしい」と評価された場合、750ドル(約9万8200円)分のギフトカードと交換となる。現在の対象商品はメンズとウィメンズ、キッズのアウターウエアと衣類。帽子や手袋、ミトン、スカーフ、フェイスマスク、フードトリム、ホームアクセサリー、靴は対象外。着用年数に制限はない。
「カナダグース ジェネレーションズ」は、サステナビリティとカナダグースの価値観に基づくイニシアチブを統合し、「地球を冷たく、人々を暖かくすること」を目的としたプラットフォーム「ヒューマネイチャー(HUMANATURE)」の一環として立ち上げられた。パートナーとして、中古衣料の洗浄や物流などを手掛けるトローブ(TROVE)と提携している。
「カナダグース」によれば、「ジェネレーションズ」でダウンコートを購入すると新品を購入するのと比べて二酸化炭素の排出量はおよそ70%少ないため、同社の「持続可能で影響力のある戦略(Sustainable Impact Strategy)」における廃棄物削減の年間目標達成への貢献が期待されるという。なお、「カナダグース」の通常商品には永久保証が付いているが、「ジェネレーションズ」については1年間の保証となっている。
カナダグースのキャリー・ベイカー(Carrie Baker)=プレジデントは、「私たちは何世代にもわたって使える製品を提供している。『ジェネレーションズ』はそれらを再度流通させ、循環できる完璧なプラットフォームだと考えている。また、どのような層が利用するか、どのようなレアな製品が下取りされるか楽しみだ。サステナビリティに関心が高く、リセールに馴染みのあるZ世代が多いと思われるが、幅広い層にアピールできることを期待している」と話す。
海外では、自社で2次流通のプラットフォームを運営するブランドが増えている。「ルルレモン(LULULEMON)」は独自のリセールチャネルを持ち、「メイドウェル(MADEWELL)」「パタゴニア(PATAGONIA)」「アイリーン フィッシャー(EILEEN FISHER)」などは中古品売買のプログラムを実施。英調査会社グローバルデータ(GLOBALDATA)によれば、米国内の中古品市場は26年までに2倍以上の820億ドル(約10兆7420億円)に達すると予想されているという。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。