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 収まらない 「バレンシアガ」騒動

 「バレンシアガ」のホリデーキャンペーンに端を発した騒動は、まだ収まる気配がありません。下の記事によると、親会社ケリングの売り上げにも影響があるかもしれないそう。事態は、正直私の予想以上です。

 ブランドは事後、事態に対して真摯に対応している印象ですが、仮に「アディダス」とのパートナーシップに影響が及ぶとしたら、改めてさまざまなステークホルダーに支えられて成り立っている、現代のビジネスの複雑さこそ真摯にとらえなければならないでしょう。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

「アディダス」が「バレンシアガ」とのパートナーシップを見直していると米メディアが報道 コラボアイテムの発売を一時停止か

 「アディダス(ADIDAS)」は、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」とのパートナーシップを見直していると米「ソーシングジャーナル(Sourcing Journal)」が報じた。これに伴い、コラボコレクション「バレンシアガ / アディダス」の”スタンスミス(Stan Smith)”などの発売を一時停止したという。

 「バレンシアガ」2023年スプリング・コレクションで発表された「バレンシアガ / アディダス」のアイテムの一部は、ショーが開催された翌日の22年5月23日に公式オンラインストアとニューヨークのマディソンアベニュー店で先行発売され、11月にはやはりオンラインストアと一部店舗で販売が開始された。

 しかし、本件を最初に報じたスニーカー関連の情報サイト「スニーカーフリーカー(SNEAKER FREAKER)」によれば、コラボアイテムを予約注文したとある顧客は「アディダス」から「当社は現在『バレンシアガ』とのパートナーシップを見直しており、全ての(コラボ)商品の発売を一時停止することを決定しました。このため、残念ながらプレオーダーされた『バレンシアガ / アディダス』の”スタンスミス”をお届けすることができません」という内容のメールを受け取ったという。「ソーシング・ジャーナル」は、「アディダス」に本件に関するコメントを求めたが、期限内に回答を得られなかった。

 「アディダス」は本件について声明などを出していないため、理由は明らかではないが、「バレンシアガ」のホリデーキャンペーンにまつわる騒動が原因ではないかと見る業界筋も多い。同キャンペーンにボンデージギアを着けたテディベア形のバッグを持った幼児が登場したこと、また別のバッグのビジュアルのセットに児童ポルノに関する裁判資料が使われていたことから、「バレンシアガ」は児童の性的消費や虐待を促しているとして厳しく批判された。これを受け、同ブランドは11月23日にこれらを取り下げて謝罪し、30日には撮影用セットの制作会社とデザイナーなどを相手に2500万ドル(約33億円)以上の損害賠償を求めて提訴。しかし、「責任を他者に押し付けている」としてインターネット上でさらに批判を集め、ティックトック(TikTok)などで「バレンシアガ」の製品を破壊したり、ボイコットを呼びかけたりする動画が広まり、12月2日にデムナ(Demna)=アーティスティック・ディレクターとセドリック・シャルビ(Cedric Charbit)社長兼最高経営責任者が謝罪する事態となった。

 なお、デムナ=アーティスティック・ディレクターは、英国ファッション協会(The British Fashion Council以下、BFC)が主催する「ザ ファッション アワード(The Fashion Awards)2022」で、主要な賞の一つである「デザイナー・オブ・ザ・イヤー(Designer of the Year)」にノミネートされていた。しかし、BFCによれば「『バレンシアガ』が参加しないことを決定した」ため、同氏をノミネートリストから除外したとしている。またHSBC銀行は、23年1月5日に発表した株式リポートで、一連のトラブルによって「バレンシアガ」の成長の勢いが主に米国と英国で減速し、結果として親会社であるケリング(KERING)の売り上げに影響があるかもしれないとコメントしている。

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NEWS 02

毛皮製品の販売を禁止する法律がカリフォルニア州で施行 その影響は?

 米カリフォルニア州で新しい動物毛皮製品の製造・販売や寄付を禁止する法律が、2023年1月1日から施行された。カリフォルニア州内の実店舗、およびカリフォルニア州内へのオンライン販売が対象となる。なお、レザーやシアリングには適用されない。

 昨年末、ビバリーヒルズ付近にある大型複合商業施設ビバリーセンター(Beverly Center)の一角では、セーブルやチンチラ、ミンク、フォックスなどの毛皮製品が75%オフで販売されていた。アウターウエアブランドの「マクシミリアン(MAXIMILIAN)」が、19年に成立したこの法案が施行される前に、商品をできる限り売り切ろうとしていたのである。

 アンディー・ニコロウ(Andy Nicolaou)=バイス・プレジデント兼サービス・ディレクターは「当ブランドとってこれは死活問題だ。私たちの毛皮製品を長年購入してくれている顧客にもフェアではない」と話す。カリフォルニア州は、同ブランドの売り上げ全体の20〜25%を占める。

 カリフォルニア州内では、ウェスト・ハリウッドで新しい毛皮製品の販売を禁止する条例が成立した11年頃から規制を求める動きが活発になり、その後、バークレー、サンフランシスコ、ロサンゼルスと続いた。なお、これらの条例では中古およびビンテージ製品は対象とならない。

 こうした動きを受け、メイシーズ(MACY’S)やブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE’S)、サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)などの主要な百貨店が毛皮製品の販売を禁止し、専門の売り場を閉鎖、または閉鎖する方向性を示した。

 同じく「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KRING)をはじめ、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「バーバリー(BURBERRY)」「カナダグース(CANADA GOOSE)」エルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP)、「モンクレール(MONCLER)」などもファーフリーを宣言している。

  しかし、反対意見も多数ある。ビバリーヒルズの毛皮店で働く男性は、「多くの人がこの法案を好ましく思っていないはずだ」と主張する。同店では新品と中古品を取り扱っていたが、1月1日からは中古品のみを販売している。90年近く家族経営で営んできた同店は、毛皮の保管や修理、再利用で収益を補っていくという。

 天然素材を生産・加工する農家や職人を支援するナチュラル・ファイバー・アライアンス(Natural Fibers Alliance)の広報担当者は、この法案がレザー製品などの衣類用に加えて、食肉用の畜産を廃止する流れにつながる可能性を指摘する。

 温暖な気候のカリフォルニアでも毛皮製品は人気で、数年前まで全米でトップの売り上げを占めていた。2017年の経済センサスによると、米国における毛皮衣料の売上高は5億7400万(約757億円)。そのうちの22%にあたる1億2900万ドル(約170億円)がカリフォルニア州で販売された。2位はニューヨークの1億1500万ドル(約151億円)だった。カリフォルニア州は人口が約4000万人と全米で最も多く、ニューヨーク州はその約半分の2000万人であることも理由の1つだ。

 同法案を提出した民主党のローラ・フリードマン(Laura Friedman)下院議員は、「カリフォルニアの人々は、ファッションのために動物の命が残酷に扱われることを望んでいない。この法律が、州の動物福祉の基準を守ると同時に、持続可能な代替素材のイノベーションの促進につながるとうれしい」とコメントを発表した。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。