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農業×ファッションの未来に期待

 ビームスが農林水産省との協業プロジェクト「たがやす BEAMS JAPAN ~食のカルチャーとスタイルを伝える~」を立ち上げました。野菜とファッションといえば、ユニクロが2002年に開始した野菜販売を思い出しますが、今回のプロジェクトは事業というよりも農業への興味喚起を促す目的も大きいようです。

 地元にいる農家を継いだ知人からは、後継者不足の問題は想像しているよりも深刻だと聞きました。「次世代がどうやったら農業に憧れを持ってくれるか」と会うたびに口にしています。コロナ禍により、人々の視線は自然に向いています。ビームスのような企業がファッションで培ったノウハウを生かし、産地に“小さな憧れ”をたくさん作り出してほしいなと期待します。

大塚 千践
NEWS 01

ビームスが農林水産省と協業 食と農を考えるプロジェクト立ち上げ

 ビームス(BEAMS)は、自社ブランド「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」で農林水産省との初の協業プロジェクト「たがやす BEAMS JAPAN ~食のカルチャーとスタイルを伝える~」を始動した。26日に記者発表会を開き、設楽洋ビームス社長と武部新・農林水産副大臣、ビームスのオリジナブランド「SSZ」のディレクターで、同プロジェクトのディレクションを務める加藤忠幸が登壇した。

 同プロジェクトは、農林水産省が国産農作物の消費拡大や人々の農業への興味喚起を目的に推進する官民連携プロジェクト「ニッポンフードシフト」の主旨に、ビームスが共感したことで実現。これまでさまざまな日本の文化を発信してきた「ビームス ジャパン」のプロデュース力で、農業ウエアの販売や野菜の直売イベントなどを通して農業の魅力を伝え、農家の後継者不足や農業への関心低下といった課題に取り組む。

 設楽社長は、「僕が子どもの頃は、よく市場で農家の人と会話をしながら野菜を買っていた。現在は農家との距離感が随分離れてしまった。洋服屋で野菜を売ることで、若い人たちがいろんなことに気付くきっかけになることを期待する。『ビームス ジャパン』が得意とする作り手の思いを感じる場作りを通して、食にまつわるハッピーを届けたい」とコメントした。武部副大臣は、「若い人と農業の接点が減る中、さまざまな文化を発信してきたビームスから協力を得られたことは大きい。まず、生活者が食の背景に意識を向けるきっかけを作りたい」と話した。

 加藤ディレクターは、神奈川・大船の加藤農園の4代目で、4日に1度は農家の仕事に携わるという。公式ユーチューブチャンネルでは、ファッションと農業を生業とする加藤ディレクターの日常に密着した特別動画を配信。今後も、同プロジェクトの舞台裏や加藤ディレクターが農業への思いを語る動画コンテンツを継続して配信する予定だ。

 さらに「ビームス ジャパン」新宿店、渋谷店、京都店では、加藤ディレクターによるストリートカジュアルの要素を取り入れた農業ウエアを販売する。アイテムはコーチジャケット(税込2万4200円)とパンツ(同2万2000円)、ベスト(同1万3200円)、手甲(同6600円)。素材はコットンライクな伸縮性のあるポリエステルを採用して動きやすさを考慮し、ゆったりとしたシルエットや、工具や野菜などを運ぶ作業を想定したポケット位置へのこだわりなど、加藤ディレクターの実体験に基づく利便性を備えたウエアに仕上げた。3300円以上の購入者には、野菜が簡単に栽培できるセットをプレゼントする。また、店内では食をテーマに制作したZINEも配布する。

 「ビームス ジャパン」新宿店の1階では、農家から直接野菜を購入できる野菜の即売会を2月末まで不定期で開催する。店内には、農業を身近に感じてもらうためにプランターや農機具を展示した。屋上ではショップスタッフが屋上農園に挑戦し、その様子を特設サイト内でリポートする。

 加藤ディレクターは「耕すという言葉はカルチャーの語源でもある。ガチ農家をしている自分が前に立って発信し、ライフスタイル全般に感度の高いファッション好きな若い人たちに自分の手で野菜を作る楽しさや、農業カルチャーの魅力を伝えたい」とコメントした。

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NEWS 02

フランスで売れ残り品の廃棄を禁止する法律が施行 違反者には罰金も

 2022年1月1日、「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」がフランスで施行された。同法律は20年2月に議会で採択されたものだ。

 この法律によって、生鮮食品や新聞・雑誌のプラスチック包装の禁止や再利用を支援するパブリック・ファンドの創設が定められたほか、商品が与える環境への影響を明示する表示義務や食品以外の売れ残り品の廃棄を原則として禁止すること定めている。違反した場合は1万5000ユーロ(約195万円)の罰金が科される。

 フランスの百貨店ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)およびBHVのCSRディレクター、ダミアン・ペレ(Damien Pelle)は、「ブランドにとって在庫処分は絶対的な失敗であり、経済的な合理性もない」とコメントする。フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)が発表した最近の調査で、2019年に売れ残ったファッションアイテムの小売価格は推定17億ユーロ(約2210億円)、業界の売上の4.1%に相当する結果が出たことを付け加えた。

 この調査結果によると、廃棄に至るのはたった5%で、23%がオフプライスで販売され、20%がチャリティ名目で寄付、約10%が修理・リサイクルに回されているという。しかし、ADEMEが公表する別の統計によると、新品の繊維製品の廃棄量は毎年1万~2万トンに上り、これはエッフェル塔2本分の重さに相当するという。

 この法律の施行を業界にとって前向きな変化ととらえる関係者がいる一方、「(採択されてから施行まで)2年という期間は、すべての法的要件を満たすにはあまりにも時間がない。特に1月1日に施行されるはずの法令が(取材時点で)まだ発表されていない」(仏プレタポルテ連盟のピエール=フランソワ・ル・ルエ会長(Pierre-François Le Louet))と企業側に与えられた準備期間の短さを懸念する声もある。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。