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年始なので、初心に戻って

 明けましておめでとうございます。本年も「WWDJAPAN」をどうぞよろしくお願いいたします。本日は年始に読んでいただきたい記事をご紹介します。1本目は、神田にあるニットの老舗OEMメーカーで働く27歳社員のインタビューです。OEMなので、普段は社名や彼女の名前が注目されることはありません。でも、「いいものを作りたい」という思いや丁寧な仕事が伝わってきます。ファッションは、こういった名前の出ない多くの方の情熱に支えられている産業なんだと改めて感じます。

 2本目は、「サステナブルな消費を根付かせたい」と、大学を休学して起業した21歳の挑戦について。こちらは、「社会をよくしたい」「思い立ったらすぐやろう」という純粋な思いにあふれています。

 年月を経るうちに、徐々に考えが凝り固まって保守化していくのが人間の常です。「そんなことはない、私はいつも挑戦している」という方ももちろんいるでしょうが、12カ月で年が変わるという仕組みは、定期的に自身を振り返り、初心に戻るのには最適だと近頃は思ったりします。自分は心が凝り固まっているかもと思う人も思わない人も、フレッシュな若者たちの記事を読んで、初心を振り返ってみてください。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

OEMってどんな仕事? 「ギャルソン」も手掛けるニット製造の老舗で働く27歳の奮闘記

 製造業には、他社から依頼を受けて商品を代理で製造するOEM(Original Equipment Manufacturing)というビジネスがある。食品から機械、金属まであらゆる業界にOEMがあり、アパレルも例外ではない。コレクションブランドから量販メーカーまで、多くのブランドがOEMを活用する。

 東京・秋葉原と浅草橋の中間にひっそりとビルを構えるハイセンヰは、アパレルの中でもニットに特化した老舗OEM企業だ。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「アンダーカバー(UNDERCOVER)」「ビズビム(VISVIM)」など、国内の名だたるデザイナーズブランドを手掛けている。50年以上前に、靴下工場に糸を売る“糸商”として創業し、ニットのOEM企業と合併して今の業態となった。約10人の従業員が在籍し、20〜30年働くベテランもいる。

 同社で営業アシスタントとして働くのが、入社3年目27歳の福地藍さん。営業担当が受注したデザイン案を仕様書に落とし込み、工場にサンプル生産を依頼するほか、サンプルの納品や量産のスケジュール管理などを行っている。

 「入社当初はわけがわからず、とにかく営業に付いて回って食らいつきました」と福地さんは振り返る。例えば仕様書は、「そもそもサイズや資材、細かな仕様をどう伝えればいいのか分からない。しかも、データでいい工場もあれば、紙じゃないといけないところもあります」。先輩が書いた仕様書や同じブランドの過去のものを大量に読み、「必死に真似しました。自分で書けるようになったのは、ここ数シーズンです」。ブランドの依頼形式もさまざまで、「ディテールまで明確にしたデザイン案をくれるブランドもあれば、『こんな感じで』とニュアンスだけで依頼されることもあります。デザイナーの意図を汲み取り、具現化するため、糸や素材、色、編み、加工のあらゆる知識が必要。毎日が勉強です」。

ブランドを辞め、OEMに
「物作りの醍醐味は変わらない」

 福地さんは、文化服装学院でファッションを学んだ。最初は布帛(織物)をメーンとする服装科だったが、「どうしてもニットがやりたい」と2年生の春にニットデザイン科に転科した。「布帛は生地のベースがあって、布を買って作ることが多いけど、ニットはどういう糸にするか、どういう編みにするか、どういう加工にするかなど無数の選択肢がある。それが面白いんです」。

 卒業後は、メンズブランドを手掛けるアパレル企業に入社。デザイナーとして、商品企画から展示会の運営、量産管理までを行った。「ブランドで働くのもすごく楽しかった。でも、取引先の工場やセレクトショップが大きく変わることがなく、『もっと広い視野でアパレルを見たい』と、ハイセンヰに転職しました」。OEMにはデザイナーという肩書きはない。それでも、物作りの喜びは変わらない。「ファーストサンプルを見て、バイヤーやプレスの人に『かわいい』といってもらえると本当にうれしい。お手伝いした商品が店頭に置いてあったり、雑誌に載っていたりすると、『次も頑張ろう』と励みになります」。

「起毛が足りない」
予想外だらけの生産現場

 12月から1月は、複数ブランドの納期が重なる繁忙期。工場はキャパシティの限界まで稼働するため、資材一つでも納品が遅れれば生産スケジュール全体が後ろにずれ込む。現場の緊張感も高く、「こんな仕様書じゃ分からない」「資材の納期はどうなってるんだ」と注意を受けることもしばしばだ。「納期前はいつもヒリヒリします。でも、その緊張感があってこその物作りだし、それだけみんな本気でやっている。プレッシャーも感じますが、腕の見せ所でもあります」。量産した商品が無事に納品されても、ブランドのイメージと異なる場合もある。「起毛加工が足りなかったり、フリンジのねじれが甘かったり。工場にお願いする時間がないときは、自分たちでブラッシングしたり、ねじねじしたりしています。フィジカルなものづくりだから、予想外のことがたくさん起こるんです」。

 OEMで働く中で、業界の課題も実感した。ブランドに納品するサンプルは、「平均はサード、うまく行けばセカンド」で完成する。しかし、納品しても展示会に出ず量産化に至らないことや、オーダーがつかないこともある。「フォースサンプルまで作ってボツになることもあります。工場は量産化も見据えてやってくれているので、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。業界を盛り上げるには、こういったシステムの課題を解決することも必要だと感じています」。

ニットの“生き字引”とともに
海外でも活躍する人材へ

 「今後は、日本生産で海外ブランドと取引したい」と夢を膨らませる福地さん。「まずは、もっと知識を増やして多様なブランドに対応し、仕事を円滑に進められるサポートをする人材になりたい。タッグを組んでいる営業はもちろん、DCブランドの全盛期を支えたニットの“生き字引”みたいな先輩もいるので、彼らからたくさん吸収していきます」。

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NEWS 02

サステナブルな消費を根付かせたい! 21歳大学生起業家の挑戦

 三井不動産が運営する東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)」の1階イベントスペース「アンドベース(&BASE)」で、環境配慮型のアパレルや雑貨など取り扱う16ブランドを集めたポップアップストア「ネオ(NEO)〜消費が変わる、未来が変わる〜」が1月16日まで開催されている。

 ポップアップストアは、環境配慮型商品のSNSメディア・ECの「エシカルな暮らし」を運営するベンチャー企業Gab(東京)が主催。代表を務める山内萌斗さんは21歳の大学生だ。

 2019年の冬。地元の静岡・浜松の国立大学2年生だった山内代表は一念発起して上京し、起業した。大学は現在も休学中という。「周りには、サステナビリティに強い関心を持ち、身の回りでやれることから取り組んでいる若者はたくさんいる。でも僕は、エシカルな意識を社会に根付かせ、消費のあり方そのものを変えるプレイヤーを目指していきたい」と語る山内代表。若くして起業に至った経緯と今後を聞いた。

WWD:ポップアップストアの反響は?

山内萌斗代表(以下、山内):商品を実際に手に取ったお客さまからは、「これがリサイクル素材(を使った商品)なんだ」「予想以上(の品質)で驚いた」といった声が聞かれますね。エシカルファッションブランドの「カーサ フライン(CASA FLINE)」はサステナブルな素材だけでなく都会的なカラーパレット、立体的なパターンにもこだわっていて、通な洋服好きにも袖を通してほしい商品ばかりです。「ラヴィスト トーキョー(LOVST TOKYO)」のリンゴ原料のヴィーガンレザー雑貨は、アニマルレザーにはない風合いがユニーク。自然派化粧品ブランド「ボタニカノン(BOTANICANON)」は、廃校舎をリノベした工場で製品を作っています。品質だけでなく、その背景にあるストーリーも面白いブランドばかりです。

WWD:Gabとはどんな会社?

山内:学生メンバーが中心となって立ち上げ、現在社員は7人。まだまだ小さな会社です。今回のポップアップは、三井不動産がブランドやECを運営する小規模事業者を対象に、消費者とのリアルなタッチポイント構築を支援するプロジェクト「ニューポイント」の一環で出店の機会をいただきました。スペースの貸し出しは無料で、商品の仕入れコストも(三井不動産に)一部を肩代わりしていただいています。

 当社の主な事業は「エシカルな暮らし」のインスタメディアとEC運営ですが、そのほかにも街のゴミ拾いがゲーム感覚でできるイベントの運営や、ポイ捨てごみを“活用”した広告ビジネスを展開しています。僕たちは路上ゴミが多い場所をデジタルマップ上に可視化するシステムを開発しました。これによりゴミ箱の設置場所を最適化するとともに、「ゴミが多い場所=人通りが多い場所」であることを利用し、広告を設置してマネタイズしています。

WWD:起業のきっかけは?

山内:学校に馴染めなかった中高時代にさかのぼります。初めは、僕みたいな生徒がいなくなるような学び場を作りたい、と学校の先生を志していました。しかし大学の情報学部でデジタル関連の学びを深めるうち、いち教育者として携わるより、教育を根本から変えるような仕組みを作ることができる経営者になりたいと思い始めました。そして大学1年生の時、東京大学の「起業家育成プロジェクト」を通じてシリコンバレーへ留学したことが大きな転機になりました。

WWD:シリコンバレーではどんな刺激を受けた?

山内:米国の若くして起業を志す人たちは、「このサービスが本当に世の中にとってマストハブ(必要不可欠)なのか?」ということを考え抜いています。僕はその点でいえば、自分の独りよがりな経験に縛られ、教育という狭い枠組みでしか考えていなかった。世界を見渡せば、環境問題や貧困など、必要とされている事業領域は広大です。2週間という短い期間でしたが、起業家になるには、もっと視野を広げる必要があることを思い知らされました。

WWD:そこからは「思い立ったらすぐやろう」と。

山内:はい。大学ではやれることも限られますし、帰国して半年後(19年10月)には休学して上京し、12月に起業しました。幸いにもエンジェル投資家や企業数社の支援を受け、ゴミ箱を活用した広告事業(前述)をテストしていたのですが、19年末に新型コロナで街のトラフィックが激減。ビジネスそのものが成り立たなくなりました。

 早くも会社の存続が危ぶまれましたが、このような状況で、人々の消費意識がサステナブルな方向へ大きくシフトしていることも感じていました。そこで社運をかけたプロジェクトだったのが「エシカルな暮らし」です。20年2月にインスタアカウントを、7月にはECを立ち上げて仕入れ販売(一部は代理販売)を始めました。現在、インスタアカウントのフォロワーは2万4000人、ECの取り扱いブランドは32まで増え、なんとか7人(の社員)が食べていけるくらいにはなっています。

WWD:ブランドの選定基準は?

山内:まず「デザイン性が優れていること」。次に「感動体験があること」。最後に、「誰を助けているかが明確であること」です。たとえ環境に徹底して配慮したアイテムでも、ダサかったら手に取ってもらえません。また、エシカルな商品を語る際には、一般消費者には馴染みのないサプライチェーンや生産者、難解な横文字のリサイクル技術などを説明しがち。そういう敷居が高いイメージも変えていきたくて、使った時の「軽い」「温かい」みたいな直感的な部分を大事にしています。

WWD:今後について。

山内:世の中には、地球のために素晴らしい取り組みをしているブランドはたくさんあります。僕たちのビジネスはまだまだ偉そうなことを言える規模ではありませんが、そういうブランドを掘り起こし、消費者との橋渡し役にもなることで、サステナブルな消費を地道に根付かせていきたいです。

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最新号の読みどころ

記録的な熱波に見舞われた今季のメンズ・ファッション・ウイークは、価値観をアップデートする2つの意味での「解放」がキーワードになりました。1つは、堅苦しいイメージも強い伝統的なテーラードスタイルからの解放。もう1つは、「男はこうあるべき」という固定観念からの解放です。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」に象徴される、繊細さや脆さを併せ持つしなやかなマスキュリニティー(男性性)の表現を起点に、メンズファッションの現在地を総括します。