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傘の変化、日本の変化
かばんに常に携帯できる折り畳み傘のシェアが急拡大しているという記事です。傘市場における長傘と折り畳み傘の金額ベースの割合は、2000年に82:18だったのが、24年に48:52に初めて逆転。本数ベースの割合は24年で67:33とまだ長傘に分がありますが、今後縮まる可能性はあります。
背景にあるのは、熱中症の危険があるほどの猛暑日が増え、さらにゲリラ豪雨が当たり前になったこと。さらに安価なビニール傘を使い捨てする習慣への罪悪感。傘を通じて、自然や社会の変化が見えてきます。
「傘」ビジネスから見た気候変動 いつのまにか“主役“交代
PROFILE: 吉野哲/ウォーターフロント社長

今年は6月だというのに真夏のように暑い日が多く、雨は比較的少なかった。気候変動による長い夏はアパレルビジネスに多大な影響を与えているが、雨が降ってこその傘ビジネスはどうなっているのか。大手傘メーカー、ウォーターフロント(東京)の吉野哲社長に聞いた。
WWD:6月中盤まで梅雨がどこかに行ってしまったかのような晴天と猛暑続きでした。傘ビジネスにとっては逆風ですか?
吉野哲ウォーターフロント社長(以下、吉野):いいえ、むしろ傘マーケットは好調です。傘は雨の日に使うものと考えがちですが、特にコロナが明け以降は晴雨兼用の折傘(折り畳み傘)が急速に市民権を得ました。当社も晴雨兼用の折傘がけん引する形で、今期(25年12月期)は過去最高の売り上げペースが続いています。
WWD:傘ビジネスはもはや雨頼みではない?
吉野:財務省の貿易統計をベースに、コロナ前の19年とコロナ後の24年で傘の市場がどう変化したか説明しましょう。傘は約99%が輸入品のため、貿易統計をみれば市場の概要をつかめます。
傘の輸入金額は19年が299億円でしたが、24年は405億円と約35%拡大しています。でも本数ベースでは19年に約1億本あったのが、24年には約14%減少している。つまり1本あたりの単価が1.5倍に上昇しているのです。
折り畳み傘が長傘を逆転
WWD:円安だからですか?
吉野:もちろん為替の影響は大きいのですが、それ以外の理由もあります。
一つは、ビニール傘の縮小。エコ意識の高まりもあって、使い捨てを前提にしたような安価なビニール傘から消費者が離れています。作る側もビニール傘の素材や強度を見直して、長く使用できる比較的高い商品を増やしたため、販売本数自体は減る傾向にあります。
二つめは、晴雨兼用の折傘を持つ人が急増している。夏の期間が長くなり、30度、35度を超えるような猛暑がずっと続きます。強い日差しから身を守るために日傘を使うのが当たり前になりました。突然のゲリラ豪雨もいまや日常です。紫外線のカットや遮熱効果のある日傘としての機能性。雨風に負けない雨傘としての機能性。この2つの機能性を兼ね備えた付加価値の高い晴雨兼用の折傘が売れ続けています。貿易統計でも金額ベースでみれば24年に初めて折傘が長傘を逆転しました(長傘が約196億円、折傘が約209億円)。
WWD:エコ意識と気候変動で傘に新しい需要が生まれていると?
吉野:かつて傘屋は雨が降らないと商売が干上がると言われていました。日傘のニーズ拡大でビジネスモデルがだいぶ変わったのです。晴雨兼用の折傘は、当社でもこの数年は倍増で成長しており、売り上げに占めるシェアも10数%まで上昇しました。傘業界でも毎年1.5倍くらいの速度で拡大しています。将来は晴雨兼用がスタンダードになる可能性もあります。
WWD:日傘は女性だけでなく男性の利用も増えていると聞きます。
吉野:日傘男子ですね。若い男性に限った話ではなく、最近は40代以上の男性も珍しくありません。週末に河川敷で子供のサッカーの練習を見守る父さんが日傘を差す姿をよく見かけます。夏のゴルフでも日傘は必需品です。日傘は男女に関係なく、熱中症から身を守るための備え。水筒やペットボトルと同じようにバッグに携帯するのが当たり前になるでしょう。
実は当社は男性向けの日傘では先駆者です。20年以上のロングセラー商品“銀行員の日傘“は、創業者の林秀信氏が当社担当の銀行員のために開発した傘です。大雨の日も炎天下の日も足繁く取引先を回る彼を喜ばせるために、男性が持っても違和感がないユニセックスデザインの晴雨兼用の折傘を作りました。ただ少し早すぎたようで、“銀行員の日傘“がヒットするのはだいぶ後のことでした。美白を意識した女優さんやモデルさんが愛用してくれて認知が広がったのです。
「傘は脇役でいい」
WWD:どんな商品が売れ筋なのですか?
吉野:“COKAGE +(コカゲプラス)“は、木陰のようなやさしさのある日傘をうたった高機能シリーズで、EC(ネット通販)で再入荷のたびに即日完売しています。UVカット率、遮光性、遮熱性に優れた東レの生地「サマーシールドⅡ」を使った機能性と洗練されたデザインが支持を集めています。弊社は卸売りが中心で平均的な価格は2000〜3000円台。一方“コカゲプラス“は7000円台。遮熱による涼しさを体感したという口コミがSNSで拡散され、この価格でも引っ張りだこです。
もう一つが“ZENTENKOU(ゼンテンコウ)“。UVカットに遮光性、そして風に強いのが特徴です。傘の骨にポリカーポネートというしなやかな素材を用いることで、強い雨風に耐えて壊れにくい。価格も2200円とお求めやすい。昨年は10万本以上を売りましたが、今年は30万本以上の受注を受けています。男女を選ばないユニセックスなデザインも好評です。“ゼンテンコウ“はファッションブランドとの協業も増えています。
WWD:とはいえ、晴雨兼用の折傘も競争が激化しています。どう差別化しますか。
吉野:大切なのは実用性とデザイン性です。私たちは傘をファッションアイテムとして売ろうとは考えていません。合理的な価格と機能美を追求します。傘は脇役でいい。服の邪魔をしてはいけない。でもデザインにはこだわる。クリエイティブディレクターを起用して、「ウォーターフロント」のブランディングに本腰を入れ始めたところです。ペールトーンの色の出し一つとっても独自の基準に従っています。
「ウォーターフロント」の躍進の一つのきっかけになった“ポケットフラット“は、畳むと厚さ2.5cmになる超薄型の折傘です。2004年の発売以来、累計2400万本を売っています。バッグに入れてもかさ張ることなく、しっかり雨傘として機能する。傘に新しい価値を与えたわけです。何を解決し、何を提供するか。傘専業メーカーとして地道に取り組んでいくつもりです。
WWD:2025年12月期は、売上高目標を40%増に設定しています。
吉野:晴雨兼用を中心に傘マーケット自体が成長軌道に乗っています。私たちも商品ラインナップの充実によってヒット商品がたくさん生まれているので、十分に可能と考えています。まだ当社のビジネス規模は小さいものの、中国や東南アジア市場も有望です。海外では雨が降っても日本ほど傘をささないと言われてきましたが、温暖化と猛暑化によって紫外線を避けたいと考える人が増えています。伸び代は大きいと思います。
厚底革命の再来なるか? ナイキが“ブレーキング4”で狙うウィメンズ市場の逆襲
ナイキが再び、“限界のその先”に挑む。6月26日(日本時間27日未明)、パリのシャルレティ競技場で行われる“ブレーキング4(Breaking4)”は、史上初の女子選手による1マイル走(約1.6キロメートル)4分切りを目指す、ナイキによるプロジェクトだ。2017年に開催された“ブレーキング2”が、厚底カーボンシューズを生み出してランニング市場に革命を起こしたように、今回もナイキは新たな物語とテクノロジーを用意した。主人公はケニア出身の陸上中距離選手、フェイス・キピエゴン(Faith Kipyegon)。18年に娘を出産している彼女の挑戦には、性別や妊娠を理由に限界を決められてきた女性アスリート像を覆すメッセージが込められている。同時に、近年業績が停滞しているナイキにおいて、ウィメンズ事業をけん引するという販売戦略上の重責も期待されている。
キピエゴン選手は1500メートル走で五輪3連覇を果たし、世界選手権も幾度も制している。現在の女子1マイル走の世界記録(4分7秒64)も、23年に彼女が出したものだ。ナイキとは16年間にわたってパートナーシップを結んでいる。
エリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)選手がフルマラソン2時間切りに挑んだ“ブレーキング2”は、アスリートの力×ナイキが結集したテクノロジーで、人類が能力の限界を突破するという物語だった。「Just Do It」に象徴されるように、不可能への挑戦はナイキが創業以来掲げてきたメッセージ。“ブレーキング4”ではそれに加えて、キピエゴン選手が女性であり、母であるというストーリーが否応なしに載ってくる。“ブレーキング4”は、「女の子がそんなことをするなんて」「母親なんだから」と抑え込まれてきたアスリートを含む全ての女性たちの足かせを外し、女性たちに多様な生き方を発信しインスパイアするという、時代性に沿った物語を担っている。
ナイキは“ブレーキング2”によって、ランニング業界に激震をもたらした。同社の厚底カーボンプレート入りシューズを履いて成績を塗り替える選手が続出。一方で、「公平性を欠く」「テクノロジーによるドーピングではないか」といったスポーツ倫理にも関わる議論が巻き起こり、競技の本質を問い直す事態に発展した。ナイキの技術革新が、それだけ常識外ですさまじかったということの証明でもある。こうした論争を受けて、世界陸連は20年に初めてシューズ規定を明文化。「ソールの厚さは40ミリ以内、搭載するカーボンプレートは1枚、4カ月以上前に発売された市販モデルであること」など、現在の国際大会におけるルールが整備された。
「男性中心で、女性分野が弱い」
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