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パリコレ怒涛の開幕

現在パリ・ファッション・ウイーク真っ最中で、現地では「WWDJAPAN」取材チームが奔走しています。初日には日本の「CFCL」が初のショー枠でのコレクション発表をやり遂げました。1月のパリ・メンズ期間中にも「オーラリー」が同様に初のショー枠でコレクションを披露し、海外メディアへの露出が増えたことで、パリでの展示会の盛況ぶりにつながったと聞いています。「CFCL」の反響も楽しみですね。

今のコレクション取材のアウトプットは多角化しており、現地での情報奪取、寝る間を惜しんでの執筆に加え、日本チームとの連携が必須です。最近は日本から遠隔で作った、あたかも“現地いますよ感”なコンテンツを多く見かけるようになりました。コスパ、タイパの時代ですから、それらを否定はしません。「WWDJAPAN」は現地の臨場感を大切にしながら、日本チームと日々ライブ感のあるやりとりをし、読者の方々にファッションの魅力が伝わる記事を届けるために、総力戦で臨んでいます。記事1本にたくさんのスタッフのアイデアと情熱を込めているので、その辺をほんの少しでも想像しながら読んでいただけるとうれしいです。

大塚 千践
NEWS 01

2024-25年秋冬パリコレ開幕  「CFCL」が公式で初のランウエイショー開催

ニューヨーク、ロンドン、ミラノに続き、2024-25年秋冬パリ・ファッション・ウィーク(以下、パリコレ)が2月26日に開幕した。3月5日までの9日間にわたり、公式スケジュールでは総勢107ブランドがショーやプレゼンテーションで新作を発表する。

夕方から始まった初日は、若手ブランドが中心。夜には高橋悠介クリエイティブ・ディレクターによる「CFCL」がショーを開いた。これまでは公式スケジュールのプレゼンテーション枠での参加だった(その中でショー形式の発表をしたり、ミニショーを開いたりもしていた)が、今回は初めて正式にショー枠での発表となった。パリコレは過密スケジュールのため、グローバルでの注目度やメディア露出という点で、ショー枠のブランドの方が有利。そのため、そこを目指す若手ブランドは多い。高橋クリエイティブ・ディレクターも以前からショー枠を希望していたといい、パリコレに参加し始めてから4シーズンの実績によって念願がかなった。ただ、初の公式ショーだからといって気負ったり、観客をアッと言わせるための華美なショーピースを作ることはなく、ストイックなモノづくりとシンプルなランウエイで「CFCL」の世界観を表現した。

ニットで作る日常のワードローブ

“韻律(Cadence)”をテーマにした今季、暮らしの中での道具としての服をニットで表現する“ニットウエア(Knit-ware)”(wareは機能をもった器の意)という概念を追求する高橋クリエイティブ・ディレクターは、衣服の実用性と控えめなエレガンスに着目。「実用的ではない要素を省いていった時に、服がもつ役割は日常に変化やリズムをつけることではないかと感じた」と説明し、朝から晩まで、そしてオンからオフまで抑揚のある現代の日常生活を支えるワードローブを提案した。

ラインアップは、ハイゲージで編んだボクシーなスーツスタイルやフォーマルなシーンにも使えそうなシックな黒のドレスから、スポーティーなメッシュ構造を用いたフェンシングジャケットやフード付きのコート、細かい凸凹でストライプを表現するコクーンシルエットのボンバージャケットなどのカジュアルなスタイルまで。そこにラメ糸のセーターやタイツ、透け感のあるトップスやフレアパンツ、ウエアと同色のスパンコールを手縫いしたドレスやスカートを加えて、リズムをつけていく。また、彫刻的なシルエットが特徴的なアイコンシリーズ“ポッタリー”は光沢のあるベロアのような風合いで仕上げることにより、いつもより柔らかなラインを描き、新たな表情を見せた。

ショー音楽は、セルビア出身でベルリン在住の現代音楽作曲家クリスティーナ・スザーク(Hristina Susak)に制作を依頼。「東京でのコンサートを聴いて、感銘を受けた。緊張感と反復するリズム、シンプルな構造という彼女の音楽に対する考え方は、『CFCL』にマッチすると感じる」という。ただ、弦楽器のカルテットが弾くかすれたような音と奏者が上げる声で生む感情をむき出しにしたような旋律は、心をざわつかせた。

そんな音楽はコンセプチュアルすぎたようにも思えたが、ブランド設立から8回目になる今回は、シーズンごとに取り組んできた挑戦の積み重ねとニットへの飽くなき探究心が見て取れた。それは、公式のショー枠に入ったことで初めてコレクションを目にする観客にも「CFCL」らしさが伝わるものだっただろう。

ショーを終えて、高橋クリエイティブ・ディレクターが語ったのは「ショーに翻弄されないようにしたいという気持ちがあった。半年に1回新しいものを作らなければいけないというよりも、日常で買ってくれたり着てくれたりするお客さまをしっかり増やしていって、ファンにしたい」ということ。その思いを反映したバリエーション豊かな提案は、これまでより多くの人に響きそうだ。

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NEWS 02

“カシミヤの王様”ルシアン・ペラフィネが死去 享年78

フランスのカシミヤブランド「ペラフィネ(PELLAT-FINET)」の創業デザイナーであるルシアン・ペラフィネ(Lucien Pellat-Finet)は2月27日、事故により死去した。78歳だった。ブラジルに滞在中、溺死したという。

ペラフィネは、1946年フランス・ニース生まれ。69年にピエール・カルダン(Pierre Cardin)に見出され、パリやミラノでモデルとしてキャリアをスタートした。75年から「ティエリー・ミュグレー(THIERRY MUGLER)」(当時)や「シャネル(CHANEL)」でスタイリングを手掛け、80年代には「ラ・ポート・ブルー(LA PORTE BLEUE)」のコスチュームジュエリーをデザイン。94年に、自身のブランド「ルシアン ペラフィネ(LUCIEN PELLAT-FINET)」を設立した。マリファナの葉やスカルなどのモチーフをあしらった色鮮やかなカシミヤセーターで一躍有名になり、“カシミヤの王様”とも称された。2019年には、破産手続きに入り裁判所の管理下にあった同ブランドを、フランスのコンテンポラリーブランド「ザディグ エ ヴォルテール(ZADIG&VOLTAIRE)」の創業者であるティエリー・ジリエ(Thierry Gillier)が買収。それに伴い、ペラフィネはブランドを離れた。

21年に、ブランドは名称を「ペラフィネ」に改めるとともにロゴなどを刷新し、よりミニマルでタイムレスな高級ニットへと軸足を移した。23年9月には、デザイナー兼コンサルタントのドリス・ラーサン(Dryce Lahssan)がクリエイティブ・ディレクターに就任。また、有名ブランドが軒を連ねるパリ・サントノレ通り(326 RUE SAINT-HONORE, 75001 PARIS)にもショップを開いている。

ジリエ創業者は、「ルシアンは愛すべきトラブルメーカーで、パイオニアだった。そのクリエイティブな才能でファッション界に多大なる影響を与え、ファッションの歴史に貢献した」と故人を悼んだ。

なお、伊藤忠商事子会社のコロネットがディストリビューションを手掛ける日本では、現在も「ルシアン ペラフィネ」としてブランドを運営。海外で展開されている「ペラフィネ」のコレクションを輸入販売しているほか、「ラミダス(RAMIDUS)」など日本のブランドとのコラボレーションなど日本独自の商品も販売している。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。