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美意識を磨く百貨店を維持するのもチャレンジ
今さら百貨店の閉店に驚くことはありませんが、それでも4つ目の「百貨店ゼロ県」誕生には、一抹の寂しさを覚えます。岐阜と名古屋は近いので、完全に百貨店カルチャーから断絶されるワケではない、と言えどもです。
LVMHジャパンのノルベール・ルレ社長は夏に応じてくれたインタビューで、「日本の、特に大都市の百貨店にはアクティブであり続けてほしい。百貨店は、モノを買うだけでなく、レストランで食事をして、娯楽を楽しんでと、美意識を磨く場所。そんな場所を、維持し続けることもチャレンジだ」と語ってくれました。多くの業界関係者が、そう思っています。
岐阜高島屋が来年7月末で閉店 岐阜は4番目の「百貨店なし県」に

高島屋は、岐阜高島屋を2024年7月31日に閉店する。 同名の運営子会社は同8月31日付で解散する。
岐阜高島屋は1977年に開店し、同県唯一の百貨店として地元に根差した運営を続けてきた。売上高は92年に約250億円に達したものの、これをピークに、近年は競合激化の中で減収傾向が続いていた。2004年にはコスト削減を主眼に運営子会社を分社化し、05年には大幅な増床・改装を実施した。07年2月期に売上高約200億円まで息を吹き返したが、客離れに歯止めはかからず、直近の23年2月期の売上高は131億円程度まで落ち込んでいた。足下の24年2月期も営業赤字の見通しだった。
13日に行われた高島屋の取締役会で閉店を決議した。同日に都内で行われた同社の3〜8月期決算説明会で、村田善郎社長は「地方のマーケットが大変厳しい状況が続く中で、トップライン(売上高)の回復に向けた営業強化や販管費削減など、万策を尽くしてきた。それでも収支改善の見通しは立たなかった」とし、「開店から46年が経過した建物の老朽化も著しく、建物の貸し主(岐阜土地興業)との話し合いの折り合いもつかなかった」と撤退の理由を述べた。
従業員はジェイアール名古屋タカシマヤへ
岐阜高島屋で働く従業員(パートタイマー含む)171人の雇用は継続する方針。主に同じ東海エリアにあるジェイアール名古屋タカシマヤへの配属転換を視野に、運営会社のJR東海高島屋との話し合いを進める。高島屋は23年3〜8月期連結決算において、岐阜高島屋の閉店に伴う減損損失として8億5500万円を計上した。
岐阜高島屋の撤退により、岐阜県内唯一の百貨店が消滅。これにより、全国で百貨店のない都道府県は山形県、徳島県、島根県に続いて岐阜県が4県目となる。
高島屋23年3〜8月期 営業利益が1.6倍、過去最高

高島屋の2023年3〜8月期連結業績は、売上高に相当する総額営業収益が前年同期比8.3%増の4476億円、営業利益が同62.4%増の208億円、純利益が同10.6%増の149億円だった。営業利益は、07年3〜8月期の165億円を超え、最高益となった。
国内百貨店事業の総額営業収益は前年同期比6.6%増の3770億円。主要店舗の売上高は、大阪店が前年同期比18.3%増の720億円、日本橋店が同4.9%増の703億円、横浜店が同3.0%増の642億円。インバウンドの回復が追い風となる中、国内客の売上高も順調に伸ばした。国内客の売上高は前年同期比4%増。20年2月期と比較しても3%増だった。
足下の好調を踏まえ、6月に修正・発表した24年2月期の連結業績予想をさらに上方修正する。総額営業収益が前期比7.1%増の9440億円(6月発表予想は9400億円)、営業利益が同35.3%増の440億円(同375億円)、純利益は同6.0%増の295億円(同245億円)を見込む。
良品計画23年8月期、積極出店で国内は増収も減益 重点課題は「商品力」
「無印良品」を手掛ける良品計画の2023年8月期連結業績は、売上高に相当する営業収益が前期比17.2%増の5814億円、営業利益が同1.1%増の331億円、純利益が同10.2%減の220億円だった。中国本土はコロナからの回復で1月以降復調したが、国内が出店効果で増収するも減益となり、さえない。
国内は、都心店を中心に直近は訪日外国人客が増加しているが、5月までの苦戦が響いて既存店売り上げは同3.5%減だった。円安や調達コストの高騰も響いている。地方の食品スーパー隣接地などの生活圏を中心に1980平方メートル規模での出店は順調に進んでおり、通期での純増店舗数は69(グローバル計では116)となった。
24年8月期の課題はずばり、そのように積極出店している国内の生活圏店舗だ。「収益性は問題ないが、売り場面積が生かせていない」「商品力そのものを高める必要がある」と堂前宣夫社長。「日常生活の基本」となる商品群で、「地球環境を維持する商品」「社会課題を解決する商品」「生活者個人の個性が輝く商品」「文化や伝統から学ぶ商品」といった、4つの切り口で差別化した商品をそろえる。
衣料品では22年秋冬から本格的に商品改革を進めているが、9月には繊維商社の三菱商事ファッションのOEM部門の吸収分割も発表している。「製造小売業の強みは、同じプレーヤーが製造も小売りも担ってこそ発揮される。商品を企画する人が(間に商社を挟まずに)工場と直接やり取りすることで、タイムロスなく無駄のないモノ作りができる」。
24年8月期は営業収益で同10.1%増の6400億円、営業利益は同44.9%増の480億円、純利益は同49.6%増の330億円を見込む。21年7月の公表時に「手堅く想定した」と堂前社長が話していた24年8月期を最終年度とする中期経営計画の数値(営業収益7000億円、営業利益750億円)には未達(為替影響を差し引いても未達)となった。24年8月期の出店は、国内純増64、海外同79を計画する。海外は中国本土を軸に、ほかタイ、ベトナムなど。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。