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「グッチ」のミケーレが退任

 「ラフ・シモンズ」のブランド終了のニュースに続き、休日に届いたのは「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレ退任のニュース。驚いた人もとても多いと思います。詳細は以下の記事2本をお読みください。

 ここ数年で多様性・包括性の価値観が世の中全体に浸透しつつあると感じますが、まさにそれを体現してきたのがミケーレの「グッチ」ではないでしょうか。世の価値観を変えられるデザイナーやブランドって、多くはありません。記事にある通り、「デザインの大きな方向転換を求められ、それに応じなかった」ことが退任の理由なのだとしたら……。そのやり取りを想像するととても寂しいですね。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレが退任か 有力な情報筋がコメント

 有力な情報筋によると、「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が、ブランドを去るようだ。早ければ11月23日(水曜日)にも声明が発表される予定。ミラノ時間22日夜にブランドに何度もコメントを求めたが、返答はなかった。

 匿名を条件としたある関係者は、米「WWD」に対し、ミケーレはブランドを盛り上げるために「デザインにおける大きな方向転換を求められた」が、その要請に応じなかったと語った。また別の関係者によると、グッチの親会社であるケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(François-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)は、同グループのスターブランドである「グッチ」の転換を検討しているという。

 ピノー会長兼CEOが主要ブランドの転換を図るのは、これが初めてではない。2021年11月には、ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)を大きな成功に導いたダニエル・リー(Daniel Lee)=クリエイティブ・ディレクターを更迭するという驚きの行動を起こした。後任のマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)はデビューから2シーズンで、ブランドの職人的なルーツを取り戻すことで、急速にその名を知らしめた。

 ミケーレは、1972年ローマ生まれ。ローマのファッションアカデミーで学ぶ。「フェンディ(FENDI)」でシニア・アクセサリー・デザイナーを務めた後、2002年にトム・フォード(Tom Ford)率いる「グッチ」のデザインオフィスに参加。11年から当時のクリエイティブ・ディレクターだったフリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)の“右腕“となるアソシエイト・クリエイティブ・ディレクターを務め、14年からはグッチ傘下の陶器ブランド「リチャード ジノリ(RICHARD GINORI)」のクリエイティブ・ディレクターを兼務してきた。そしてジャンニーニの退任後、15年1月にデザインチームのトップとしてコレクションを披露。その数日後に正式にクリエイティブ・ディレクターに就任した。

 ミケーレによるジェンダーの既成概念を超越したロマンチックなコレクションは、多くのデザイナーにも影響を与えた。この間「グッチ」は若い世代を中心とする顧客層の拡大にも成功し、特に18年の第1四半期までは5四半期連続で売り上げを前年同期に比べて35%以上伸ばすという大成功を収め、当時は100億ユーロ(約1兆4500億円)ブランドへの成長を遂げることを表明していた。
 
 しかし、ケリングは先月、現在の「グッチ」は成長しているものの、そのペースがグループ内の他ブランドに比べて鈍化していると発表していた。22年第2四半期は前年同期比4%増、第3四半期は同9%増にとどまっている。22年第3四半期の数字はアナリストの業績予測をわずかに下回り、ライバルであるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)のファッション&レザーグッズ部門の22%の成長より遅れている。

 ミケーレをクリエイティブ・ディレクターに起用したマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼CEOは、彼の独創的な世界観やクリエイションをサポートする良き理解者として知られてきた。しかし、関係筋によると、「ミケーレとビッザーリの蜜月関係は終わり、以前ほど強い関係ではなくなっている」という。

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NEWS 02

「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレ退任が決定 「一人ひとりが持つ視点の違いにより、道が別れる時がある」

 「グッチ(GUCCI)」と親会社のケリング(KERING)は23日(中央ヨーロッパ時間)、同ブランドのクリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)がブランドを去ることを正式に発表した。米「WWD」は22日、このニュースをいち早く報じていた。後任は未定。声明によると、「新しいクリエイティブ組織が発表されるまで、デザインオフィスはメゾンの方向性を引き継いでいく」という。

 2002年に「グッチ」のデザインオフィスに加わり、15年1月からクリエイティブ・ディレクターを務めてきたミケーレは、「私たち一人ひとりが持つ視点の違いにより、道が別れる時がある。今日、私の愛と創造的な情熱の全てをたゆまず捧げてきた会社での20年以上にわたる素晴らしい旅が終わりを迎えた」とコメント。「この長い間、『グッチ』は私のホームであり、養子縁組したファミリーだった。この大家族に、そして『グッチ』を見守り支えてくれた全ての人々に、心からの感謝と最大かつ心からのハグを贈る。彼らと共に、私は願い、夢を見て、想像をふくらませてきた。彼らがいなければ、私がこれまで築いてきたものは何一つ実現できなかっただろう。そして彼らに心からの願いを捧げる。人生を価値のあるものにする繊細で形のない夢をこれからも育み続けられますように。自分の価値観に忠実であり続けながら、詩的かつインクルーシブなイメージで自分自身を養い続けることができるように。そして、自由な風に吹かれ、常に情熱を持って生きることができますように」と話す。

 ミケーレをクリエイティブ・ディレクターに起用したマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「14年の終わりにアレッサンドロと出会い、以降共に働き素晴らしい成功を収めることができて、本当に光栄だ。彼の20年に渡る『グッチ』への貢献、比類なき愛、ユニークなビジョンに感謝したい」とコメント。また、フランソワ・アンリ・ピノー(François-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEOは、「『グッチ』とアレッサンドロがこれまで共に歩んできた道はユニークであり、メゾンの歴史における傑出した瞬間として残るだろう。この冒険に、自分自身の多くを捧げてくれたアレッサンドロに感謝している。彼の情熱や想像力、独創性、そしてカルチャーは、『グッチ』 の居場所を中心に押し上げてくれた。彼のクリエイティブな旅の次章が素晴らしいものになることを祈っている」と話す。

 後任の人選について、関係者の間では内部昇格が予測されている。ある関係者は、最近スタジオ・デザイン・ディレクターに就任した「グッチ」のベテラン、レモ・マッコ(Remo Macco)の名を上げる。彼は現在、ミケーレの美学とバランスを取るためによりコマーシャルな製品の提案を任されている。もう一人の候補は、同じく「グッチ」のベテランであるダヴィデ・レンネ(Davide Renne)だ。ビジネス特化型SNS「リンクトイン(LinkedIn)」のプロフィールによると、レンネは04年にグッチに入社。現在はデザイン・ディレクターを務めている。

 ミケーレは、1972年ローマ生まれ。ローマのファッションアカデミーで学ぶ。「フェンディ(FENDI)」でシニア・アクセサリー・デザイナーを務めた後、2002年にトム・フォード(Tom Ford)率いる「グッチ」のデザインオフィスに参加。11年から当時のクリエイティブ・ディレクターだったフリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)の“右腕“となるアソシエイト・クリエイティブ・ディレクターを務め、14年からはグッチ傘下の陶器ブランド「リチャード ジノリ(RICHARD GINORI)」のクリエイティブ・ディレクターを兼務してきた。そしてジャンニーニの退任後、15年1月にデザインチームのトップとしてコレクションを披露。その数日後に正式にクリエイティブ・ディレクターに就任した。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。