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「ベータ」の日本独自の進化に期待

 本日4月27日、埼玉・越谷のイオンレイクタウンに「ベータ」の日本4号店がオープンします。米国発祥の「ベータ」が日本に上陸したのが20年8月のこと。“売らない小売り”“体験型ストア”の先駆けとして、弊紙も含め多くの媒体が取り上げました。あれから2年。日本では百貨店の“売らない小売り”への参入が目立ちますが、米国ではコロナ禍で「ベータ」全店が閉鎖したこともあり、“売らない小売り”ブームはもう過去のもの、という声もなくはありません。

 でも、そんな声を吹き飛ばすように日本の「ベータ」は独自の模索を重ねていて面白いんですよ。越谷の新店にはライブキッチンを設けて、家電のレンタルサービスと組んだり、同じ区画の「スターバックスコーヒー」と一緒にイベントを行ったりしていくそうです。“アメカジ”もそうですが、本来米国発だったものが日本で独自に進化していく例って多いですよね。「ベータ」もそんなふうになっていくと面白いなと期待しています。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

“売らない小売り”ブームはもう終わった? 「ベータ」北川代表に聞く日本市場の展望

 “売らない小売り”の先駆け的な存在、「ベータ(b8ta)」を日本で運営するベータ・ジャパン(北川卓司代表)は4月27日、埼玉・越谷のイオンレイクタウンに4店目となる常設店を出店する。同社は先日、第3者割当増資による累計6億円前後の資金調達も発表。一方で気になるのが、「ベータ」発祥の地である米国の事情だ。米国はコロナ禍による客数減の打撃が大きく、22年2月をもって「ベータ」は全店閉店している。日本では百貨店を中心に“売らない小売り”への新規参入が目立つが、米国の潮流を受けて「“売らない小売り”のブームは既に終わった」という声もある。ベータ・ジャパンは今後どのような展望を描くのか。北川代表に聞いた。

※「ベータ」は2015年に米サンフランシスコ郊外のパロアルトに1号店をオープン。日本上陸は20年8月で、新宿、有楽町に同時出店した。一部商品は在庫を持ちその場で販売もしているが、売ることを店の主目的とはせず、出展スペースを月額使用料で企業やブランドに提供するビジネスモデルを採っている。越谷店は49センチ×98センチ四方のスペースが月額30万円。テスター(店頭スタッフ)の雇用や教育は出展企業ではなく「ベータ」が担う。「ベータ」は店内カメラで収集した客の行動データやテスターが集めた声を出展企業にフィードバックする。

WWD:まずは新店の話から。4号店の出店先に越谷のイオンレイクタウンを選んだ理由は。

北川卓司ベータ・ジャパン代表(以下、北川):大阪や福岡などへの出店も検討したが、東京の本社が店舗を運営することを考え、都心から1時間以内で行ける横浜、川崎、越谷などが最終的な候補だった。イオンレイクタウンは圧倒的なトラフィック(集客、店舗前交通量)があり、客層が30〜40代のファミリー中心で「ベータ」の既存3店とは異なる。「スターバックスコーヒー(STARBUCKS COFFEE)」と同じ区画内にオープンできることも大きな決め手となった。トラフィックは全店の中で越谷店が一番多くなるかもしれないと期待している。

WWD:3号店の渋谷店では“食”にフォーカスし、試飲試食を打ち出した。越谷店の注力ポイントは。

北川:渋谷店の試飲試食は非常に好評で、モノではなく体験を打ち出すことに手応えを得ている。食との関連で渋谷店に調理家電などが出展すると、「実際に試してみたい」という声がお客さまからは非常に多かった。それを受けて、越谷店ではもう一歩踏み込んでライブキッチンを設けている。コロナの状況を見ながらにはなるが、順次お客さまがライブキッチンで家電を実際に使えるようにしていく。さらに、家電のレンタルサービスを手掛けるレンティオと3月に業務提携しており、越谷店ではレンティオを通して気に入った調理家電はその場でレンタルを申し込めるようにした。“売らない小売り”には百貨店などさまざまな企業が参入し、既にコモディティー化している。競合他社との差別化として、ライブキッチンの設置やレンタルサービスとの提携が次の一手になると考えた。また、越谷店では同区画の「スターバックスコーヒー」やイオンモール、りそなグループとも共同で、さまざまなイベントを実施していく予定だ。

WWD:20年8月に新宿、有楽町に出店し、渋谷店を出店したのは21年11月。そこから越谷出店までは約半年と短かった。今後もこのスピードで出店を続けるのか。

北川:以前から発表している通り、常設店の数は25年時点で8〜10店をイメージしている。4号店の出店スピードに関しては、社内からも「少し早過ぎるのではないか」という声はあった。確かに現状の社内の人材リソース(ベータ・ジャパンとして社員数40人強)を考えると、半年に常設店を1店出店するというのは少しスピードが早い。まずは1年に1店といったペースで進め、調達した資金も生かしてチームメンバーが増えていけば、半年に1店のペースで出店していきたい。22年中の新規出店は越谷のみだが、ポップアップストアは2〜3拠点で行う予定だ。越谷で運営が滞りなく進むことを確認できたら、今後は東京からさらに離れた地域への常設店出店も検討したい。

WWD:ベータ・ジャパンとして、アジア諸国への出店も目指すと公言している。

北川:23年中に、タイ、台湾、韓国でまずはポップアップストアを予定している。既に現地のデベロッパーとの交渉も始めている。出展は現地ブランドと日本ブランドをミックスし、現地ブランドが日本市場に進出する際の足がかりにもなれればと思っている。

「本国の全店閉店による日本事業への影響はない」

WWD:最大23店を運営していた米本国は、22年2月をもって全店閉店した。どういった経緯があったのか。

北川:日本の1号店、2号店のオープン翌月である20年9月には、(コロナ禍により来店客数の回復が見込めない本国側の要請を受けて)本国との資本関係を解消し、日本国内での商標・ソフトウエアの使用について本国にライセンス料を支払う形に切り替えていた。21年12月には商標権とソフトウエアのライセンスを独占的に取得して本国から独立した。つまり、日本のお客さまが「ベータ」として認識している店やサービスは、ベータ・ジャパンが作り上げてきたものであり、本国の全店閉店による日本事業への影響はない。車社会である米国は、コロナ禍で来店客数が平均で50〜70%も減っていた。また、本国では来店客数に応じて出展料を決める歩合制モデルも導入しており、そこも痛手となった。日本は出展料を固定しており、その点も米国とは異なる。

WWD:米国での全店閉店が報じられた際、「“売らない小売り”のブームは既に終わった」という声も出た。そういった声に対してはどう思うか。

北川:本国の状況からそういう意見が出るのも当然かとは思う。しかし、車社会の米国、電車社会の日本(の主要都市)というように、米国と日本では与件が異なる。米国で頓挫したからといって日本も同様になるとは言えない。日本は家電量販店を例にとっても、非常にプレーヤー(企業数)が多く、店舗数も多い。実店舗の利便性が消費者に受け入れられている。コロナ禍を背景にECが盛り上がったからといって、実店舗が突然、全てECに置き換わるということはない。その点もECの比重が劇的に高まっている米国とは異なる。日本の商業施設の全テナントが、われわれのような売ることを主目的にしない小売りになるといった未来は考えられないが、施設内の1、2個のテナントがそうなる可能性は十分にある。商業施設にはポップアップスペースが何箇所かあるが、それを切り替えていくという流れは日本国内で進むと思っている。

WWD:6月末までで完了する計6億円の資金調達を生かして、“売らない小売り”のビジネスモデル自体を他社に売っていく事業案も発表している。

北川:国内で「ベータ」を今後何十店舗も出店できるかというと、それは難しい。商業施設などが運営するポップアップスペースの裏側の運営をわれわれが担うなどし、他社が「ベータ」のようなRaaS(Retail as a Service、サービスとしての小売り)を容易にスタートできる仕組みを整えて事業化していくことで、ベータ・ジャパンのビジネスが加速する。一見、商業施設が運営しているポップアップスペースのようで、実際は「ベータ」の什器が入り、われわれの店頭データ収集・活用のシステムが動いているといったイメージだ。4月に完了したシリーズBファーストクローズの第3者割当増資では、東芝テックがリードインベスターとなった。POSシステム大手で多数の企業顧客を抱え、システムの保守にも長けた同社と組むことで、こうした新事業がスムーズに進められると考えている。

WWD:百貨店なども“売らない小売り”に続々参入している。百貨店は接客力が強みであり、自店舗内に出店するため家賃もかからない。そうした競合に対し、改めて「ベータ」の強みは何か。

北川:競合の中で多店舗展開できているのは、現状「ベータ」のみだ。競合との差別化として、繰り返しになるが越谷の新店ではライブキッチンを導入したり、家電レンタルサービスと組んだりしている。また、われわれも接客力はオープン時から強みとしている。イベントなどに「ベータ」のテスター(店頭スタッフ)を派遣してほしいという声も商業施設から多数寄せられている。現状ではスタッフ数が限られるので全て断っているが、そのような人材派遣業ももしかしたら将来的に可能性があるのかもしれない。そういったアイデアも含め、日本ではまだまだ事業の可能性が多くあると思っている。

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NEWS 02

「レディメイド」が“億越え”トゥールビヨン時計発売 細川雄太に聞く「パーネル」コラボの裏側

 細川雄太の「レディメイド(READYMADE)」は5月に、スイスの高級時計「パーネル(PURNELL)」とコラボした複雑機構トゥールビヨン搭載の機械式腕時計“レディメイド × パーネル エスケープⅡ(READYMADE × PURNELL ESCAPE Ⅱ)”を発売する。

 “エスケープⅡ”は、世界最速3軸トゥールビヨンである“スフェリオン”を2つ搭載した「パーネル」の代表モデル。コラボモデルは、カーボンラミナ(税込み6825万円)、ホワイトパーネルマクロファイバー(同6900万円)、サファイア・クリスタル(同1億8450万円)の3種類のケースから選べ、最高級モデルは1億円を優に超える。ストラップの素材には、「レディメイド」の代名詞でもあるビンテージのミリタリーテントを採用。左側のバレル、リューズ、ケースバッグリング、バックル、専用ボックスに“READYMADE”のロゴを入れ、右側のバレルには、エジソンが残した「Time is really the only capital that any human being has and the thing that he can least afford to waste or lose.(時間は人間に与えられた唯一の資本であり、無駄にしたり失ったりしないよう努めるべき)」という哲学を刻印した。ファッションブランドとしては異例の超高級時計コラボについて、細川デザイナーに聞いた。

――「レディメイド」として、初の時計のデザインに何を心掛けた?

細川雄太デザイナー(以下、細川):「レディメイド」にはミリタリーアイテムを解体することで、反戦のメッセージを込めている。そのコンセプトを踏まえた肯定的なデザインにしたくて、希望を虹色で表現した。

――今回もベルトにビンテージのミリタリーテントを使っている。時計自体には、リサイクル素材を取り入れようと試みた?

細川:時計自体は「パーネル」が素晴らしい技術を持っているのでプロに任せて、僕は外装のデザインだけ。どうすれば「パーネル」のブランドイメージと「レディメイド」のブランドイメージが中立でいられるかをすごく考えて、お互いの良いところをとった感じ。

――最もこだわった点は?

細川:色のバランスかな。ベルトがカーキなので、それに合わせて、“スフェリオン”をオレンジとグリーンにした。それと、ビンテージウオッチから持ってきたカラーパレットを使っている。経年変化で焼けたような色合いと、宝石の色のバランスを見ながら、「パーネル」らしいカラーリングをイメージした。

――時計と他のアイテムとで、デザインの思考に違いはあった?

細川:時計の中身を知り過ぎるとデザインできない気がしたので、あまり意識していない。知らないから挑戦できるデザインもある。

――細川さん自身は、時計に機能性や実用性を求める?

細川:正直、機能は全然必要ないと思っている。僕は、普段ビンテージウオッチをしているけど、これに対して「タッチパネルだったらいいのに」とか思ったことがない。ビンテージの不便なところはいっぱいあると思うけど、それがいい。どこが良いかの理由はないと思う。だから今回も機能ではないところで魅力的に感じる時計を作りたかった。

――あらためて、1億8450万円の時計をデザインしてどう思う?

細川:時計の世界の話を聞いたら、そういう世界もあるのかなと、だんだん実感が湧いていった。僕にとってはめちゃくちゃ高いけど、NFTとかを見ているとそれ以上の値段でも売れているものがたくさんあって、不思議な感じだった。一度だけ実物を腕につけたのだけど、全部が宙に浮いていて、本当に“宇宙”みたいですごかった。

――細川さんにとって時計とは?

細川:仕事中は重いので外してしまうけど、人と会うときには必ず着けるので、僕にとってはパンツをはくのと同じような感覚(笑)。

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最新号の読みどころ

記録的な熱波に見舞われた今季のメンズ・ファッション・ウイークは、価値観をアップデートする2つの意味での「解放」がキーワードになりました。1つは、堅苦しいイメージも強い伝統的なテーラードスタイルからの解放。もう1つは、「男はこうあるべき」という固定観念からの解放です。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」に象徴される、繊細さや脆さを併せ持つしなやかなマスキュリニティー(男性性)の表現を起点に、メンズファッションの現在地を総括します。