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業界の常識に「なぜ?」

 本日1本目にご紹介するのは、バロックジャパンリミテッドの村井博之社長のインタビュー記事です。村井社長はキヤノンや日系航空会社の香港法人社長をへて現職に就いています。初めてお会いしたのは10年ほど前ですが、アパレル業界で当然とされていることや業界の常識に「なぜ?」を持ち込む視点が当時から特徴的で、異業種出身の社長の強みだなと感じていました。

 業界を取り巻く環境はこの十数年で大きく変わり、村井社長が疑問視していた業界の当たり前や常識は、コロナ禍がトドメを刺す形ですっかり崩壊しました。記事にある「業界として、企業として、本質を追求しないと消費者の選択肢から抜け落ちてしまう」といった趣旨の村井社長の危機感に共感する人は多いと思います。世の中の変化と向き合い、業界や企業本位ではない今後のビジネスをいかに築くか。それについてはバロックにもまだ答えはないようですが、こういう時代だからこそ、“守り”ではなく、新たな芽を探す“攻め”が重要だなと感じています。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

バロック村井社長が考える 経営者として「売上高」よりも大事にすべきこと

 バロックジャパンリミテッドの2021年3〜8月期は営業利益5億2000万円、純利益2億9000万円で、前年同期(営業利益9億7000万円、純利益12億円)に続き上半期を黒字で折り返した。コロナ前の水準には至らないものの、売上高(前年同期比26.9%増)、売上総利益(30.9%増)ともに大きく回復している。主力の「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」などSC販路のブランド(前年同期比27.9%増)、「マウジー(MOUSSY)「スライ(SLY)」などファッションビル販路のブランド(同16.7%増)がけん引した。だが、村井博之社長は状況を楽観していない。「コロナ禍を経て、お客さまに求められる商品はより本質的なものとなる。市場にないものを作るという『マーケットアウト』の発想を常に持ち続けなければ生き残れない」と気を引き締める。

WWD:上半期を振り返ると?

村井博之社長(以下、村井):黒字着地はできたものの、課題の残る上半期だった。8月に急激に感染状況が深刻化し、ある程度の需要を見込んで準備していた夏物在庫の消化に追われ、値引き販売が増えてしまった。昨年は4月の緊急事態宣言を受けて、急きょ夏物企画の仕入れにブレーキを掛けたため、セールもほとんどせず売り切ることができた。結果論にはなるが、仕入れモデルとしてはこちらの方が健全であり、理想に近かったと言える。

WWD:売上高、売上総利益ともに順調に回復している。

村井:売上高を右肩上がりで伸ばすことを正義と考えるのは、もういい加減やめにしなければならない。日本では消費者のボリューム自体が減る中、既存店売上高を上げ続けることにこだわれば過剰生産が常にまとわりつき、いつまでたってもセールはなくならない。もちろん、すぐにゼロにはできないが、これ(コロナ禍)を契機にすることはできる。

 30年前の夏のクリアランスセールは、7月に2週間開催する程度だった。これがじわじわと拡大し、いまや6月から前倒し開催しているところもあれば、8月までダラダラ続けているところもある。我々のような規模の大きい上場アパレルがそれをしていると、業界全体が引っ張られてしまう。今回のコロナ禍で従来の商習慣に疑問を持つ経営者が、一気に増えていると感じる。これを実行に移すことが重要だ。

WWD:値引き販売を減らすために、仕入れコントロール以外ではどんな努力が必要か。

村井:商品企画を見直すことも肝要だ。世の中に本当に必要とされる商品ならば、値引きをしなくても売り切れる。最近ではQR(クイックレスポンス)生産が流行り言葉のように言われているが、これに頼ってばかりではいけない。周到に練った商品企画がヒットし、在庫が追いつかなくなって追加発注を掛けるのであれば歓迎すべきこと。しかし、コロナ禍という状況になって増えているのが“悪い”QR。自分たちでよくものを考えず、他社で売れている商品を横目に見て、似たり寄ったりの服を急いで生産することだ。

 期初の企画段階でしっかりお客さまの方を向き、意思のある商品を作らなくてはならない。本質的でない商品は同質化を生み、いずれは廃棄の温床にもなる。このようなことを繰り返しているプレーヤーは、消費者から「必要ない」という烙印を押されるのは時間の問題だ。これは自戒を込めて言うことでもある。

WWD:新型コロナ収束はまだ見えてこない。

村井:当社はこれまで、ITバブルが崩壊した2000年代前後には「マウジー(MOUSSY)」「スライ(SLY)」が、リーマンショック(09年)のころには「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」がそれぞれ業績を伸ばした。消費マインドが停滞する中、逆にそれを好機と捉え、値ごろな価格で独自性のあるファッションを打ち出たことが消費者の心をとらえたのだと自負している。今回のコロナ禍も大きなピンチではあるものの、そこには必ずビジネスチャンスが眠っているはずだ。

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NEWS 02

ユナイテッドアローズの新レーベル、ヨガ歴18年のディレクターによるこだわりアイテム

 ユナイテッドアローズ(以下、UA)はこのほど、オリジナルのヨガウエアを軸とした新レーベル「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)以下、トゥー」を始動した。同社の主な顧客層である30〜40代の女性の間で、ヨガへの需要が高まっていることや生活圏内で過ごす時間が増えているといったライフスタイルの変化を受け、「スポーツに寄りすぎず、都市での日常生活をクロスオーバーするブランド」として、アクティブウエアを中心としたオリジナルアイテムに、セレクトしたカジュアルデイリーウエアや雑貨を交えて提案する。

 企画を担当した浅子智美「UA」ウィメンズファッションディレクター兼バイヤーは、ヨガ歴18年。オリジナル商品の構成は約6割で、浅子ディレクターの実体験に基づくリアルな気付きや工夫を随所に反映している。アクティブウエアのラインアップは、ハイウエストのレギンス2型(税込1万1000円、1万2000円)やブラトップ2型(同8250円)、カップ付きキャミソール(同8800円)など。日常着に取り入れてもらうことを想定し、ホワイトやブラック、ブラウンなどのベーシックカラーを採用した。サステナビリティを意識し、生地は再生素材を使用。梱包材やタグなどの副資材もバイオマス由来の製品を取り入れている。さらに、日本環境設計と連携してオリジナルウエアの回収・再資源化にも取り組む。

 デザインは、“セカンドスキン”をコンセプトにファッション性を保ちつつ体に負担をかけない設計にこだわった。「例えば最近のヨガウエアはアシンメトリーなデザインも多いが、体は左右対称な状態がベスト。『トゥー』では体のバランスを邪魔しないことを優先した」と浅子バイヤー。また「お腹を出していた20代とは違い、今はお尻のラインや脇のお肉が気になるのが正直なところ。自分のリアルな視点を生かし、30〜40代の女性が自信を持って動けるようなシルエットやデザインを提案している」。

 カジュアルデイリーウエアを中心とする仕入れブランドは、サステナブルなビジョンを共有することを軸にセレクトした。すでに「UA」の顧客層からも支持を得ている「ザ・リラクス(THE RERACS)」「チノ(CINOH)」のほか、今治タオルのメーカーが作るアパレルブランド「サナ(SANA)」、アパレル以外では吸水型ショーツ「ベア(BE-A)」の商品も取り扱う。浅子ディレクターは、「特に『サナ』は同レーベルの独自性につながると期待している。オーガニックコットンの生地を使用した1枚で着られるアイテムで、『UA』本体よりもカジュアルなテイストを着こなしたい層を狙う」と言う。これらのアイテムとアクティブウエアを交えたスタイリングを、他のスポーツブランドにはない強みとしていく。

 同社は過去に、スポーツレーベル「サウンズグッド(SOUNDS GOOD)」や、モードカジュアルを切り口にランニングアイテムを打ち出した「アンルート(EN ROUTE)」などを手掛けてきたが、「サウンズグッド」は2011年に終了し、「アンルート」は18年に店舗を閉め、現在はメンズのみの販売に縮小した。3度目の挑戦といえる今回は、スポーツだけでなく、ウェルネスやサステナビリティの要素を取り入れて打ち出す。浅子ディレクターは、「スポーツとウェルネスが紐づいて考えられるようになったことは、以前の市場とは違う点だろう。心の健康を大切にするヨガの思想とも一致する。ヨガは、マタニティーヨガやリラックスヨガなどのジャンルが豊富で、ほかのスポーツよりも間口が広い点も特徴だ。ニューヨークのアスレジャー的な打ち出しは難しいかもしれないが、コロナ禍で生活圏内での暮らしを自然に楽しむ感覚は浸透している。私自身、生活圏内であればレギンスで移動していることも多い。そんなライフスタイルに寄り添うファッションの選択肢がもっとあってもよいはず。『トゥー』はヨガを軸にUAならではのファッションと都市をリンクさせた提案を強みにしていく」と話す。

 従来のファッション以外のモノ・コトの提案を模索する同社にとって、同レーベルはウェルネスにまつわるコトコンテンツの発信基地の役割を担う。今後「トゥー」取り扱い店舗の六本木ヒルズ店や渋谷スクランブルスクエア店では、開店前に外部講師を招いたヨガ教室の開催を予定しているほか、各店舗で食事や睡眠、ビューティーなどを交えたコンテンツ発信に力を入れる。レーベルとしてスタートさせたことで出店のリスクを伴わないが、今後は「市場の反応を見ながら展開店舗を拡大させ、将来的には単独店舗の出店も目指す」という。

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最新号の読みどころ

記録的な熱波に見舞われた今季のメンズ・ファッション・ウイークは、価値観をアップデートする2つの意味での「解放」がキーワードになりました。1つは、堅苦しいイメージも強い伝統的なテーラードスタイルからの解放。もう1つは、「男はこうあるべき」という固定観念からの解放です。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」に象徴される、繊細さや脆さを併せ持つしなやかなマスキュリニティー(男性性)の表現を起点に、メンズファッションの現在地を総括します。