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ファッションをスマホ周りに拡張しよう
こういうニュースが世に届けば、「もう、服だけを作っている場合じゃないね」という認識が広がるでしょうか?スマホケースはもちろん、LINEスタンプ、Zoomの背景、アバターのアクセサリーなど、スマホ周りにはファッション業界のビジネスチャンスがいっぱいあるハズです。かつて取材したアントレプレナーは、「最近の進化は、半分以上がスマホの中。だったら半分以上のビジネスチャンスは、スマホの周りに存在する」とおっしゃっていました。まさに。
若い世代は、TikTokやYouTubeに毎日数時間を費やします。ならば可処分所得の数割を、この界隈で消費するハズです。ファッションをスマホ周りに拡張しましょう。
延べ13万個を販売したスマホケース「エジュー」のシンデレラストーリー
パーククリエイションのバッグブランド「エジュー(AJEW)」のジップバッグ付きスマホケースが人気を集めている。小銭入れやポーチとして使えるのはもちろん、スマホスタンドにもなって、取り外せるリングやストラップも付く。それらの機能に加えデザインのかわいらしさも支持されて、ファッション感度の高いインフルエンサーやファッション業界人から火が付いた。一度愛用すると、“無くては困る”機能も買い替えを後押しし、iPhoneがバージョンアップされるごとに売れるという。8000円というスマホケースとしては高価格帯であるにも関わらず、これまでに延べ13万個を販売した。2021年3月期の売上高3億円(予想)のうち、約2億円が「エジュー」のたった1型のスマホケースの売り上げだ。人気の秘密を「エジュー」のデザイナーでもあるパーククリエイションの新井愛子社長に聞いた。
WWD:「エジュー」を立ち上げる以前もアパレルブランドを手掛けられていたそうですね。
新井愛子パーククリエイション社長(以下、新井):2004年に大学を卒業してアパレル業界に就職しました。ちょうどその頃に読者モデルブームが起きて、私も少し参加させてもらっていたんです。当時は読モが何かモノを作るとか販売するとかが意外と簡単にできてしまっていました。結局会社は2年で辞めて、アクセサリーブランドを立ち上げ、雑誌に掲載してもらったりしながら韓国で仕入れたモノを、個人のホームページで販売し始めました。自分で何かしたいとは思っていたんですけど、素人だし、自分でできる精一杯のことがそれだったんですね。たまたま韓国の工場の知り合いから「デザインしてみない?」と言われて、デザインもするようになりました。当時、スタイリストの風間ゆみえさんらの影響でカゴバッグがはやっていたこともあり、09年にバッグブランドとして「エジュー」をスタートして、バッグを2型作ったんです。今でも「エジュー」でカゴバッグを作っているのはその名残です。
WWD:スマホケースは何をきっかけに作り始めたんですか?
新井:バッグを作ってすぐにフリーズショップ(当時)と契約して販売することになりました。雑貨がすごく強いお店だったので、スマホケースのリクエストがあって作ることにしたんです。それが16年で、出産を機にブランドごと辞めちゃおうかなと思っていた頃でした。それで最後のコレクションだと思いながらバッグの実績を生かして、スマホケースにもバッグを付けたら面白いんじゃないかなと、ジップバッグを付けたケースを作ったんです。当時はiPhone6のときで最初は黒、グレー、ピンクの3色でした。売れるとも思ってなかったし、それから1年ぐらいは本当に売れなかったんです。
WWD:機能面や形は当時のままですか?
新井:形や機能自体は最初から変わっていません。昨年斜め掛けできるように取り外しできるショルダーストラップを付けました。当初はストラップも有り無しで選べるようにしていたんですが、今は全てにストラップが付いていて、必要ないお客さまには取り外して使ってもらえるようになっています。iPhoneは毎シーズン新しいモデルが発売されるので今だと7サイズ展開。靴のサイズと同じように在庫を抱えないといけないので、もっと分かりやすく販売したいし、卸先の在庫リスクも減らしたいと思い、型数はできるだけ少なくしています。
WWD:人気が出たきっかけは?
新井:インスタグラムの影響が大きくて、本当に口コミだけでいろんな人が使ってくださるようになりました。最初はモデルの田中里奈さんだったと思います。そこから新木優子さんや馬場ふみかさん、ローラさんらが次々にSNSにアップしてくださって、ファッション感度の高い女の子たちが毎日SNSにアップしてくれるような現象が起きたんです。もう毎日社内で大騒ぎでした。
WWD:定価の8000円は、ほかのiPhoneケースと比べると高めですよね?
新井:ブランドごと辞めようと思っていたので、当時は本来だったら5000円ぐらいで付けていたはずの上代を「もう売れるか分かんないしこれでいこうか」みたいな感じで、うちの平均単価よりも高く値付けしました。でも今、人間が一番触る道具ってスマホだと思うんです。バッグと比べても触る頻度が高くて経年劣化も早いので、素材もいい素材を使わないといけない。そういう意味では、上代を上げたことで素材を選ぶ幅もバリエーションも広がりました。
WWD:買い替えの頻度は?
新井:平均だと1年です。でもブランドとしては付けっ放しじゃなく、アクセサリー感覚で使い分けてほしいなと思っています。「エジュー」は定番としてケースの形を変えることはしないので、多種多様なシーンに合わせて使い分けられるようにと、17年に「エーシーン(A SCENE)」というスマホケースブランドも始めました。パンツのポケットにも入れやすいようにバッグの部分が取り外せたりカードケースを付けたり、「エジュー」にはない機能性を持たせています。
WWD:iPhoneの新しいモデルが発売されるごとに新しいケースも売れるんですか?
新井:そうですね。例えば、昨年のiPhone12の発売に合わせて自社サイトで「エジュー」を発売すると、5時間で600個が完売しました。リピート率が高いんです。iPhoneを買い替えなくても一度気に入ってくださると毎シーズン違うカラーで購入してくださるので、きちんとデザインと機能を訴求できているのかなと思っています。
WWD:今は“ちい財布”がブームで財布も小型化していますが、ポーチの部分には何を入れているんですか?
新井:キャッシュレスが普及してお財布はどんどん持たなくなってきたけど、お財布の機能は欲しいという人が多い気がします。「エジュー」にはお財布付きスマホケースという側面があるのかも知れません。小銭はもちろん、それぞれの生活に合わせてお薬から指輪、名刺、レシート、鍵、髪の留めゴムまでさまざまです。最近ではモデルのクリス-ウェブ佳子さんがエコバッグを入れて使ってくださっています。
WWD:ケース部分とバッグの一部を外すことでスマホを自立させられる機能については?
新井:普通に動画も観られますけど、コロナ禍でリモートでの打ち合わせが増えたので「Zoomを使うのに便利」という話を聞きました。ゴルフのレッスンでスイング動画を撮るために使っている人もいるみたいです。「それまでは缶コーヒーで支えていたんだけど」って。
WWD:最近のファッション業界におけるスマホケースの立ち位置は?
新井:これまで百貨店の1階で売っていたいわゆるシーズン商品に区画編成が起きているのは事実です。これまでだったら財布が売れ筋の雑貨だったけど、それに代わるものとしてスマホケースが出てきました。
WWD:今後スマホはどうなっていくんでしょう?
新井:将来的にはパソコンがなくなると思っています。iPhoneが折りたたみできるようになるという噂もあるし。電話の機能とパソコンのもっと間みたいなものが出てくるから、それに合わせられるガジェットのアクセサリーの提案ができたらと思いますが、本当にガラッと変わるから想像するのも難しいですよね。ただ、今スマホケースを作っている会社は以前、携帯電話のストラップを作っていた会社が多いんですね。だから時代とともに移り変わるけど、ガジェットに対してできることはあるのかなと思っています。
WWD:今後のブランドの目標は?
新井:「エジュー」は海外でも認知してもらえるようなブランドを目指しています。欧米でも日本と同じようなマーケットがあるんじゃないかな。昨年9月にパリのプルミエールクラス(展示会)に出展したかったんですが、コロナでできなくなってしまったんです。今年もしタイミングがあれば海外にもチャレンジしたいです。「エーシーン」は多種多様なライフスタイルに向けて、まずはもっと認知度を高めていきたい。「エジュー」の姉妹ブランドとして見られることが多いので、まずはそれを脱却して、本当は全然視点も違うしデザインや機能性も違うというところをしっかり訴求していきたいと思ってます。
上海の高級ショッピングモール「プラザ66」、20年の売上高は60%増 中国の富裕層は消費意欲旺盛
不動産開発や小売業を手掛ける中国のハンルン・グループ(HANG LUNG GROUP、恒隆集団)の2020年12月通期決算は、売上高が前期比0.9%増の95億2600万香港ドル(約1238億円)とコロナ禍の中でもわずかに増収となった。
同社は中国で複数の小売店を運営しているが、中でもラグジュアリーブランドが多く出店している上海のショッピングモール、プラザ66(PLAZA 66)の小売りの売上高が同60%増だったことが大きく寄与している。また賃料による収入も同34%増と好調だった。
ハンルン・グループが運営するほかのショッピングモールを見てみると、近隣地域のハイブランドが多く移転してきた無錫市のセンター66(CENTER 66)の売り上げが同72%増、上海でより手の届きやすい価格帯のブランドをそろえるグランドゲートウエイ66(GRAND GATEWAY 66)は同42%増、中国東北部の瀋陽市にあるフォーラム66(FORUM 66)は同9%増となっている。一方で、日常的な品ぞろえのモールの売り上げは軒並み同15~23%減となるなど、富裕層によるラグジュアリー消費が中国本土の成長をけん引していることが鮮明となった。
同社は、「20年上半期は新型コロナウイルスの影響による一時的な休業のため売り上げが大幅に落ち込んだが、中国本土では4月頃から急激に回復し始めた。下半期はラグジュアリーブランドが多いショッピングモールの売り上げが非常に好調で、上半期の減少分を補ってあまりあるほどとなった」とコメントした。
しかし同社の本拠地である香港では、こうした消費トレンドが逆転する。主に観光客を対象とする高級ショッピングモールは苦戦しているが、日用品を多く取り扱う地元密着型のモールは堅調だという。同社は、「中国本土と比べて香港の小売りは回復に時間がかかっている」と分析した。
なお北京華連グループ(BEIJING HUALIAN GROUP)が擁する高級百貨店のSKP北京も非常に好調で、20年の売上高は同17%増の177億元(約2832億円)だった。
中国の国家統計局が1月18日に発表した資料によれば、20年の国内総生産(GDP)は同2.3%増にとどまり、1977年に終結した文化大革命以来およそ40年ぶりの低水準となった。小売りは同3.9%減となっているが、2020年10~12月期で見ると前年同期比4.9%増とブラスに転じている。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。