「ステラ スポーツ」
手頃でラクチン!デザイン性も向上で当面廃れる気配ナシ
「オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオ」
スタイルのスポーツ化が止まらない。バッグでは売れ筋の一つにバックパックが浮上し、シューズはカジュアル化がさらに加速。しばらくブームが続いた「ニューバランス(NEW BALANCE)」のほか、「ヴァンズ(VANS)」や「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」など、スポーツやストリートブランドのスニーカーが百貨店シューズ売り場の人気上位に食い込んでいる。
最近のニュースを振り返っても、スポーツ、もしくはアウトドアブランドの躍進が著しい。スニーカーセレクトの「アトモス(ATMOS)」は4月25日、銀座エリアに初出店。先行オープンしたスポーツ ラボ バイ アトモス新宿店は3月に8000万円を売り上げた。また、アシックスは「アシックス(ASICS)」「オニツカタイガー」に次ぐ第3のブランド「アシックスタイガー(ASICS TIGER)」をスタート。250億円がピークだったライフスタイル部門の売上高を伸ばし、2020年には1000億円を狙う。また、原宿はキャットストリートを中心にアウトドア化が進行。界隈に4店舗を持つ「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を筆頭に、さまざまなブランドのフラッグシップが軒を連ねる。
【コラム】「アトモス」が銀座エリアに初出店する狙い ▶︎
【コラム】原宿の“アウトドア村化”に拍車 エリア内の直営店は19店舗に ▶︎
スポーツスタイル隆盛のきっかけは、08年のリーマン・ショックだろう。リーマン・ショックを起因とする世界同時不況は、消費者が高額消費をためらう理由となり、それ以上に「着飾る」ことに対して後ろめたい思いを抱かせた。ハデな服を着て輝く「着飾る」というマインドに代わり台頭したのは、「ヘルシー」なライフスタイルを楽しむことで内面から輝くという考え方。消費者は真の「ヘルシー」を目指しスポーツに取り組んだり、「ヘルシー」なムードに憧れスポーツのムードを取り入れたりするようになった。
こうして台頭したのは、15-16年秋冬こそ若干シフトチェンジしたが、それまではスポーツに常にインスパイアされ、競技由来のユニフォームをストリートスタイルに落とし込んできたアレキサンダー・ワンや、肩肘張らないヘルシーなライフスタイルをアディダスとの協業にも取り組み描いてきたステラ・マッカートニーだ。
【ルック】セクシーにキメる、スポーツミックスを提案した「アレキサンダー・ワン」2015年春夏NYコレクション ▶︎
「アレキサンダー・ワン」2015年春夏コレクション
リーマン・ショックを機にスポーツカルチャーに触れた消費者は、価格と着心地という二つの理由で、この世界から離れることができなくなった。ここ数年スニーカーをバイイングするようになったセレクトショップのバイヤーたちは、「結局、スニーカーがヒットしている一番の理由は、価格。パンプス1足の値段で、スニーカーは2足買うことができるから」と口をそろえる。確かに一般的な百貨店のシューズ 売り場では、パンプスは1足3万円くらい。対するスニーカーは1万円台中盤〜後半が多く、「ヴァンズ」はアンダー1万円の商材も数多い。ウエアも同様で、「オニツカタイガー」と協業するアンドレア・ポンピリオは、自身のブランドならブルゾンは確実に10万円オーバーだが、コラボラインなら2万〜7万円台。“瞬殺”だった「ナイキ ラボ×サカイ」のウインドランナーも、背面に差し込まれたプリーツディテールなど一目で「サカイ」とわかるデザインだったが4万円と手頃だった。
そしてもちろん、こうしたアイテムはいずれもスポーツ由来のテクノロジーを搭載しているため、軽くて着心地・履き心地バツグン。ニットやジャージーで作るジャケットでストレスレスの着心地を知った男性が正統派のスーツになかなか戻ることができないように、スニーカーを知った女性はその履き心地ゆえ、パンプスやブーツに回帰することができなくなっている。スニーカーが躍進する一方で、ブーツは「アグ オーストラリア(UGG AUSTRALIA)」など一部を除き壊滅状態。ブーティやシューティという新感覚パンプスも長続きしなかった。
スタイルの一つとして定着
こうして考えると、スポーティーなスタイルはトレンドではなく、むしろスタイルの一つとして定着した感があるし、価格と着心地に魅了された消費者、特に中間層をファッションの世界につなぎとめる数少ない武器の一つとして、まだまだ盛りあがりそうだ。スポーツメーカー各社は今の状況を千載一遇の商機と捉えているし、ユナイテッドアローズの「アンルート(EN ROUTE)」に代表されるよう小売店の業態開発も進んでいる。業界には今、1990年代にスポーツアイテムを使ったミックスコーディネートを楽しんだ“元祖リミックス世代”が次々現れ、中核を担い始めている。彼らにとって、スーツにスニーカーを合わせたり、ジャケットの下にスポーツブルゾンをコーディネートしたりのスタイルは、もはや“当たり前“。元祖“リミックス世代”以降の若年層はメーカー側でも、リテール側でも、その動向を伝えるメディアの側でも増えているから、スポーツ由来のスタイルはより生まれやすくなっているし、また店頭に並びやすく、伝わりやすくなっている。
そしてもちろん、“元祖リミックス世代”以降の若者は、消費する側でも増えている。メーカー、小売りが提案するスポーティーなスタイルは、実売にもつながりやすくなっており、シーズントレンドによって多少の変動はあるだろうが、こうした潮流が減退し、消滅していくとは考えにくい。課題は、ファッション関心層を満足させられるデザイン性の高いアイテムの提供だが、これも心配はないだろう。特に日本においては、さまざまなデザイナーがスポーツメーカーとコラボレーション。コラボラインを通し新たな知識を身につけるとともに、協業で得た資金を自身のブランドの安定化・拡大に充てる動きが活発化しており、デザイナーとスポーツメーカーの距離は未だかつてない程近い。
正直現段階では、ファッション・コンシャス層に向けたスタイリッシュなラインと、トレンドフォロワーもしくはマス層に向けたラインは乖離している感が強いが、これも数年以内に解消していくだろう。ナナミカによる「ザ・ノース・フェイス」や「ヘリーハンセン(HELLY HANSEN)」が機能性素材を多用しつつファッション性を高め、今ではピッティ・イマージネ・ウオモなどに出展し国内外のバイヤーから支持されているように、スポーツメーカー各社は今を「自らがファッションとして認識されるための絶好のチャンス」と捉え、努力を重ねている。この努力は数年以内に結実し、スポーツブランドのボトムアップという結果をもたらすだろう。もちろん、高齢社会 の中誰もが健康的に生きるため、いつまでもスポーツを楽しみ続けるという風潮も、メーカー各社にとっては業績を下支えする存在となっている。