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「シーイン」、パリの常設店で「ファストファッション法案」に対抗
フランス国民議会が“ウルトラ・ファストファッション”と呼ばれるブランドを規制する「ファストファッション法案」を可決して以降、「シーイン」は同国内での実店舗展開を画策し、ついに最初の常設店をパリにオープンしました。これで「オンライン専業で価格破壊を伴う販売モデルを採用している企業」を規制の対象にする「ファストファッション法案」に対抗するのでしょう。
パリで店舗を構えたのは、二極化の狭間にあり苦戦が続く中価格帯百貨店のBHV。オープン日には長蛇の行列ができました。テナント収入や集客において、「シーイン」は欲しい存在だったのでしょう。BVHは、他都市の店舗への展開も考えているようです。
フランスのみならず、アメリカ、日本でも、地方や中堅百貨店は消費者に魅力的なテナント集めに苦労しています。少なくとも国外においては、こうした店舗に“ウルトラ・ファストファッション”が入店していく、そんな未来が待っているのでしょうか?
「SHEIN」、世界初のパリ常設店に賛否 市民が抗議も行列絶えず 「アニエスベー」「アーペーセー」は撤退
警察や政治家、そして通りの角まで続く長蛇の列が、「シーイン(SHEIN)の世界初となる常設店舗のオープンを象徴していた。中国発のウルトラ・ファストファッション企業による出店が、期待と同時に激しい物議を呼んでいる。
仏百貨店「BHV」マレ店の最上階、約1000㎡の売場には、黒とピンクのジャンプスーツを着た「SHEIN Squad」スタッフが並び、開店を前に午前中から入場整理券を求める客が列を作った。
20代から80代まで幅広い年代の来店客が口をそろえるのは「価格の安さ」。60代の女性客は、「まずは価格。BHVにこんなに安い商品が並ぶなんて思わなかった。これなら来てみようと思えるわ」と語った。
一方、店舗の外では数百人規模の抗議デモが発生した。手作りのプラカードや、「シーイン」に反対する署名サイトへ誘導するQRコード付きのビラを手にした市民や政治家が集結した。
パリを選挙区に持つイアン・ブロサ議員は、「『シーイン』はパリにとって望ましくないものすべての象徴だ。環境にも、労働者の権利にも、最低限の倫理にも背を向ける経済モデルだ」とWWDにコメント。ただし、地方自治体としては出店を阻止する権限がないとし、「パリ市は倫理的な企業の進出を促すことはできるが、SHEINの出店を直接止める法的権限はない。もし可能なら当然そうしていた」とも語った。
BHVを運営するソシエテ・デ・グラン・マガザン(SGM)のフレデリック・メルランCEOは、論争の存在を認めつつも「これほど多くの来店客がいるのは喜ばしい驚き」と強調した。「多くはBHVの既存客だ。最終的には販売する商品の質と、提供するサービスのレベルにかかっている」と記者会見で語った。
メルランCEOは品質への懸念を退け、「BHVが扱う『シーイン』商品は労働基準を満たしたものに限られている」と説明。また、実店舗を構えることで過剰消費を抑える効果もあると主張した。「実際に触れて試着できることで、衝動的な買い物を減らせる。さらに、『シーイン』の出店によってBHV全体の来店者数が増える」と話した。「私たちが目指すのは“質の高いショッピング体験”。商業は分断を生むものではない。朝8時半から開店を待つ人々を見て、胸が熱くなった。人を店に迎え入れるのが私の仕事だ」と続けた。
「シーイン」はこれまで、パリ・ファッションウイーク期間中などにフランス各地でポップアップを展開してきたが、常設店は今回が初。フランスのファッション研究機関「フランス・ファッション学院(IFM)」による調査では、同社はすでに“フランスで5番目に人気のブランド”であり、販売数量ベースでも第5位に位置するという。圧倒的な低価格がその人気を支えている。
今後は5都市でもオープン予定
今後は、ディジョン、ランス、グルノーブル、アンジェ、リモージュの5都市でも常設店をオープン予定。いずれもSGMが運営する旧ギャラリー・ラファイエット系列の店舗跡地に入居する。
ギャラリー・ラファイエットがBHVとの提携を解消し、名称を外した件について、メルランCEOは「双方合意の上での決定。BHVブランドの拡大に向けた前向きな動き」と説明。「シーイン」出店がBHVの業績回復につながるかを問われると、「1カ月ほどで明らかになるだろう」と慎重に語った。
政府はオンライン停止命令を発動
一方で、開店当日、買い物客が新店舗を訪れる中、フランス政府は「シーイン」のオンラインプラットフォームの停止措置に踏み切った。同社が「児童に類似する性人形」を販売していた疑いで司法当局が捜査を進めており、セバスチャン・ルコルニュ首相の命令により一時停止を決定。財務省によると、「シーイン」には48時間以内の改善報告が求められているという。仏ブランドの「アニエスベー」はSNSで「シーイン」の出店に抗議する声明を発表、BHVからも退店した。
他にもディズニーランド・パリはBHVのホリデーシーズン協賛を撤回、「アーペーセー(A.P.C.)」「フィガレ(Figaret)」「リヴドロワ(Rivedroite)」などのブランドが相次いで撤退を表明した。
また、BHVマレ本館の買い戻しを支援する計画を進めていたフランス公的金融機関「バンク・デ・テリトワール」も交渉から撤退しており、財務難にあえぐBHVにとって逆風をもたらしている。
「コーエン」を手放すユナイテッドアローズ 松崎社長が語る敗因

ユナイテッドアローズは11月7日付で子会社のコーエン(COEN)の全株式を、ジーイエット(旧マックハウス)に売却する基本合意を締結したと発表した。同日の決算会見で松崎善則社長執行役員CEOは、「2億〜3億円規模の赤字であれば今度こそ収益化できるはずだと、ここ数年もがいてきた。今もあと少し続ければ、という思いは正直ある。しかし当社としてはいまリソースの『選択と集中』を図るタイミングだと判断した」と述べ、苦渋の決断であることをにじませた。
「コーエン」は、ユナイテッドアローズのブランドエッセンスを携えながらもトレンドカジュアルをより手頃に提供することを目的に2008年に始動した。この年は「H&M」が日本に上陸し、ファストファッションが社会現象になった時期だった。同社にとっては郊外立地、低価格、小ロット・短納期といった新しい挑戦だった。9月にはリーマン・ショックが起こり、深刻な景気低迷に陥った。ファッション市場のデフレが加速する中で「コーエン」はデビューした。
一定の成長期はあったものの、コロナ禍を機に苦戦が続いていた。2025年1月期の売上高は104億円。松崎社長は「立ち上げ当初から多くの期待をいただき好調な期間も長く続いたが、小品番、大ロットのグローバルチェーンも含め競合と比較すると、ニッチになってしまっていたことで活路を見出せなくなっていった。また市場がよりクリーンモードやビジネスカジュアルへと変化する中でブランドとしての強みが商品面でも発揮できなかった」と要因を語った。
譲渡先にジーイエットを選んだ理由については、「親会社のジーエフホールディングスは物流を母体とした企業。当社では難しかったサプライチェーンのコスト面でシナジーが出せると判断した」と説明した。株式譲渡契約日は12月25日、株式譲渡日は2026年1月31日を予定する。
2025年4〜9月期の連結売上高は737億円"高感度”に手応え
同社の2025年4〜9月期の連結売上高は前年同期比8.0%増の737億円、うちユナイテッドアローズ単体は同9.0%増の683億円と好調な業績を維持している。上期はプロパー販売期間を長く設定した影響で8月にセール需要が膨らみ、売上総利益率は同0.4ポイント減の52.1%となったものの、既存店は客数・客単価ともに伸長した。
中価格帯のミッドトレンド領域では、主力の「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING)」に加えて、21年に始動した「シテン(CITEN)」も新たな柱として着実に成長している。
海外事業では、1月に中国本土初の直営店として開店した「ユナイテッドアローズ 静安嘉里中心店」の売上高が計画比30%増で推移した。「ユナイテッドアローズ」に加え、「エイチ ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」や「ロエフ(LOEFF)」など高感度ラインが、同エリアの富裕層から支持を得ている。今年9月には越境ECも開始した。店舗のない米国や韓国からの購入割合が高いことも踏まえ、「今後の出店や卸展開の可能性を感じている」という。
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