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長い「兄弟喧嘩」は終わるのか
今年は第二次世界大戦の終結から80年。戦後レジームの産物であるアディダスとプーマが統合するかもしれないというニュースには驚きました。もともとドイツの小さな村で一つの会社だったのが、戦争がもたらした創業者兄弟の確執によってアディダスとプーマに分裂したのでした。世界のスポーツ市場を巻き込んだ熾烈な商戦は、兄ルドルフ(プーマ)と弟アドルフ(アディダス)の壮大な兄弟喧嘩と言われたものです。
時が流れて、創業世代もこの世を去ったため、かつてのような激しい対立はありませんが、統合が実現したらスポーツ業界の勢力図は様変わりします。
「アディダス」が「プーマ」の買収に関心か 市場関係者の間で憶測が広まる
アディダス(ADIDAS)がプーマ(PUMA)の買収に関心を示しているのではないかとの憶測が、一部の市場関係者の間で広まっている。米投資会社メトロニュークリア(METRONUCLEAR)のロイ・アダムス(Roy Adams)共同創業者が独ビジネス紙で「プーマは緊急事態にある。経営陣が業績回復に失敗した場合、アディダスとの合併が最善の選択肢だろう」とコメントしたことや、7月に着任したアーサー・ホールド(Arthur Hoeld)=プーマ新会長兼最高経営責任者(CEO)がアディダスで取締役を務めていたことなどが発端となっているようだ。
なお、本件についてプーマはコメントを差し控えるとし、アディダスは「市場の憶測についてコメントしない方針を取っている」と回答した。
プーマは今年に入り苦戦
プーマの2024年12月期決算は、売上高が前期比2.5%増の88億1720万ユーロ(約1兆5341億円)、EBIT(利払前・税引前利益)は同0.1%増の6億2200万ユーロ(約1082億円)で着地。しかし、25年1~6月期の売上高は前年同期比4.8%減の40億1820万ユーロ(約6991億円)、調整後EBITは同77.4%減の6250万ユーロ(約108億円)と大幅な営業減益に。これを受けて同社は通期の見通しを下方修正し、売上高は2ケタ減、営業損益は赤字に転落する見込みと発表した。
また、8月下旬には米ブルームバーグ(BLOOMBERG)が情報筋の話として、ケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)一族の投資会社であるアルテミス(ARTEMIS)が、保有するプーマの株式29%の売却を検討していると報じている。
「アディダス」と「プーマ」は兄弟喧嘩の産物?
プーマとアディダスは、ルドルフ・ダスラー(Rudolf Dassler)とアドルフ・ダスラー(Adolf Dassler)兄弟が1924年に設立したダスラー製靴工場(GEBRUDER DASSLER SCHUHFABRIK)に端を発する。弟のアドルフが立ち上げた事業に兄のルドルフが加わる形でスタートしたものの、仲違いにより、それぞれ別の会社を設立することに。ルドルフは48年にルーダ(RUDA、後にプーマと社名変更)を、アドルフは49年にアディダスを立ち上げた。なお、いずれも社名は自身の名前を短縮した形となっており、本社は故郷であるドイツ・ヘルツォーゲンアウラハに構えている。
仲違いの原因は現在も不明とされているが、一説によると第二次世界大戦にまつわるさまざまな出来事が兄弟間の不和を招いたという。
「バーバリー」、株価上昇でFTSE100指数に復帰 “最もホットなブランド”にも1年ぶりにランクイン
バーバリー(BURBERRY)は、英国の代表的な株価指数であるFTSE100種総合株価指数(以下、FTSE100指数)の構成銘柄に復帰した。グローバルな指数プロバイダーのFTSEラッセル(FTSE RUSSELL)によれば、9月19日の取引終了後にFTSE100指数に組み込まれ、22日から取引されている。
同指数は、ロンドン証券取引所に上場する企業のうち時価総額上位100銘柄で構成されており、企業価値が一定の水準を下回ると外れることとなる。バーバリーは2002年に同証券取引所に上場し、09年にFTSE100指数の銘柄に選定されたが、ここ数年は業績が芳しくなく株価が低迷。24年9月に同指数の構成銘柄から外れて中型株扱いとなっていたため、1年ぶりの復帰となる。
“最もホットなブランド”ランキングにも復帰
ここ数年、バーバリーは一段階上のラグジュアリーブランドへの転身を図りつつも、マクロ経済の悪化や社会情勢の変化などもあり、2024年3月期決算では減収減益となるなど苦戦。同年7月には、新たなトップとして、コーチ(COACH)やマイケル・コース(MICHAEL KORS)など“手が届くラグジュアリー”ブランドを率いていたジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)最高経営責任者(CEO)が着任した。
その際、ジェラルド・マーフィー(Gerald Murphy)=バーバリー会長は、「『バーバリー』が英国版『コーチ』になることはない」としつつも、「今後は『バーバリー』の主な顧客にとってよりなじみのある、新鮮でありつつタイムレスでクラシックな魅力にあふれた、“日常的なラグジュアリー”を提供していく」と語っている。
その言葉通り、シュルマンCEOは前任者らが推進していた高額なレザーグッズに代わり、定番のトレンチコートやアイコニックなチェック柄をフィーチャーしたアイテムを強化。英国の俳優やアーティストを起用したスタイリッシュな広告や、ホテルをジャックした大々的なキャンペーンなどの新たなマーケティング戦略も奏功し、若年層を含めた幅広い顧客層を引き付けることに成功したという。
なお、業績面では25年3月期決算で赤字に転落しているものの、25年4〜6月期(第1四半期)の既存店ベースでの売上高は前年同期比1%減となり、アナリスト予想の同3%減を上回るなど回復の兆しも。また、英ファッションECのリスト(LYST)が四半期ごとに発表している“最もホットなブランド”ランキングで「バーバリー」は25年4~6月版で17位にランクイン。1年ぶりにトップ20に復活した。
消費者の“ラグジュアリーブランド離れ”が追い風に?
「バーバリー」の追い風となっていることの一つに、消費者の“ラグジュアリーブランド離れ”があるようだ。原料や輸送費などコストの高騰により、ラグジュアリーブランドは強気な値上げを続けてきたが、景気停滞や地政学上の先行き不透明感などの影響で中間層の消費意欲や購買力が減退。富裕層以外にとっては手の届かない高嶺の花となったラグジュアリーブランドに代わり、頑張れば手の届く価格帯の“アフォーダブルラグジュアリー”が台頭している。アナリストらによれば、こうしたことを背景に、「バーバリー」がラグジュアリーブランドの中では相対的に低めの価格帯であることがプラスに作用しているという。