Fashion. Beauty. Business.

TOPICS

シーイン世代、どう攻略?

「大人世代はコロナ以前の実店舗体験があるが、10代はそもそも買い物を始めたのがコロナ禍中で、実店舗が選択肢にない」。ヤングマーケットを主戦場にするウィゴー園田社長の言葉です。ファッション消費の原体験が「シーイン(SHEIN)」という今の10代をなんとか取り込んでいくために、今春から新価格戦略を打ち出しています。詳しくは1本目の記事をお読みください。

ウィゴーの取材では、今の10代にとって、消費の最大の関心対象がファッションなどではなく“推し活”だというマーケティング調査結果にも話がおよびました。そうだろうなとは思っていましたが、その度合いは私の想像をはるかに超えていました。こちらについても近日中に木村記者が詳報予定です。ご期待ください。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

「シーイン」台頭のヤング市場 ウィゴーは“リアルタイムファッション”で勝負

有料会員限定記事

園田恭輔/ウィゴー社長 プロフィール

1979年生まれ、大阪府出身。99年に販売員としてウィゴー入社。エリアマネージャー、物流、MDなど、さまざまな部署や事業部の立ち上げを経て、2011年に「ウィゴー」の事業部長に就任。18年より現職

ウィゴー(WEGO)は今年9月に創業30周年を迎える。節目の年に同社は新たな価格戦略「ウィーグットプライス(WE GOOD PRICE)」を掲げ、ロープライスで商品のクオリティーを追求すると公言した。2月に投入を始めた2024年春物から、新価格に変更済みだ。ヤングマーケットには激安の「シーイン(SHEIN)」が浸透し、戦い方の変更を余儀なくされている。新価格戦略の背景を園田恭輔社長に聞いた。

WWD:30周年を迎える今年、どんなビジネス戦略を掲げている?

園田恭輔ウィゴー社長(以下、園田):“リアルタイムファッション”の追求だ。従来のファストファッションは、コレクションの情報をいち早く安く商品化して市場に届けるビジネスモデルだったが、現代はそれでは遅く、とにかく“今起こっていること”に対応しないといけない。若い子たちの趣味嗜好は多様となり、変化がとても速くいわゆるマス層があるようでない。お客さまの周りで今どんなことが起こっていて、今どういうものを欲しがっているのかにすぐに対応して変わり続けることが、当社のような業態のポジションニングでは重要だ。

安さと速さと柔軟性がカギ

WWD:リアルタイムファッションを届けるための具体的な仕組みは?

園田:昨年立ち上げた(10代〜20歳前後の消費者のインサイトを分析する)「ウィーラボ(WE LABO)[ヒト・コト・モノ・バ]研究所」も一例だ。20年から推し活、サブカル地雷系、ダンスといったそれぞれの界隈に特化したSNSの運用を開始した。現在それぞれのアカウントを合算した総フォロワー数は40万人を超えた。既存の公式ブランドアカウントのフォロワーと合わせると90万以上になる。実際にその界隈を知る当社のスタッフがSNSを運営することで、密度の濃いコミュニケーションが取れている。フォロワー向けにアンケートを実施するなどして得た情報を商品化したり、店作りに反映したりするスキームができてきた。外部企業にデータ提供し、協業する事例も増えている。池袋に推し活に特化した店舗をオープンしたのも「ウィーラボ」の取り組みが土台だ。大人世代はコロナ以前の実店舗体験があるが、10代はそもそも買い物を始めたのがコロナ禍中で、実店舗が選択肢にない。オンラインでの買い物が当たり前の10代に来店動機を感じてもらうためには、モノを売るだけでなくあらゆる仕掛けが必要だ。

この続きを読むには…
残り1805⽂字, 画像0枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
トップページに戻る
NEWS 02

初任給40万円のTOKYO BASE 固定残業80時間の意図を谷CEOが説明

3月12日に初任給40万円の引き上げを公表したTOKYO BASE。ファーストリテイリングを超える業界最高水準のベースアップは大きな話題となった。谷正人TOKYO BASE最高経営責任者(CEO)は3月26日に開かれたメディア向けラウンドテーブルでベースアップの背景について語った。

新卒のエントリー数は2倍以上、中途は6、7倍に

同社は2024年3月入社以降の社員から学歴、年次に関わらず初任給を一律で30万円から40万円に引き上げると同時に、全社員を対象としたベースアップを行うと今春発表している。発表以降2週間足らずではあるが、すでに新卒のエントリー数は2倍以上に、中途は6、7倍に増えたという。

「背景は大きく3つ。1つは日本一の企業を目指すには、日本一の給与水準にするべきだと考えていること。2つ目は、東名阪に絞った出店戦略を続ける中でビジネスモデルが整理されてきたこと。3つ目は、さらなる海外出店を見据える中で世界基準になるべく早く合わせる必要を感じたことだ」と谷CEO。優秀な人材の確保や離職率低下につなげることが狙いだ。

「固定残業代80時間分に深い理由はない」

しかし、40万円のうち17万2000円は80時間分の固定残業代であるという点に注目が集まり、「80時間は過労死基準に匹敵するものではないか」と、SNSを中心に批判も集めた。

これに対して谷CEOはメディアラウンドテーブルで言及。「当社の販売スタッフの残業時間は平均10時間〜20時間。万が一45時間を超えた社員には始末書で改善策を提出させることを徹底している。(80時間分の設定は)僕らがベンチマークしている企業がそのような設定をしていたので、それに倣っただけで深い理由はない。そもそも80時間の残業は過労死レベルだ。固定残業代を設定することで無駄な残業を減らす狙いもあった。社内では、この数字を気にする人は誰もいない。残業代を稼ごうという人はそもそも採用もしない。当社の文化・認識と世の中の受け止め方にギャップがあったのかもしれない。今回金額だけが一人歩きしてしまったが、本来社員を大事にするのであれば、当たり前だがちゃんと対価を払いたい。他社に対しても、表面的な社内の販売スタッフコンテストを行なって優秀者を表彰するような方法よりも、ちゃんとお金を払うべきだと思う。もちろん経営者はそれに伴ってきちんと利益が出るビジネスモデルを組む責任がある。社員を労働者として見るのではなく、1人1人にちゃんと向き合うという姿勢を、ファッション産業全体のためにもメッセージとして出したかった」。

同社はかねてより、ファッション業界の社会的地位を向上させることを目指してきた。そのためには収入は不可欠であると捉え、独自のインセンティブ制度「スーパースターセールス制度」を続けていた。これは販売スタッフを対象に、売り上げの一定基準をクリアするとその10%が給与として還元されるというもの。5段階で設定し、年間販売額7000万円、8500万円、1億円、1億2000万円、1億5000万円の達成で、それぞれ年収が700万円、850万円、1000万円、1200万円、1500万円になる。2024年1月期は合計で38人の社員がスーパースターセールスになった。また販売スタッフ一人当たりの月間売上高は395万9000円と過去最高の労働生産性を記録したという。

この続きを読むには…
残り0⽂字, 画像0枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
トップページに戻る

最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。