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続くか“できるナンバー2”の快進撃
「クロエ」が、新クリエイティブ・ディレクターのシェミナ・カマリによる世界観を伝えるビジュアルと、新しいロゴを発表しました。アイテムの全貌はもちろんまだ分かりませんが、ビジュアルには強さと洗練されたムードがあり、2月24日のデビューショーに向けて期待がさらに高まります。このビジュアルが出るまで、私たちの手元にある情報はカマリ=クリエイティブ・ディレクターの経歴と、ポートレートのみでした。個人的には、各ブランドの新デザイナー発表時のポートレートで「いいテーラリング仕立てそうだな」「ナルシスト系かな」などと勝手に想像を膨らませてしまうのですが、今回のビジュアルを撮影したデイヴィッド・シムズによるカマリ=クリエイティブ・ディレクターのポートレートからは「凜とした強さとしなやかさ」を感じていたので、今回のビジュアルを見て、その感覚が間違ってなかったかもとさらに楽しみになりました。
カマリ=クリエイティブ・ディレクターは、「クロエ」「サンローラン」でカリスマディレクターの右腕として活躍した実力派です。最近では「グッチ」のサバト・デ・サルノ=クリエイティブ・ディレクターや、「トム フォード」のピーター・ホーキングス=クリエイティブ・ディレクターら、これまで“できるナンバー2”だった実力者たちがブランドの新たな顔となり、活躍し始めています。新生「クロエ」もこの波に乗れるのか、デビューショーが今から待ち遠しいです。
「クロエ」が新デザイナーによるビジュアルとロゴ公開 幅広い世代のモデルを起用

「クロエ(CHLOE)」は、2月24日にパリで発表する2024-25年秋冬コレクションに先駆け、新クリエイティブ・ディレクター、シェミナ・カマリ(Chemena Kamali)による新しい「クロエ」の世界観を伝えるビジュアルを発表した。
“クロエ・ポートレート” と題した写真に登場するのは、幅広い世代、国籍のモデルたちで、その多くが過去に「クロエ」のショーでモデルを務めている。いずれもエッフェル塔とパリの街を背景に髪をなびかせて立っている。着ているのはバイヤーたちに今月一足早く公開したカマリによる2023年プレフォール・コレクションだ。浮遊感のある生地使いやケープコートのようなルーズなシルエット、パウダリーなカラーパレットはいかにも「クロエ」らしく、奇をてらうことなくメゾンのルーツを重んじる姿勢がうかがえる。カマリはリリースで「私は、クロエの放つエモーションやエネルギー、そして、その歴史とスピリットを体現する女性たちをキャプチャーしたかったのです。そのエフォートレスに力強く、美しく、自由な姿を」というメッセージを発信している。
80年代にカール時代の「クロエ」で活躍したモデルも今後は登場
モデルを務めるジェシカ・ミラー(Jessica Miller)やナタリア・ヴォディアノヴァ(Natalia Vodianova)は2000年代前半にフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)による「クロエ」のランウエイを歩いていた。ほかにフェイフェイ・サン(FeiFei Sun)や、オルネラ・ウムトーニ(Ornella Umutoni)などを起用している。今後、80年代にカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が手掛けていた「クロエ」のショーで歩いたジェリー・ホール(Jerry Hall)や、ジェシカやナタリアと同世代のリヤ・ケベデ(Liya Kebede)、新世代モデルのクリスティン・ リンセス(Kristine Lindseth)などもソーシャルメディアや公式ウェブサイトに登場する予定だ。
ロッタ・ヴォルコヴァなど気鋭のクリエイターを起用
81年にドイツで生まれたカマリは大学でファッションデザインを学んだ後、07年にセント・マーチン美術大学MA(CENTRAL SAINT MARTINS MA)を卒業し、フィービー・ファイロのチームの一員として「クロエ」でのキャリアをスタートさせた。12年、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)のもとでデザイン・ディレクターとして「クロエ」に復帰。16年、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vacarello)のもとで「サンローラン(SAINT LAURENT)」のデザイン・ディレクターに就任した。2024-25年秋冬から「クロエ」を率いる。
“クロエ・ポートレート”はデイヴィッド・シムズ(David Sims)が写真撮影を、フランク・ルボン(Frank Lebon)がムービーを制作。キャスティングにアシュリー・ブロコウ(Ashley Brokaw)、スタイリングにロッタ・ヴォルコヴァ(Lotta Volkova)といったトップクリエイターを起用している。
タペストリー、買収したカプリ傘下の「ヴェルサーチェ」と「ジミー チュウ」売却も視野に? 市場関係者が憶測
年商120億ドル(約1兆7760億円)の巨大ファッション企業が誕生すると目されているタペストリー(TAPESTRY)によるカプリ・ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収だが、取引の完了後、タペストリーがカプリ傘下の「ヴェルサーチェ(VERSACE)」と「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」を売却するのではないかとのうわさがアナリストなど一部の市場関係者の間で流れている。
「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリーは2023年8月10日、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ」「ジミー チュウ」を擁するカプリを85億ドル(約1兆2580億円)で買収した。その際、購入資金を調達するため、タペストリーは75億ドル(約1兆1100億円)のデットファイナンス(借り入れもしくは社債発行による資金調達)を行っている。この返済のため、ブランド売却を検討するのではないかという憶測だ。
タペストリーがカプリを買収するメリットとしては、レザーグッズに強い前者とウエアに強い後者という補完性の高さに加えて、タペストリーのラグジュアリーセクターへの進出という点が挙げられる。しかし、金融大手ウェルズ ファーゴ(WELLS FARGO)のアイク・ボルーチョウ(Ike Boruchow)=アナリストは、「『マイケル・コース』の北米における卸は以前として厳しい状態にあり、業績は芳しくない。『ヴェルサーチェ』と『ジミー チュウ』は、ラグジュアリー市場の減速の影響で売り上げが落ちている。一方、『コーチ』は一時期の人気ぶりは落ち着いたものの、業績は堅調だ」と分析。タペストリーは、値下げや割引の繰り返しによってブランド価値が下がっていた「コーチ」を立て直した実績があるため、デジタル化や定価販売を推進することで「マイケル・コース」も同様に再建し、“手の届くラグジュアリー”というポジショニングを強化する戦略も検討しているのではないかという。
同氏はまた、「タペストリーの経営陣が、カプリの持つラグジュアリーブランドを売却し、負債を返済することを選ぶ可能性もある。現在、タペストリーの株価は40ドル(約5920円)前後で推移しているが、買収したものも含めて6ブランドを運営した場合の株価が60ドル(約8880円)程度になると仮定すると、『ヴェルサーチェ』と『ジミー チュウ』を売却して負債を返済すれば、企業価値は縮小するものの、株価は70ドル(約1万360円)まで上がるかもしれないからだ」と説明した。
なお、買収取引の完了時期については明らかになっていない。タペストリーは2月8日に23年10〜12月期(第2四半期)を、カプリは10~12月期(第3四半期)決算を発表する。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。