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新社長は48歳!
…わ、若い!J.フロント リテイリングの次期社長に抜擢された小野圭一氏は、48歳だそうです。子会社の大丸松坂屋百貨店の次期社長、宗森耕二氏も同期入社の48歳。どんどん変わる時代と価値観に対応し、新時代の百貨店を作っていくための人事とのこと。経営層だけでなく現場レベルでも、同社では“やってみなはれ”的な面白い人事をこれまでいくつか見聞きしてきたので、納得する部分もあります。
1月29日発行号の「WWDJAPAN」は毎年恒例の“CEO特集”(このメールの一番下から詳細ご覧いただけます)で、ファッション&ビューティ49社のトップに展望を語っていただきましたが、よく出たのが「不確実の時代をサバイブするには、若い人にどんどんチャレンジしてもらうしかない。そんな組織や環境をいかに作るか」という話。J.フロント リテイリングは、トップ人事でまさにそれを実践するわけですね。
J.フロント、経営陣の大胆な若返りは「不透明な時代」への布石
J.フロント リテイリングが経営陣の大胆な若返りに動く。執行役常務の小野圭一氏(48)が3月1日付でグループの新社長に就任し、子会社の大丸松坂屋百貨店も48歳の宗森耕二新社長に交代する。コロナ禍からの復活にメドをつける中、次の時代を見据えた新体制を築く。
「知識や経験は好本(達也社長)に遠く及ばないが、学びながら会社のあるべき姿に向かっていきたい」。30日に都内で開かれた記者会見で、小野次期社長はそう決意を述べた。
67歳の好本社長とは、年齢が二回り近くも違う。かつて山本良一前社長が大丸社長に就いた2003年当時も52歳という年齢が話題になったが、それよりも若くしての抜てきだ。
“異例”なのは若さだけではない。好本社長、山本前社長がそうだったように、J.フロントのトップは大丸松坂屋の社長から昇格するのが通例だった。小野次期社長は大丸松坂屋の社長を経ておらず、百貨店の店長経験もない。
一方で、“畑”に縛られず多彩なキャリアを重ねた。大丸京都店の営業推進部長(16年〜)、人材子会社のディンプル社長(18年〜)、グループの構造改革推進部長や経営戦略統括部長(22年〜)、パルコ取締役(同)などを歴任した。
若さと胆力
好本社長の後継者の選定は昨年3月から始まった。小野次期社長はそれ以前から、中期経営計画の策定などグループ経営の中枢に関わってきた。好本社長は小野次期社長を指名した大きな理由の一つに、前述の多彩な経験から培われた「物事を俯瞰して見る力」を挙げる。13年、当時大丸松坂屋のトップだった好本社長から百貨店事業のインバウンド戦略の旗振り役に指名された小野次期社長は、「誰も考えつかないような取引先を指名したり、タイアップ企画を組んだりと、前例にとらわれない視野の広さがあった。それを最後まで遂行する胆力もあった」。
好本社長自身、高い視座に立ち、百貨店の既成概念に縛られない改革を続けてきた。ラグジュアリーSCのギンザシックスの開業(17年)、定借面積を大幅に増床した大丸心斎橋店の建て替え開業(19年)などがその成果だ。「一時期は“脱・百貨店”を目指すとまで言っていたこともあったが、ここしばらくこの言葉を口にしていない。コロナ禍という危機を経て、百貨店という業態の先人が築いてきた価値、お客さまからの信頼を改めて再認識した。だが我々が思っている以上に消費者の価値観の変化のスピードは速い。不透明な時代の中で、前例のないチャレンジを続けていく必要がある。私は今回の決断(社長交代)がグループの未来の成長につながることを確信している」。
“同期”で一枚岩の経営
J.フロントの小野次期社長と、大丸松坂屋百貨店の宗森次期社長は、98年入社の同期で、当初から気の知れた、互いを高め合ってきた間柄だ。親会社と百貨店事業会社、一枚岩の経営により、新時代に向けた強固な経営基盤の構築を進める。「足元業績には追い風が吹いているが、今こそ必要なのは“変革”。向こう30年、さらにその先の会社の姿を見据えた手を打ちたい」(小野次期社長)。
アマゾンのAIが「返品天国アメリカ」に投じた一石【鈴木敏仁USリポート】
アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。アメリカのECビジネスの深刻な問題の一つが消費者からの返品率の高さだ。試着できない代わりにサイズや色柄を多めに注文して、気に入らなければ返品するのが当たり前。アパレルの返品率は2〜3割に達し、コストを負担する企業の経営を圧迫する。アマゾンが対策に乗り出した。
D2Cブランドとは消費者にブランド商品をダイレクトに売るビジネスモデルを意味しており、その前提はネット通販(EC)である。資金調達力に乏しいスタートアップがD2Cモデルをまず選択し、売れ始めたら小売企業と取り引きを開始する、またはリアル店舗をオープンするケースが少なくない。ECの普及で低い投資でビジネスをスタートする新たな道筋が開けたのである。
弱点は手に取ったり試着したりといったリアルでの確認ができない点にある。これは解決の難しいハードルで、とりわけアパレル、ホームファッション、ビューティなどサイズや見た目といった主観的な尺度が重要なカテゴリーはハードルが高い。
D2Cモデルはスタートアップには便利だが、リアルがないというトレードオフが存在するのだ。
それもあって私は、D2Cブランドは買わなかったのだが、とうとうそのときが来てしまった。欲しい服が店頭で見つからず、ネットで探していたところインスタグラムのタイムラインに広告が流れてきて、少々悩んだ末に、試着して合わなかったら返品すれば良いと考えて買うことにしたのだ。
ECが勃興しはじめた15~20年前頃だったろうか、スマホでモノを買うなどありえないと考えていたことをはっきり覚えている。時代は変遷した。
届いた商品を試したところ、サイズはまったく問題なく気に入ったので返品することはなかったのだが、この返品すれば良いとする、一消費者としての私の思考回路は重要だ。無料返品でなければ買わなかったわけで、リアル店舗を持たないD2Cのこれが宿命である。返品コストを受け入れないと売りづらくなるのである。
例えばECでは自分が認識するサイズに加えて、大きめと小さめ、つまり3つのサイズを買って試着し、2つのサイズを返品するというユーザーは米国では少なくない。
私は流通業界にいるので企業が負担する返品コストをどうしても考えて躊躇してしまうのだが、一般消費者には関係のないことである。私の娘たちも返品に対する抵抗感はまったくない。企業が無料と言っているんだから良いじゃない、という考えである。
これをアメリカの業界用語ではワードロービング(Wardrobing)と呼び、いかに減らすかが大きな取り組み課題となっている。
一つの解決策はAR(拡張現実)技術を使い、バーチャルなトライオンをしてもらうことである。トライオンという英語表現には試着、メーキャップ、インテリアデザインのコーディネート等々が含まれる。すでに多くの企業がアプリにこの機能を導入している。
一方、AI(人工知能)を使って適切なサイズを選んでもらおうとしているのがアマゾン(AMAZON)である。何をやっているか公開しているのでここで紹介してみよう。
AIを活用してのユーザーごとにパーソナライズしたレコメンデーション
各ブランドのサイズシステム、商品レビュー、購買ユーザーのサイズの好みなどをデータとして、ディープラーニングをベースとしたアルゴリズムを開発し、各ユーザーに推奨する。データは数百万から数十億にのぼる。ユーザーが買うサイズの変化も学習するアルゴリズムも開発、例えば今月、子供用のパンツを買ったとしたら、数カ月後に大きめのサイズが必要になる可能性があるいうことをアルゴリズムが考慮する。
フィットレビュー・ハイライト(Fit Review Highlights)で関連するフィードバックを提示
サイズに関するレビューからユーザーに関連するものを選び、ハイライトして提示する。同じサイズを買った人のレビューをAIが分析し、サイズを上げた方が良いか下げた方が良いかといった判断の尺度にすることが目的。大規模言語モデル(Large Language Models)等のAIを使い、必要とされるレビューを抽出し、多数のレビューを読みやすいように短縮し要約して示す。
AIを使ってのサイズチャートの再構築
大規模言語モデルを使い、アイテムのサイズチャートデータを抽出し、標準的なサイズへと転換し、重複情報を取り除き、欠落または不正確な測定値を自動修正することで、より正確で一貫性のあるサイズチャートを作り表示する。またサイズチャートをより理解しやすくするために、レコメンドするサイズをグルーピングするなどする新しい手法を実験中。
ブランドメーカーにはAIを使ったフィットインサイツ・ツール(Fit Insights Tool)を提供
大規模言語モデルで、フィッティング、スタイル、素材に関するフィードバックを抽出し集計したツール。機械学習を使ってサイズチャートの欠陥を特定し、レビューをベースとして返品とサイズチャートの分析を解釈できるようにする。ブランドサプライヤーはユーザーのサイズ問題を理解しやすくなり、提示の仕方を改善したり、商品開発にも利用できる。
このアマゾンによる新技術も既述のARによるバーチャルトライオンも、AIを使っての取り組みということになる。返品削減もAIがキーワードなのである。また、返品フローそのものを効率化するという動きもあり、こちらも進化を続けている。近いうちに紹介するつもりだ。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。