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仕掛けと中身のギャップ
少し気は早いですが、2024-25年秋冬メンズ・コレクションのトピックや噂が徐々に出始めてきました。24年1月開催の「ピッティ・イマージネ・ウオモ」には、「マリアーノ」と「エス・エス・デイリー」が参加します。両ブランド共にビジネスとクリエイションは発展途上ではあるものの、「マリアーノ」はパリのショールームでは一人勝ち状態だと聞きますし、「エス・エス・デイリー」は今後さらに伸びてくるデザイナーだと個人的に確信しているので、どのようなショーを見せてくれるのか楽しみです。
「ピッティ」が毎シーズンセレクトするゲストデザイナーのセンスは素晴らしい一方で、参加するたびに感じる課題が、おそらく大半を占めるであろうクラシコ目当ての来場者がショーにあまり関心がないこと。「今シーズンはどのブランドがショーするのですか?」と会場内でよく質問されます。逆もまたしかりで、ショー目的で来場したであろう関係者を、メイン会場内で見かける機会も多くありません。注目を集めるための仕掛けと中身のギャップがあるのは、「ピッティ」に限ったケースではありませんよね。そういった点で、11月に東京都が開催する一般参加型ファッションイベント「東京 ファッション クロッシング」には期待しています。メディアとしても、そのギャップを埋めるためにできることはあるはずなので、引き続き考え、実行していきたいです。
「マリアーノ」「エス・エス・デイリー」2大新鋭メンズデザイナーが競演 24年1月「ピッティ」で
イタリア・フィレンツェのメンズ見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」は、2024年1月9日~12日に開催する第105回のゲストデザイナーとしてルカ・マリアーノ(Luca Magliano)「マリアーノ」デザイナーと、スティーブン・ストーキー・デイリー(Steven Stokey-Daley)「エス・エス・デイリー(S.S.DALEY)」デザイナーが参加することを発表した。両ブランドは「ピッティ」会期中に、2024-25年秋冬コレクションをランウエイショー形式で披露する。
「マリアーノ」は、17年にイタリア・ボローニャで設立。18年には「ピッティ」でデビューショーを行った。王道のテーラリングに異端の美学を注入したクリエイションで徐々に頭角を現しており、継続参加しているミラノ・メンズ・ファッション・ウイークでも注目度の高いショーの一つになるほど成長している。「ピッティ」のラポ・チャンキ(Lapo Cianchi)=コミュニケーション&イベントディレクターは、「ルカには、イタリアファッション特有の文化的、社会的規範を独創的な方法でデザインする卓越した才能がある」と期待する。
デザイナーのマリアーノは、「『ピッティ』は、5年前に私たちのプロジェクトが初めて公開された場所だ。愛する人、尊敬する人たちの元への里帰りは私を喜びで満たし、これまで以上に『マリアーノ』らしい、未来の自分たちを想像する機会になるだろう」とコメントした。
「エス・エス・デイリー」は、2020年に設立。ロンドンのウェストミンスター大学在学中からファッション業界関係者からの評価は高く、学生時代に制作したコレクションを歌手ハリー・スタイルズ(Harry Styles)のミュージックビデオの衣装に提供するなど、話題を集めていた。21年にロンドン・ファッション・ウイークでショーデビューを飾ると、翌22年には「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のグランプリを獲得。急速な知名度拡大に制作が追いつかず、9月のロンドン・コレクションへの参加は急きょキャンセルするなど生産体制の課題はあるものの、次世代のメンズウエア界を担うセンスを持つ26歳である。
「ピッティ」のフランチェスカ・タッコーニ(Francesca Tacconi)=スペシャル・イベント・コーディネーターは、「スティーブン・ストーキー・デイリーはイギリスの上流階級をクィア・ファッション・ファンタジーに変身させている。未来へ向けて投影する彼のストーリー発表の場として、この上ない機会となるだろう」と述べた。
ストーキー・デイリーは、「『エス・エス・デイリー』のモダンブリティッシュ・ストーリーテリングのマニフェストを、メンズウエアデザインの聖地である『ピッティ』に持ち込む機会を与えてもらい光栄だ」と語った。
東京都が一般観覧可能なファッションショーを11月3〜6日に開催 冨永愛やゆりやんらが参加
同イベントは、東京発のファッションの魅力を街全体で体感し、産業の活性化を図るために東京都が主催するものだ。東京都の2023年度予算から6億円を計上して実施する。通常のファッション・ウイークが業界関係者向けなのに対し、同イベントはエンドユーザーに開かれた参加型のイベントとなる。日本ファッション・ウィーク推進機構や日本アパレル・ファッション産業協会らが協力する。
初日の11月3日は丸の内を舞台に、オープニングセレモニーと“多様性”をテーマにしたファッションショーを開催する。オープニングには同イベントのアンバサアーであるテリー伊藤、冨永愛、ゆりやんレトリィバァ、kemioが登壇する。その後、丸の内仲通りに、知的障害者によるアート作品を発信するヘラルボニーとコラボしたランウエイを用意して、さまざまな個性を持ったモデルがウオーキングを披露する。モデルたちは「フェティコ(FETICO)」「ヘンネ(HAENGNAE)」「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」「シュタイン(STEIN)」「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」といったブランドの2023-24年秋冬コレクションを着用する。
翌日4日は、渋谷パルコの10階屋上から1階までつながる屋外階段を使ってショーを行う。モデルとしてゆりやんレトリィバァとkemioがランウエイを歩き、アート、音楽、カルチャーを織り交ぜた演出も行う。
5日は銀座松屋通りがランウエイになる。丸山敬太デザイナーがショーをプロデュースし、日本の伝統文化・伝統芸能を組み込んだ演出を行う。「ケイタマルヤマ(KEITAMARUYAMA)」「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」「フミカ_ウチダ(FUMIKA_ UCHIDA)」「ダブレット(DOULET)」「M A S U」「ヨーク(YOKE)」などのほか、銀座もとじ、銀座トラヤ帽子店など銀座の老舗企業も参加する。
最終日の6日には、ビジネスパーソンが行き交う東京国際フォーラムを舞台に、ビジネススタイルをテーマにしたファッションショーを行う。「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」の山岸慎平デザイナーがショーをプロデュースし、「J.プレス(J.PRESS)」「レペット(REPETTO)」「サンヨーコート(SANYOCOAT)」などが参加する。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。