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クワイエット・ラグジュアリーに一抹の不安
ここ7〜8年ほど主流だったSNS映えを意識したロゴファッションや装飾的ファッションからの揺り戻しで、“クワイエット・ラグジュアリー”がますます広がっていますね。日本の街にも、これから数シーズンかけて浸透していきそうな予感がします。2014〜16年に猛威をふるった“ノームコア”との類似性を感じている人も多いのではないでしょうか。
“ノームコア”最終局面のころ、中小規模のデザイナーブランドが非常に苦しんでいたのを思い出します。上質素材のシンプルファッションとなると、スケールメリットが出せる大手に中小が対抗するのは難しいですから。そして、そんな“ノームコア”へのアンチテーゼとして、ミケーレの「グッチ」が台頭し、SNS映えを意識したファッションが拡大したのでした。そんな経緯を考えると、“クワイエット・ラグジュアリー”が広がってしまうと、また中小ブランドが苦しむ時代が来るんじゃないかと、老婆心ながら心配しています。
【スナップ】「プラダ」流クワイエット・ラグジュアリーはバランスで差をつける
「プラダ(PRADA)」は、に2024年春夏ウィメンズ・コレクションをミラノで現地時間9月21日に発表した。会場となったプラダ財団(Fondazione Prada)には、シャツとジャケットといったユニホームライクな、同ブランドらしい装いのゲストが集った。
来場者のウエアにプリントは少なく、グレーやネイビーの落ち着いたカラートーンに、立体的な花の装飾で静かに飾り立て、クワイエット・ラグジュアリーのトレンドを意識した着こなしが目立った。シルエットは、オーバーサイズのアウターか、もしくはゆったりとしたボリュームのニットウエアに、ミニスカートを合わせるバランスが主流だ。足元は、ポインテッドトーのミュールやパンプスといった、華奢なシューズの着用率が高かった。
【スナップ】「ディーゼル」の野外レイブは派手さと肌見せ勝負 ギラギラメイクとバキバキ腹筋
「ディーゼル(DIESEL)」は、2024年春夏コレクションをミラノで9月20日(現地時間)に発表した。旧貨物ターミナル駅スカロ・ファリーニに巨大スクリーンと観覧席を設営し、冷たい夜風と雨に見舞われる中、メンズとウィメンズの73ルックを披露。大音量のテクノが鳴り響くレイブのようなランウエイショーに、一般招待客を含む約7000人が熱狂した。
パーティームードの会場で見かけたのは、ランウエイモデルさながらの個性的な若者たち。目や眉の周りに立体感のあるラインストーンや、スパンコールを並べたストーンメイク、三つ編みで作るユニークなヘアアレンジといった、ビューティも含むトータルルックで会場の雰囲気を盛り上げた。ウエアは、クロップドトップスやブラトップに、ボリュームたっぷりのカーゴパンツと精巧なダメージ加工が施されたデニムを合わせた、同ブランドが昨今強く打ち出す肌見せのデニムスタイルが多かった。日常で鍛え上げた腹筋をジュエリーかのように、雨風も気にすることなく大胆に披露していたのが印象的だ。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。