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「アッパーミドル」戦略、広がる

松屋銀座の外商イベント「松美会」は、天候にこそ恵まれませんでしたが、富裕層のお買い物は活発だったようです。別の百貨店のイベントについては、開かれた先々週末から、いろんなところで話を聞いています。やはり「そこでしか買えない」ものへの購買意欲は、旺盛のようですね。

そんな富裕層に向けての戦略が、国内ブランドにも広がってきました。各社、世界観を大切にした上質なブランドを相次いで投入しています。コートやバッグを、エントリープライスなら10万円台〜、中心価格帯は20万〜30万円くらいで揃えている印象でしょうか?値上げが相次ぐハイブランドでは、もはやバッグやコートが買えないくらいのプライスレンジです。三陽商会の大江伸治社長が話し続けてきた「アッパーミドル」戦略が広がっています。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

松屋銀座の上顧客イベント 生演奏やセミナーを再開

松屋銀座本店の上顧客に向けた催事「松美会」が8日に開幕した。台風13号の接近に伴う強い雨の影響を受けたものの、趣向を凝らしたイベントや限定商品の充実で消費は活発だった。あす9日までの2日間で前回(2022年9月)並みの15億円の売上高を計画する。

松美会は春と秋の年2回開催する。今回は生演奏、ワインやコーヒーに関するセミナー、食事などが楽しめる「ロイヤルラウンジ」を、コロナ収束を受けて久々に再開した。ロイヤルラウンジは買い上げ額で上位の客に絞り、ゆったりとした空間でサービスを提供する。特選(ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品)、衣料品、化粧品、雑貨、食品、インテリアなど各売り場でも、この日のための限定品を用意した。税込1万円以上のレシートを提示した客に生花を1本プレンゼントする企画も人気を集めていた。

外商部門の好調もあって、松美会の売り上げも回を重ねるごとに増えている。ただ、顧客戦略部長の服部延弘氏は「数字も大事だが、それ以上に顧客満足を高めることに注力したい。お客さまが混雑などのストレスを感じずに、買い物や催し物を満喫できるように社内で議論を重ねた」と話す。また「松美会では(取引先を含め)販売員のモチベーションが非常に高く、それも高い顧客満足につながる」と言う。

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NEWS 02

オンワードの新ブランド「エステータ」は世界観で勝負 大手アパレルで加熱する「百貨店富裕層」のシェア争い

オンワード樫山は、百貨店向けの主力婦人服ブランド「23区」から派生した高価格帯の新ブランド「エステータ(ESTETA)」を今秋スタートした。まずは都心百貨店でのポップアップ展開を軸に認知度を高める。伊勢丹新宿本店本館(〜9月26日)、阪急うめだ本店(〜9月19日、10月18日〜31日)、松屋銀座本店(9月16日〜10月12日)で、それぞれ「23区」の売り場やポップアップスペースで期間限定販売する。

 2023-24年秋冬は、黒と白を基調としたミニマルなレイヤードスタイルで、上質な素材とパターンメイクの美しさを強調する。価格帯はキャリアゾーンとラグジュアリーブランドの中間程度に設定。中心価格はコートが19万8000円、ジャケット9万9000円、ドレス7万9200円、スカート・トラウザーズ5万9000円、シャツ・ニット5万円。ブランドのディレクターには大人女性に人気のスタイリスト・髙橋リタを迎え、スタイリングやビジュアル作りにも力を入れる。

 都心百貨店で富裕層消費が盛り上がる中、これまでキャリアゾーンを主戦場としてきた大手メーカーなどが、高価格帯のブランド・ライン開発に動いている。そのような他社の動向を念頭においた上で「モノ作りのクオリティーだけでなく、ブランドのムードでも差別化していきたい」(宮本さゆり「23区」マーチャンダイザー)とする。今秋冬、ワールドは「アンタイトル」の高価格帯ライン“カプセル コレクション”をスタート。40代以上をターゲットにした「デパリエ」ですでに手応えを得るビギは新ブランド「ドメル」を導入する。マッシュスタイルラボの「フレイ アイディー」も都心百貨店限定の“ハイクオリティーライン”に力を入れている。

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NEWS 03

「ディオール」を約30年率いたマルク・ボアンが死去 享年97歳

ファッションデザイナーのマルク・ボアン(Marc Bohan)が9月6日、フランス・ブルゴーニュ地方のシャティヨン・シュル・セーヌで死去した。享年97歳。葬儀は、13日に現地のサン・ニコラ教会で執り行われる予定だという。

ボアンは1926年パリ生まれ。デザイナーのロベール・ピゲ(Robert Piguet)やエドワード・モリノー(Edward Molyneaux)のアシスタントとしてキャリアをスタートし、53年に自身のメゾンを設立したものの、わずか1シーズンで閉鎖。54〜57年には「ジャン パトゥ(JEAN PATOU)」のオートクチュール・コレクションを手掛けた。その後、58年に「ディオール」のロンドン支社にクリエイティブ・ディレクターとして入社。2代目クチュリエのイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)が徴兵によりメゾンを去った60年、ボアンはその後任に抜てきされた。初めて手掛けた61年春夏オートクチュール・コレクションでは、“スリムルック”を発表。「ディオール」を最も長く率いたデザイナーであり、その期間は創業者のクリスチャン・ディオール(Christian Dior)自身よりも長い。89年まで、30年近く同メゾンのコレクションを手掛けてきた。

プライベートを大切にする人物であったボアンは、冷静沈着な性格と“リアルな女性”のための服のデザインを重視することで知られた彼は、“タイムレスな美の概念”を表現。「私は現実の女性のために服を作っているのであって、自分のためでも、マネキンのためでも、ファッション雑誌のためでもない。抽象的なクリエイションは喜んで他のデザイナーに任せる」と、メゾンの創立25周年を記念した米「WWD」のインタビューで語っていた。

また、「私のスタイルは、キャリアを通じて一貫していた。顧客である女性たち以外の誰かのためにデザインしていたわけではなかった。彼女たちが美しいと感じることが重要だった」と07年に振り返っていたボアンは、コンサバティブなセンスの良さにユーモアや気の利いた要素を取り入れたスタイリッシュでフェミニンなクリエイションで評価を得た。キャリアを通して、エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)やソフィア・ローレン(Sophia Loren)、グレース・ケリー(Grace Kelly)、ジャクリーン・ケネディ(Jacqueline Kennedy)、ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)、マリア・カラス(Maria Callas)らを顧客に抱え、俳優や歌手からファーストレディーやロイヤルファミリーまでに愛された。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月8日号は、2026年春夏シーズンのメンズ・リアルトレンド特集です。この特集は、国内アパレル企業やセレクトショップのクリエーションの“今”を捉えるために、毎シーズン続けている恒例企画です。今回は特に、「シャツの着こなし」に焦点を当てました。夏の暑さがますます厳しくなる影響もあり、26年春夏の欧州コレクションでは、シャツの見せ方がより自由で軽やかになり、着方そのものがクリエーションとして際立つブランドが目立ちました。その発想や潮流は、国内のリアルクローズ市場ではどのように解釈され、取り入れられているのでしょうか。