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当たり前だった洗濯が大きく変わる!?

「洗濯すると、寿命がのびる」ケア用品!画期的です。

 その一方、抗菌・防臭機能を搭載した素材を作るメーカーは、「洗濯しなくても、快適に暮らせる」ことを証明する実験に取り組んでいます。抗菌・防臭機能を搭載していても、私たちはまだまだ一回着ると洗濯してしまうもの。データを提示することで、毎回“洗濯”しないという“選択”肢があることを伝え、排水の削減を目指します。

 当たり前だった洗濯さえ大きく変わりそうですね。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

洗濯で衣類が回復 寿命を延ばすケア製品誕生秘話

 洗えば洗うほど衣類にダメージを与えてしまう洗濯の常識を覆す製品が誕生した。洗濯機に使い古した衣類と一緒に入れて洗うだけで衣類が回復するバウダーをスウェーデンのスタートアップ、バイオリストア(BIORESTORE)が開発した。毛羽立ちや色落ちが、酵素とミネラルの力で復元するという。現在、特許を出願中のこの技術で、2022年のH&M創業者によるイノベーションアワード、グローバル・チェンジ・アワードを受賞した。すでに製品化に成功しており、4月19日からキックスターターのプラットフォームでプレオーダーを実施した。現在の資金調達額は430万スウェーデン・クローナ(約5750万円)。創設者のワジャハット・ハッサン(Wajahat Hussain)とリチャード・トゥーン(Richard Toon)クリエイティブ・ディレクターにオンラインで話を聞いた。

WWD:洗濯に着目した経緯は?

ワジャハット・ハッサン(以下、ハッサン):実は洗濯に注目していたわけではなく、ファッション産業が抱える最大の課題を解決したいという思いがありました。最大の課題ーーそれは衣類には寿命があることだと考えました。服が高品質であろうとなかろうと全ての衣類は着古され、いずれ着用できなくなります。私たちはその解決策となる使い古された衣類を復活させる方法について模索を始め、パウダー“バイオリストリア”を開発しました。パウダーは洗剤のようなものではありますが、私たちは洗剤(detergent)ではなくre-tergent(造語)と呼んでいます。

WWD:どのように復元させるのですか?

ハッサン:パウダーを衣類と一緒に洗濯機に投入し、40℃の温水で洗濯すると、取り出した衣類は新品のように復活します。洗剤のように洗浄するわけではないので、“バイオリストリア”をretergentと呼び、将来的にはこのretergentがスーパーなどの洗剤・洗濯コーナーで、新たなカテゴリーになればと思っています。

WWD:パウダーの原料は?

ハッサン:主な原料は5~6種類で、一番メインとなる要素は酵素です。専門的な言葉で言うとケミカルリサイクルのプロセスを行います。酵素と洗濯機が互いに作用して、酵素が小さな繊維を取り除き、繊維構造から構築することで、衣類を復元することを可能にしました。

WWD:酵素についてもう少し詳しく教えてください。

ハッサン:発酵の過程によって得られる酵素で、その由来となるものはさまざまです。それぞれ異なる種類の原料から抽出され、酵素はそれぞれの性能を持ち合わせていて、それを混合したものを使用しています。

WWD:世界中のどんな洗濯機でも効果を発揮する?

リチャード・トゥーン(以下、トゥーン):洗濯機に求める機能は主に2つで、一つは回転のメカニズム、そしてもう一つは40度の温水を使用すること。この両方を備えた洗濯機であれば、問題なくどこの洗濯機でも使用できます。

WWD:一般的な家庭用洗濯機で使用できると。

トゥーン:はい。だからこそ消費者向けに製品化していて、使い方はいたってシンプルです。この製品はいずれスーパーや小売店、オンラインでも購入できるようになります。

WWD:価格を教えてください。

ハッサン:第一弾となる製品は、大人向けの衣類であれば8着程度、子ども服であれば10着程度に使用できる量が入っています。価格は1着を復活させるのに約2~3ドルの計算で、1回使用すると約6~7カ月ほど効果を発揮します。複数回着用し、劣化してきたと感じたら使用していただくようなものです。

トゥーン:例えば150ドルの服購入し、着用して4回“バイオリストア”を使ったとします。4回新たに服を購入する機会を減らすことができて600ドルの節約になる。4回衣類を復活させるためにかかる費用は15ドルほどです。

WWD:セルロースに反応するとのことですが、他の素材や混紡素材などでも使えますか?

ハッサン:使えないのは100%ウールや、100%合成繊維などの製品です。コットンやコットン混、セルロースとコットンの混紡素材に加えて、アクリルやポリエステルなどでも良い結果が得られました。

トゥーン:世の中の約60~70% の製品をカバーできます。

WWD:今後の量産化への計画や、価格を下げる予定があれば教えてください。

ハッサン:私たちはすでに良い生産能力を備えており、スピード感を持って拡大できると思います。キックスターターでのキャンペーンは米国、欧州、豪州を対象としていて初期段階で3つの巨大なマーケットをカバーしています。生産コストがかかるので、価格を下げる予定は現時点ではありません。イノベーションはコストがかかるものではありますが、“バイオリストア”は節約につながるのでとても経済的な製品です。よく洗剤と同じ感覚で見られがちなのですが、一般的な洗剤は毎日使うものとして価格設定されているため比較は難しい。“バイオリストア”は洗剤とは科学的にも経済学的にも全く異なります。新たに服を購入する機会を減らせることから“バイオリストア”がもたらす金銭的な価値はもっと高く、必要だと感じたときだけ使用するものであるため、サステナビリティの観点からも優れています。

WWD:開発にどれくらいの期間かかったのですか?

ハッサン:このアイデア自体が生まれたのは2016年。初めてのプロトタイプを生産したのが19年でした。その後19~20年の1年間で量や素材を変えながら試験を重ね、21年には消費者による試験も行いました。どこでも使用できることを確認したかったので、英国、スウェーデン、米国などで150程度のサンプルを配布しました。

WWD:さらに拡大するために、生産拠点を世界各地に設けたり、アウトソースするなどライセンス化は考えていますか?

ハッサン:ブランドのマーケティングや管理を全て自分たちで行おうと考えています。サプライチェーンに関しては現在全ての製造をヨーロッパ内で行っていますが、現時点ではヨーロッパ内でそれりの量を生産できる体制があるので、量産化についてはそこまで課題として捉えていません。需要が高まり、生産スピードが求められたら、1カ所以上の生産拠点を設けようかということになるかもしれません。

WWD:それなりの量を生産できるとのことですが、どれくらいの時間でどれくらいの量を生産できるのですか?

ハッサン:1日に複数回、トン単位で生産が可能ですが、リードタイムは約2カ月かかります。現在は立ち上げ段階にあり、サプライチェーン全体で考えると、箱の発注や梱包作業なども考慮しなくてはならず、そこに時間がかかっています。しかし今後需要が高まれば、在庫としてストックしておき、製品をもっと高頻度で発送することが可能になると思います。量産化の準備は整っており、アパレル産業や繊維産業の製造における経験や知見もたくさんあるので、それと同じようなプロセスを取る準備もすでに築いています。あとはいつそれを実行するかということだと思います。

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NEWS 02

シップス22-23秋冬メンズは“ブリティッシュ” アウトドアはレトロに、フォーマルも強化

 シップスが2022-23秋冬シーズンの展示会を行った。メンズは、カジュアル・ドレスともに“ブリティッシュ”をキーワードに、タータンチェックやフェアアイル、フランネルやツイードなどの柄・素材と、レトロアウトドア、ハンティングのテイストを盛り込む。

 カジュアルスタイルの軸は、別注も含めた豊富なアウター・ライトアウターだ。「バブアー(BARBOUR)」の膝上丈コート“ゲームフェア(GAMEEAIR)”は、通常より薄い生地で制作し、身幅をやや大きくしてトレンド感を加えた。「マーモット(MARMOT)」のダウンベストは型から別注し、紫×シルバーなどレトロな配色に。開店45周年を迎えるシップス銀座店では、長年のファンが望むレトロムードを表現するため、「インバーティア(INVERTERE)」のダッフルを1980〜90年代のざっくりしたシルエットで限定販売する。これらに合わせるのは、昨年も好評だったクルーネックセーターやカーディガンなどのニット。ウールはもちろん、アルパカ、カシミヤ、ヤクなどの獣毛もあり、カラーもブルーやパープル、オレンジとバラエティーに富む。足元はスニーカーではなくカジュアルなブーツで、ソールまで同色で別注した「クラークス(CLARKS)」の“ワラビー(WALLABEE)”や、ローカットでスラックスに合わせやすくした「パラブーツ(PARABOOTS)」のマウンテンブーツなどを提案する。

 ドレスは“クラシックの原点回帰”を掲げ、スーツとタキシードを強化する。在宅時間増加により一時はニーズが下がったが、「その反動からか、結婚式などのハレの場でも、ジャケパンではなくスーツを選ぶ人が多い。ビシッと決めたスタイルがよく動いている」と河野建徳シップス販売促進部プレス課は語る。オリジナルスーツとして、英国発の生地メーカーフォックスブラザーズ(FOX BROTHERS)のフランネル素材を使ったスリーピースを筆頭に、ベルベットのジャケットやタキシードなどを打ち出す。上下で10万円以上がメインだが、8万円台からでも手に入る。首元は「ステファノ・カウ(STEFANO CAU)」の芯地のないハリスツイードのネクタイで英国風に味付けする。「コロナ禍にも継続してスーツを提案したことで、“シップス=フォーマル”というイメージが定着しつつある。結婚式前にネクタイやチーフを求めて来店する客も多い。今シーズンは選択肢を増やしてニーズに応えるとともに、われわれのスタイルをしっかりと打ち出す」と河野プレス課。

 そのほか、昨年12月に同社が商標を獲得し、2022年春夏にブランドを再始動させた米国発の「サウスウィック(SOUTHWICK)」では、「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」「ナナミカ(NANAMICA)」など複数ブランドとのコラボアイテムを打ち出す。再始動の当初は30〜40代と50代以上のシニア層がターゲットだったが、雑誌掲載などで若年層の認知も広がり、「10万円近くするネイビーブレザーを大学生が指名買いする」(岡部邦彦・商品1部1課課長)など、“いいものを長く着るムード”が高まっているという。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。