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好調「無印良品」、次の一手は薬局併設
コロナ禍なんてどこ吹く風で、業績絶好調な良品計画の「無印良品」。ファーストリテイリング出身の堂前宣夫専務が、9月1日付で社長に昇格するという人事も先日発表されました。新体制でどんなビジョンを描くのかに今から注目が集まっていますが、9月を前に新たな取り組みがスタートします。「クオール薬局」と組み、ウエルネス分野(彼らは“健康領域”と表現しています)に参入するそうです。詳細はリンク1本目の記事をお読みください。
気づけばここ数年で、コンビニと調剤薬局の複合業態ってすごく増えました。ワンストップで必要なものが手に入ることは客としてはありがたいですし、店側にとっては、サービス領域を拡大することが他店との差別化につながります。今回薬局が入る「無印良品 直江津」の近隣住民は高齢者が中心ですから、薬局訪問のついでに「無印良品」の商品を初めて買うおじいちゃん、おばあちゃんが増えそうです。
「無印良品」を取材していると、“超小売業”というキーワードが頻出します。文字通り、「小売業を超える」という意味です。今回の薬局もそうですが、地域住民と向き合って、そこで必要とされているものなら既存の「無印良品」の小売りビジネスの枠を超えるものでも持ってくる。そのために必要なら外部企業とも手を組む。「われわれのビジネス領域はここからここまで」と凝り固まってしまわずに、客のニーズや課題に向き合って柔軟に対応していくこうした姿勢こそ、同社の好調の理由なんだと改めて思います。
「無印良品」内に調剤薬局がオープン 「クオール薬局」と組み健康領域に参入
良品計画は、医薬品や健康情報の提供などを含む“健康領域”に参入する。第一弾として7月20日に、新潟・上越市で運営する世界最大級の店舗「無印良品 直江津」(約5830平方メートル)内に、「まちの保健室」コーナー(132平方メートル)を設ける。「無印良品」の商品で、疾病予防や心身の健康維持に役立つアイテムをまとめて陳列すると共に、「クオール薬局」のクオールホールディングスと組んで調剤薬局も展開する。
“健康領域”への参入は、「高齢化やコロナ禍により、健康への関心と不安は増している」「日頃の生活習慣や環境を整えるきっかけを作り、自分の健康と気軽に向き合える場を目指す」(広報)といった考えから。「無印良品」では、こうしたウエルネス分野を予防、維持、治療に分け、薬局など外部企業と協業しながらカバーしていく。
直江津の「まちの保健室」コーナーのグランドオープンは8月1日で、調剤開始も同日。同コーナーは物販、薬局のほかに、タニタの機器を使った血圧や筋肉量、体脂肪率などの測定スペースも設置。また、「健康体操講座」「薬剤師の漢方講座」「子育て大学」(どれも参加無料)など、健康に関するイベント・セミナーも定期的に開催し、「気軽に測って、聞いて、話して、すっきりして帰る、誰でも立ち寄れる場所」を目指す。
元「アウラアイラ」川島幸美が新ブランド立ち上げ “地球環境に貢献すること”をミッションに
元「アウラアイラ(AULA AILA)」デザイナーの川島幸美は、D2Cブランド「リン(WRINN)」を2020年11月に立ち上げた。オークが生産・販売する。自社ECサイトを主販路に、全国29カ所の卸先で受注販売している。
川島デザイナーは、「アウラアイラ」を19年の10月に退任。「約6年前パリで展示会をしていたころから、気候危機とファッションの関連性を認識し、MDを前提に大量生産するモノ作りの方向性に違いを感じていた。それでも学生時代はデザイナーになることが夢で、ファッションが好きな気持ちでここまで進んできた。自分にできることは、サステナブルなファッションの選択肢を増やし、一人でも多くの人に考えるきっかけを提供することだと思った」と話す。
昨年6月には、オーガニックコットン製のワンマイルウエアセットを販売し、収益の一部をWWFに寄付した。アイテムは即日完売の好評を博し、ワンマイルウエアをさらに“テンマイルウエア”に発展させる形で、11月に「リン」を本格始動させた。
「リン」は、「持続可能なファッションを通して地球の自然環境に貢献すること」をミッションに掲げる。ブランド名は「Wastes(ごみを出さない)」「Recycle(資源を無駄にしない)」「Improve(生産者の生活環境を改善する)」「Nature(土壌を守る)」「No more animals(動物の毛皮を使用しない)」という「リン」のモノ作りの軸となる5つのキーワードの頭文字を並べた。
アイテムは、カットソートップス(8000〜2万5000円)、ブラウス(1万6000〜3万円)、ボトムス(1万8000〜4万円)、ワンピース(2〜4万円)、アウター(3〜8万円)など。素材はオーガニックコットンやリネン、麻などの天然繊維とリサイクル素材を積極的に採用している。オーガニックコットンは、「GOTS認証」取得のものや透明性を担保する豊島の“トゥルーコットン”などのほか、インドの綿花農家の支援を行う「ピース バイ ピース コットンプロジェクト」のコットンを使用し、原料生産者の生活改善に貢献する。
川島デザイナーは「自分を大切にしたい、愛したいというマインドが確実に広がっている。ライフスタイルを見直して、無理のない生活や解放感、癒やしを求める気持ちに寄り添いたい」といい、着心地の良さを重視したアイテムに加えて、20-21年秋冬シーズンはファッションで個性を表現したい女性たちのためにスパイスを効かせたアイテムも提案していく。
余剰在庫を削減するためにセールは行わないなど、サステナブルなモノ作りを追求しながらも、現実的な難しさも感じているという。「立ち上げ時はリサイクル素材100%で作りたかったが、生地の選択肢があまりにも少ないことに驚いた。特に秋冬はリサイクルカシミア以外のリサイクル素材がなかった。小規模ブランドにとって、現在のテキスタイルの供給状況は非常に厳しい。以前はカット賃がかかるために、生地を余分にオーダーしていたが、『リン』ではコストがかかっても増産しないことを徹底している。無駄を出さない視点で見直すべき商習慣がたくさんある。今後は工場の余った生地を活用したり、再生素材の選択肢を広げるために働きかけたりしていきたい」と話す。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。