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あの“Jビューティ”ブランドが日本にやってくる

 ユニリーバが2019年に買収した「タッチャ」がいよいよ日本に上陸します。京都に旅した創業者のヴィッキー・ツァイさんが日本の美容習慣に感銘を受けて立ち上げたブランドですが、海外だとJビューティの人気の火付け役として知られています。みなさんはご存知でしょうか?

 Jビューティは海外でも人気のようですが、「タッチャ」が上手!と思ったのは、Jビューティの伝え方です。“侘び寂び”など、日本独自の文化を英語に訳すのはとても難しいとされる中で、Jビューティの魅力を伝えるのもなかなかハードルが高いように思います。「タッチャ」は、心を研ぎ澄まし、五感で楽しむ日本の肌のお手入れ習慣を、“ウエルビーイング”“マインドフルネス”といった切り口で伝えています。海外で心やメンタルの健康が注目される中で、これらをフックにすることでうまくJビューティについて伝えられている印象です。

 海外で大きな成功を遂げている「タッチャ」ですが、これから日本の消費者にどう受け入れられるのか、楽しみです。

 

北坂 映梨
NEWS 01

ユニリーバ傘下のJビューティブランド「タッチャ」が日本上陸

 ユニリーバ(UNILEVER)が2019年に買収したスキンケアブランド「タッチャ(TATCHA)」が9月、日本に上陸する。「タッチャ」は台湾系アメリカ人のヴィッキー・ツァイ(Vicky Tsai)があぶらとり紙をはじめとする日本の芸者の美容習慣に感銘を受けて、09年に米サンフランシスコで立ち上げたブランド。椿や米など日本の原料を用いたスキンケアアイテムをそろえ、パッケージも着物の帯や茶道のなつめ(茶器)などからインスパイアされている。セフォラ(SEPHORA)ではスキンケアのトップセラーになるほど知名度があり、アメリカでJビューティ人気に火をつけた存在として知られている。

 今回上陸するのはプレステージラインで、価格も税込1300〜1万5500円。沖縄の海藻、宇治の緑茶、秋田の米を2回に分けて発酵させた独自成分「HADASEI:ハダセイ-3(TM)」をほぼ全ての製品に配合しており、肌の潤い保持やバリア機能をサポートする。そのほか椿油を用いたクレンジングオイルやアコヤ真珠由来エキスを配合したクリーム、芍薬エキスを用いたアイクリームなど、日本各地の原料を取り入れ、全て日本で製造している。また酵素洗顔はお茶を立てるように筆で泡立てるなど、使い方も日本からインスパイアされている。

 コンセプトは「HARMONY FROM SKIN TO SOUL(この肌と、こころに、美しい和を)」で、肌と心の調和を掲げる。スキンケアが自分との対話の時間ととらえ、肌だけでなく心の手入れまでできることをうたう。ウエルビーイングメンターには京都・両足院の住職を務める伊藤東凌氏を迎え、心と五感で楽しむスキンケアを発信する。また、ブランドの魅力を伝えるカルチャーアンバサダーにマドモアゼル・ユリアを起用した。

 9月28日にECサイトをオープンするほか、同日から京都の両足院と東京・中目黒にあるHIGASHI-YAMA Studioで期間限定の体験サロン兼ショップを開催する。「タッチャは五感と心で楽しむブランドとして、まずはブランドの世界観をフルに体験できる場を提供する。その後、百貨店などの小売りでの展開を目指す」と「タッチャ」を展開するユーピーディー・ジャパンの岡本典子代表。なお、本国にある他のラインアップも順次日本に上陸させる予定だ。

 ユニリーバは近年プレステージビューティに力を入れており、「タッチャ」の買収は大きな成功例とされている。今回の上陸に際し、昨年ユニリーバのプレステージブランドを担う会社としてユーピーディー・ジャパンを設立した。同社はまず、「タッチャ」の日本事業を担当する。

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NEWS 02

2つの世界の美しく力強い融合 「サカイ」阿部千登勢が手掛けた「ジャンポール・ゴルチエ」のオートクチュール

 「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢をゲストデザイナーに迎えた「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER 以下、ゴルチエ)」の2021-22年オートクチュール・コレクション「ゴルチエ パリ バイ サカイ(GAULTIER PARIS BY SACAI)」が、1年の延期を経て、7月7日に発表された。会場は、同メゾンの本社。数々のアイコニックなデザインを生み出してきた「ゴルチエ」と、ハイブリッドスタイルで日本から世界へと羽ばたいた「サカイ」という2つの世界が共鳴するように溶け合い、美しく力強いコレクションが誕生した。

 「今回手掛けるにあたって、ゴルチエさんのDNAや良さを残したいと思った。20代の頃から彼のコレクションが大好きで、意識したのは、そのハッピーな感じと既成概念を壊すという”自由さ”。ただ、昔の『ゴルチエ』と同じということではなく、あくまで『サカイ』らしく、そして2021年の今に合った洋服にしたかった」。そう阿部デザイナーが話すように、披露した31体はマリンボーダーやコルセット、コーンブラといったゴルチエのエッセンスとアトリエの力を生かしながら、異なる要素のハイブリッドや軽やかで透け感のある素材使い、手の込んだケーブルニット、立体的なシルエットなどで「サカイ」らしさを表現している。

 例えば、ファーストルックのピンストライプのコルセットドレスには、同柄のオーガンジーで仕立てたオーバーサイズシャツを組み合わせ、そこにコーンブラをアレンジしたビスチェをプラス。トレンチコートはバッスルやテントのようなシルエットで再解釈し、テーラードのコートドレスにはフェティッシュなレースアップでボンバージャケットのパーツをドッキングする。また、フェイクファーと「JPG」のマークをあしらったアウターは、阿部デザイナーの記憶に強く残っていた1994-95年秋冬のショーショーでビョーク(BJORK)が着用したジャケットを参考にしたもの。デニムアイテムは「リーバイス(LEVIS)」の古着をアップサイクルし、マリンボーダーやタータンのドレスはテープ状にカットした切りっぱなしのサテンやチュールを重ね合わせている。

 ラスト2ルックは、ブルーのワークウエアをサテンと組み合わせて、ドレスライクにアレンジした。その足元を飾るのは、「ナイキ(NIKE)」とのトリプルコラボによる”LD ヴェイパー ワッフル(LD Vapor Waffle)”。ショー直後から「ゴルチエ」の公式サイトで開始した先行オーダーは即完売状態になり、9月末の発売時にも話題を集めることは間違いないだろう。

 多くのルックに取り入れたセカンドスキントップスやレギンスのタトゥープリントは、「サカイ」でもコラボレーションしているタトゥーアーティストのドクター・ウー(Dr. Woo)が描いたもの。ヘアはグイド・パラウ(Guido Palau)、メイクはダイアン・ケンダル(Diane Kendall)、音楽はミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)、シューズはピエール・アルディ(Piere Hardy)と、これまでの「サカイ」のコレクションでも一緒に取り組んできた顔ぶれが脇を固めている。

 今回のコレクションはコロナ禍に4回渡仏して作り上げたもので、「渡航のたびに隔離しなければならず大変だったけれど、ZOOMでのやりとりでは決して作れなかった」と阿部デザイナー。初めてのクチュール制作については「私たちは常にたくさんじゃなくていいからスペシャルな服を届けたいと思っていて、『サカイ』の服も大量に生産して売るようなものではない。けれど、今回のオートクチュールは、その究極の形。本当に好きなように作らせてもらって、とても楽しかった」と、清々しい表情で話す。

 一方、ゲストの一人としてショーを見守ったゴルチエは「質問があれば答えるよという感じで、あとは完全な自由を与えた。自分が関わり始めると、ついついコントロールしたくなってしまうからね(笑)」と説明。また、今回の人選については、「最初のゲストデザイナーとして『サカイ』の千登勢を選ぶのは、とても簡単だった。自分の後にコレクションを手掛ける一人目は女性にしたいと思っていたし、彼女のクリエイションには自分がこれまでやってきたことと共通する部分が多い。同じスピリットを持ちながらも、彼女らしい新たな方法でエネルギーをもたらしてくれた。とても喜ばしいことだ」と笑顔で語った。

 なお、ゴルチエは20年1月にランウエイを引退。今回から、毎シーズン異なるゲストデザイナーを迎えてオートクチュール・コレクションを発表する。来シーズンの人選は、まだ明かされていない。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。