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アップサイクルの価値が急速に浸透中
最近、民放チャンネルのニュース番組で“アップサイクル”について特集が組まれているのを複数見ました。その価値が広く浸透し始めているのだなと実感しています。フランス人デザイナーのマリーン・セルも、早くからアップサイクルやサステナビリティの価値を提唱し続けてきたデザイナーの1人です。
海外の若手デザイナーは、環境問題に対する意識がとても高い反面、これまでは価格帯やクオリティーにばらつきがあり、商品化への課題が多い印象でした。しかしここ最近は全体的に技術が飛躍的に進化しており、言われないとリサイクルやアップサイクルと分からないアイテムもたくさん登場しています。そして「マリーン セル」は、価格帯の壁を乗り越えようとしています。このような若手デザイナーの勇気あるアクションは、ファッション業界だけでなく、世界の価値を変えていくきっかけになるはずです。
「過去の習慣に戻ってしまわないことが大切」 マリーン・セルが考えるファッションの今と未来
マリーン・セル(Marine Serre)は、アップサイクルやリサイクルを駆使したクリエイションでファッションの在り方を探求する若手デザイナーの代表格だ。2016年に自身の名を冠したブランドをスタートし、その翌年にはLVMHヤング ファッション デザイナープライズでグランプリを受賞。初期から「循環性(circularity)」「気候中立(climate neutrality)」「困難な状況から立ち直る力(resilience)」を柱にしたコンセプト“エコフューチャリズム”を掲げ、未来を見据えたものづくりに取り組んでいる。18-19年秋冬からはパリ・ファッション・ウイークにも参加し、世界の終焉を感じさせるようなショーで気候変動への警鐘を鳴らしてきた。しかし、3月に発表された21-22年秋冬コレクションはアプローチを一転。身近な人の日常を切り取ったような親密な映像やさまざまな素材が製品になるまでのドキュメンタリーを通して、コアアイテムを中心とした新作を見せた。そこには、どんな心境の変化があったのか?コレクションと映像作品に込められた思いやこれからについて聞いた。
――2021-22年秋冬コレクションでは、どのようなメッセージを伝えたかったのでしょうか?また、その理由や背景を教えてください。
マリーン・セル「マリーン セル」デザイナー(以下、セル):今シーズンに向けてドキュメンタリーと本を制作することを決めたのは、ブランド初のショートムービー「AMOR FAI」を通して21年春夏コレクションを発表した後。16年にブランドを始めてから4周年になるアニバーサリーを祝いたいという気持ちがあり、今シーズンは「CORE」と名付けました。
そして、全世界が自問自答しているような困難な1年を経て、かつて(地球温暖化の)防止や警鐘、そして最終的には切迫した黙示録までを表現していた私たちの物語を続けていくことも重要だと感じました。今では、誰もがこの緊迫感を真剣に受け止めていますからね。そこで、私たちは「マリーン セル」が誕生した当時を振り返り、持続可能性と再生に基づいたブランドの根幹を見直すことにしました。具体的に時間をかけたのは、シルエットと環境に配慮したプロセスにあらためて取り組むこと。設立当初から一貫している“エコフューチャリスティック”なアプローチを際立たせるとともに、(アップサイクルやリサイクルを駆使して)再生されたアイテムを着心地と価格面でより身近なものにすることを目指しました。
この野心的なプロジェクトを成功させるために欠かせなかったのは、デザインやアトリエから開発、経理、PR、マーケティング、セールスまですべてのチームが、各ステップの重要性に対する共通認識を持つこと。今は製品についての伝えることも重要ですが、それと同じように、どのようにデザインしたり作ったりするか、どうやって工場に説明するか、いかに材料を調達するかということも重要です。そのためには、すべてのチームを同じレベルにするのが鍵だと考え、スタートしました。
――今シーズン発表した映像は、何気ない日常の中にある幸せが描かれていました。これまでのショーとは大きく異なるアプローチでしたが、このような表現を選んだ理由は?
セル:私たちはブランドを始めた頃から友人や家族と一緒に取り組み、同じ未来を信じる仲間を増やしてきました。共に働き、歩み、そして創造する人々と誠実な関係を築くのは、私が大切にしていること。「CORE」はある意味、私たちを支え、エネルギーを与えてくれるとともに、時間を共有し、仲間になってくれたミューズや友人たちへのオマージュです。そして同時に、私たちを信頼し、彼らの家や私生活に迎え入れてくれたことへのオマージュでもありますね。
――21-22年秋冬から三日月プリントのシリーズなどアイコニックなアイテムをそろえるホワイトラインの価格帯を見直したそうですが、なぜ価格を下げる必要があると感じたのですか?
セル:今季の大きな目的は、サイズやフィットの改善といった着やすさと価格面で、商品をより手に取りやすくすることでした。そこで価格に関しては、古着などをアップサイクルした再生アイテムとリサイクル繊維で作ったウエアで構成するホワイトラインに焦点を当てることにしました。私は、消費者が「マリーン セル」のアイテムを購入する際に直面するハードルの高さを懸念しています。(アップサイクルやリサイクルなどの)新たな方法で作られた服を着たいと思っていても経済的な理由で購入が難しいこともあるでしょう。なので、手仕事を必要とする生産にかかる時間に対してフェアであり、ブランドを続けるために必要なマージンを意識しながらも、価格を下げる努力をしなければならないと感じました。上質かつユニークであることを維持しつつ実現するには生産工程を簡素化しなければならず、ベストな方法を見つけるために工場との密なコミュニケーションが必要でした。それでも、私たちは“エコフューチャリズム”をストリートにもたらしたいと考えています。
――「マリーン セル」は設立時からずっとサステナビリティと向き合っていますが、最近はより多くのブランドや消費者がサステナビリティについて話し合ったり、取り組んだりするようになりました。ファッション業界の現状をどのように捉えていますか?
セル:ファッション業界は、生産や流通の方法、そして生き方において、もう“サステイナブルではない”という選択肢がないことに気付いていると思います。これは、私たちの未来の話です。
――この1年で、人々の価値観は大きく変わりました。ご自身の価値観や考え方に変化はありましたか?
セル:私の考え方や価値観は、まったく変わっていません。ただ、パンデミックによって変化のための動きは加速し、扉が開かれたと思います。
――パンデミックが明けたら、まず何をしたいですか?
セル:今の状況は終わるわけではなく、形を変えていくでしょう。だからこそ不安が軽くなった時に、過去の習慣に戻ってしまわないようにすることが大切だと思います。
「ミュウミュウ」が「リーバイス」をリメイク スパンコールの輝く“501”ジーンズも
「ミュウミュウ(MIU MIU)」は「リーバイス(LEVI'S)」とコラボレートし、リメイクジーンズのカプセルコレクションを発表した。1000着の数量限定で発売する。価格はデザイン次第で、980ドル(約10万5000円)や5800ドル(約62万6000円)など。5月中旬にロンドンのセルフリッジ(Selfridges)と上海のショッピングモール「IAPM」でデビュー。日本国内では24日、取り扱いを開始する。その後5月25日〜6月6日にロサンゼルスの「ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)」で販売。「ミュウミュウ」の店舗やECには6月18日から並ぶ予定だ。
「ミュウミュウ」を擁するプラダ・グループ(PRADA GROUP)のミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は2020年12月、“アップサイクルド バイ ミュウミュウ(Upcycled by Miu Miu)”プロジェクトを発足。第1弾では、世界中から集めた1930~70年代のドレスやワンピースを同氏が刺しゅうやリボン、スパンコール、クリスタルビーズなどを使って「ミュウミュウ」らしくリメイクした。今回もアイテムは全て一点物。それぞれのアレンジは手作業で施されている。
本コラボでは1980〜90年代の「リーバイス」のシグネチャーモデル“501”ジーンズやデニムジャケットに、スパンコールやパール、刺しゅう、レザーなどを加えてアレンジ。“501”ジーンズはメンズを使用し、膝丈とフル丈の2種類をそろえた。ジャケットはパフスリーブや白いレースを使ったフリルの襟などを施した。腰部分のジーンズのタグもライトピンクに変更し、両ブランドのロゴを記した。
キャンペーンには、俳優のエマ・コリン(Emma Corrin)とモデルのリラ・モス(Lila Moss)、ジョージア・パーマー(Georgia Palmer)を起用した。フォトグラファーのジョニー・デュフォート(Johnny Dufort)が撮影。コリンはパフスリーブのデニムジャケットと、スパンコールが輝く“501”ジーンズを着用。モスは全体がビーズで飾られたセットアップに、パーマーはレザーで装飾されたアイテムを着ている。デザインを通してマスキュリニティー(男性性)やフェミニニティー(女性性)の揺らぎを遊び心満載に表現した。