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展覧会にも、クイズにもなる名香
展覧会ができる名香ってどれだけあるのでしょうか?ファッションだけでも十分逸話多きクチュリエ、クリスチャン・ディオールですが、ビューティの世界でもその足跡をしっかり残しています。偉大だな、と心から思います。
そういえば、つい先日行われた弊社の新入社員歓迎会で“ミス ディオール”の新作と旧作の香りが用意され、どっちが新作かというクイズがあり、大変盛り上がりました。出題者は入社2年目。名香の人気ぶりをそこでも実感しました。
「ディオール」が名香“ミス ディオール”の展覧会を開催 アーカイブやアートの展示、ピエール・エルメとのコラボカフェも
「ディオール(DIOR)」は6月16日〜7月15日、東京・六本木ミュージアムでブランドを代表するフレグランス“ミス ディオール”の新作誕生を記念した展覧会「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」を開催する。ブランドが受け継ぐクチュール作品やオブジェ、アーカイブコレクションのほか、国際的に活躍するアーティストたちとコラボレーションしたアート作品などを展示するほか、ピエール・エルメ(Pierre Herme)とコラボレーションしたカフェも併設。オリジナルマカロンやスペシャルドリンクなどを提供する。
1949年に製作されたドレス「ミス ディオール」をはじめとしたクチュール作品やオブジェ、アーカーブコレクションが一堂に会する会場には、フランスのビジュアルアーティスト、エヴァ・ジョスパン(Eva Jospin)によって作られた“ミス ディオール パルファン”の限定エディションや井田幸昌やリャン・ユアンウェイ(Liang Yuanwei)による絵画、サビーヌ・マルセリス(Sabine Marcelis)、荒神明香、江上越、ブリジット・ニーデルマイル(Brigitte Niedermair)らによるコラボアートなども展示。ブランドの歴史と世界観をさまざまな作品で体感することができる。
会場内ブティックでは“ミス ディオール”のフレグランス商品を中心に、メイクアップやスキンケアアイテム、ブランドにまつわる書籍などを販売するほか、フレグランススペシャリストによる香りのカウンセリング体験も用意した。ほか、会場内ブティックをデジタル体験できるバーチャルブティックを公式サイトでオープン。遠方在住でも会場を訪れた気分でショッピングを楽しむことができる。会場、オンライン共にミュージアムブティックで4万4000円以上購入すると展覧会限定のオリジナルトートバックを先着順でプレゼントする企画も行う。
ピエール・エルメとコラボレーションした併設カフェでは“ミス ディオール”の世界にインスパイアされたオリジナルメニューを用意した。オリジナルマカロンやスペシャルドリンクはテイクアウトも可能で、ほかにここでしか楽しめないデザートプレートも用意する。なお、ブティック、カフェ共に会場内ではクレジットカード、電子マネー、QR決済のみの対応になる。
メゾン初の香水“ミス ディオール”は、ブランド創設者のクリスチャン・ディオール(Christian Dior)が花を愛する最愛の妹、カトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)に捧げたもので1947年に誕生した。優美な調香とクチュールリボンをあしらったボトルデザインが特徴で、今もなおブランドを代表する香りとしてさまざまなアイテムが登場している。
5月17日にはフランシス・クルジャン(Francis Kurkdjian)パフューム クリエイション ディレクターが現代的に再解釈した“ミス ディオール パルファン”(35mL、1万3200円/50mL、1万8040円/80mL、2万3100円)を発売。ジャスミンにフォーカスしつつ、フルーティーでモダンな香りに仕上げたほか、ボトルには千鳥格子模様を彫刻しラメの銀糸で織られたシルバー地のジャカード織リボンを組み合わせた。
「ディオール」イベント概要
■ミス ディオール展覧会 ある女性の物語
日程:2024年6月16日〜7月15日(6月25日は休館)
時間:10:00〜20:00(最終入場19:00、最終日は17:00最終入場、18:00閉館)
場所:六本木ミュージアム
住所:東京都港区六本木5-6-20
入場料:無料(完全予約制。LINE公式アカウントからの申し込み必須)
アレッサンドロ・ミケーレが初の自伝を出版、哲学者との共著 「ファッションが私を哲学へと導いた」
3月に「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のクリエイティブ・ディレクターに就任したアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が、初の自伝「形の人生:再魅了の哲学(La Vita delle Forme: Filosofia del Reincanto)」を発売した。本書は、イタリアの哲学者エマヌエーレ・コッチャ(Emanuele Coccia)との共著で、 発行はアメリカの老舗出版社ハーパーコリンズ(HarperCollins)。5月7日(現地時間)にイタリアで先行発売しており、後に英語とフランス語、ドイツ語の翻訳版を発売する。
本書は、ミケーレとコッチャがコロナ禍の期間中の会話を記録していたところから自然と形になっていったが、完成までに3年半を費やしたという。ミケーレによれば、「誤解を招くメッセージとならないように」タイトルに“ファッション”という言葉を使うことを意図的に避け、装丁は“未定”を表現した曖昧な色調とシンプルなデザインに。ミケーレの色彩や装飾への愛が語られているにもかかわらず、写真やスケッチも一切収録されていない。
「グッチ」でのデビューショーを回想 「解雇されると思った」
コッチャとは、ミケーレの長年の恋人でもあるローマ・ラ・サピエンツァ大学のジョヴァンニ・アッティーリ(Giovanni Attili)教授による紹介で出会ったという。「初めは、哲学は難しく頭を混乱させるもので、限られた少数の啓蒙された人々のためのものだと思っていた。しかし、哲学は人生に密接に関係していることに気付き、自分の考えやファッションに対する見解をより明確に説明するのに役立つことを理解した」と振り返り、「ファッションが私を哲学へと導いた」と説明。実際、2015年にミケーレが「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターに就任して初めて発表したコレクションのプレスリリースには、アッティーリの哲学を引用している。「一部の人々は、スノビッシュだと感じたようだが、私は哲学が(ファッションを表現する)最も適切な“言語”だと思った」。
当時、ミケーレはこのショーで男性モデルの髪に花を飾りフリルのシャツを着せたことで、解雇されると思っていたと本書で回想している。「キャリアのことは考えていなかった。ありのままの自分で、ただ自然に美しいと思うことを表現した。すると、人々はジェンダーフルイドについて語りだし、私はその言葉を聞いたこともなかったから驚いた。私は子どもの頃、父親の髪を編んでいた。父親はそれを許し、60歳でも編んだ髪で自由でいることを教えてくれた。私は何も発明しない。ただ、観察はする。衣服を創造することは、人を想像することを意味し、多様な宇宙のキャラクターを構築することでもある」。
また、本のとある章でミケーレは、「本、像、スカート、椅子、ズボン、カップ、絵画───全てがその形、大きさ、目的、重要性に関係なく存在して生きている」とモノの収集家であることを明らかにし、アニミズム(精霊信仰)についても書いている。さらに、彼の母親と双子の叔母について触れ、彼女たちが68組のリアルな双子を起用した「グッチ」での最後のコレクション“ツインズバーグ”の着想源だったことを記しているほか、創設100周年を記念したアニバーサリー・コレクション“アリア”やロサンゼルスのハリウッドで披露した“ラブ・パレード”など、「グッチ」の他のコレクションについての詳細で本書は締めくくられている。
出版記念イベントにはファンが長蛇の列
発売にあたり、5月11日(現地時間)にはイタリア最大の本の見本市「トリノ国際ブックフェア(Salone Internazionale del Libro)」で出版記念パーティーが開催され、サイン会のためにミケーレ本人も出席。22年11月に「グッチ」のクリエイティブ・ディレクターを退任して以来の初の公の場だったこともあり、多くのファンが彼を出迎え、サイン会は1時間待ちの長蛇の列ができていた。ミケーレは、「まるでロックコンサートのような熱量だ。デジタルが主流の時代においても、若い世代が本を選んでくれると思わなかった」と、集まったファンの多くが若い世代だったことに感動した様子を見せていた。
サイン会後にWWDが行った単独インタビューでは、「ヴァレンティノ」のクリエイティブ・ディレクターについての詳細は避けるも、創設者ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)のアーカイブデザインと、クチュールハウスならではの縫製職人の技量と専門知識に感銘を受けたと話し、「今は振り返りと吸収の瞬間。学びと立案の期間」とコメント。また、現在の社会情勢に関する出来事について、「自由が危険にさらされている今、本が見張り役として私たちを守ってくれていると感じる。(為政者は)読書をする者を恐れるが、言葉に没頭することが自由なのだ」と主張し、小説よりも歴史書や新聞を好むことを明かした。
なお、5月31日にミラノの劇場、テアトロ・フランコ・パレンティ(Teatro Franco Parenti)で行われる出版記念イベントにも、ミケーレが登壇する予定。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。