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「俺の若かったころは……」はパワハラ?

 4月も2週目を迎えています。新入社員の皆さんは、少しずつ新生活に慣れてきたころでしょうか。当社にも今春は4人のフレッシュなメンバーが加わりました。

 先週から「WWDJAPAN.com」では、新入社員や業界の若手に向けて【私が新入社員だったころ】という先輩たちに話を聞く連載を行っています。「俺/私の若かったころは……」を聞かせるなんて、今やパワハラに当たるのかも⁉︎という危惧は編集部内にもありましたが、先輩たちが頑張っていた話は泥臭くてもキラキラしていて、参考になる部分もきっとあるはず。このメルマガの読者は業界の中堅以上の方が多いと思いますが、皆さんはどう思われます?

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

「ビープル」初の双子姉妹のディレクター MDやセールスなど分業 【私が新入社員だったころ vol.8】

 「WWDJAPAN」は4月3日号で、ファッション&ビューティ業界の新入社員や若手社員に向けて、「プロになろうーー知っておくべき業界の今」と題した特集を掲載している。それと連動し「WWDJAPAN.com」では、業界で活躍するアラフォー世代以下のリーダーたちに、自身が若かったころに心掛けていたことや、それが今にどうつながっているかを取材。連載形式でお届けする。今回はマッシュビューティーラボが展開するセレクト業態、ビープルで昨年サブディレクターに就任した双子姉妹の浜津奈央・早希さんに話を聞いた。

WWD:化粧品業界に携わるきっかけは?

浜津奈央マッシュビューティーラボ リテール事業本部MD2部 ビープルサブディレクター(以下、奈央):学生時代に肌荒れに悩み、栄養士の資格を持ちオーガニック・ナチュラル分野に長けていた母と新宿伊勢丹本店のビューティアポセカリーに行ったのがきっかけです。担当スタッフがおすすめしてくれたオーガニックブランド「フランシラ(FRANTSILA)」を使うと肌が元気になっていったんです。茅ヶ崎に住んでいたので、近くで購入できないかと調べたところ横浜にコスメキッチンがあり、運営会社であるマッシュビューティーラボの存在も知りました。幼少時から接客とレジ打ちが好きで、どちらもできるドラッグストアで7年間アルバイトをしていたのですが店舗が改装するのを機に辞め、2015年8月にマッシュビューティーラボに入社しました。

浜津早希マッシュビューティーラボ リテール事業本部MD2部 ビープルサブディレクター(以下、早希):私も大学時代に奈央と同じドラッグストアでアルバイトをしていて、二人で横並びでレジ担当していたんです(笑)。化粧品や食品など取り入れたものによって体や肌が元気になるのを実感し、新卒で別の分野に就職したのですが、フランスのナチュラルコスメを扱う企業に転職しました。販売スタッフとして従事していたのですが、そのブランドは子どもが使用できたり、肌荒れに悩む人が使えたりする商品が多くなかったので、近隣店舗のコスメキッチンをおすすめすることが多かったんです。私自身もコスメキッチンやビープルの顧客だったこと、奈央がマッシュビューティーラボに就職していたこともあり、紹介してもらい2017年3月に転職しました。

店舗のカテゴリー別売り上げNo.1をインプット

WWD:入社後は店舗スタッフとして従事、当初心がけていたことは。

奈央:ビープル横浜相鉄ジョイナス店に配属となり、半年間は準社員、1年後に正社員に。最初は数多くのブランドがあり、多種多様なお客さまが来店するので自分自身がどのようなモチベーションで対応すればよいか分かりませんでした。なので最初は得意のレジをひたすら担当していました。まずはビープルで扱うカテゴリーの売り上げトップ1を頭に入れ、先輩スタッフからアドバイスをもらったり、取引先メーカーからブランドの背景を聞いたりして、知識を蓄積していきました。知識が豊富なお客さまが多かったので接客を通じて学ぶことも多かったですね。その後店長、トレーナー、マネージャーと経験し、2022年にビープルサブディレクターに就きました。主にインナーケアとフードのバイイングを担当し、MDディレクターも兼ねています。

早希:私はコスメキッチン アトレ吉祥寺店に配属され、前職の経験もあったことからその後、渋谷ヒカリエ シンクス店で店長に就きました。当社には新人スタッフに半年間経験値のあるスタッフがついて教育するエデュケーター制度があるので、そこでの学びは多かったです。奈央同様に、店長、トレーナー、マネージャーを経て、本社勤務となりました。それまではコスメキッチンの担当でしたが、22年からビープルサブディレクターに就任し、アウトサイドケアのバイイングを任されています。そのほか、セールスディレクターも兼任しています。

WWD:印象に残っている出来事ことは。

奈央:店長時代に一度スタッフを泣かせてしまったことがあるんです。そのスタッフはレジを担当することに気を取られ、接客がおざなりになっていました。私は体育会系でがむしゃらに頑張るタイプで、自分と同じものを求めていたんですね。スタッフごとに性質が違いますし、店舗の特性もあります。それぞれに合った対応が必要だと痛感しました。普段はチームのコミュニケーションを重要視し、インスタグラムでつながりライフスタイルも把握できるようにしていましたね。

早希:シンクス店は売り上げの多い店舗で1日平均160万円の売り上げが、コロナ禍で30万円に落ち込みました。21人のスタッフを抱え1日13人で回していましたが、スタッフの人数がお客さまより多かった時期もありました。これまではお客さまが多く来店するため店頭対応で精一杯でしたが、一人一人のスタッフにブランドを担当してもらい、伸ばしたいブランドを決め朝礼で発表してもらいました。それぞれが担当ブランドのメーカーとのコミュニケーションが密になり、ブランド愛も強くなりましたね。また、私も店長時代にスタッフの教育で一度悩みました。店舗の中でVMD(ビジュアルマーチャンダイザー)は誰に任せた方がよいかなど適材適所を見極めるのに苦労しました。常にスタッフには話かけていましたし、誕生日は絶対覚えて一声掛けていましたね。

WWD:仕事の悩みやストレスの解消法は。

奈央:両親が長野に動物と住んでいるので実家に戻りリフレッシュしたり、お風呂に1時間ほど入ったり、寝て、食べたいものを食べたりすることですかね。友人や同僚ともご飯を食べにいきお互いの近況報告や相談もしています。

早希:私も同じ店舗だったスタッフと食事にいったり、友人と会ったりして気分を切り替えていますね。

WWD:新入社員に取り組んでもらいたいことは。

奈央:自分の好きなことを見つけることです。まずはいろいろなことに挑戦し自分に不向きなことを理解する。そして腹を割って話せる同僚や先輩・上司との出会いも大切。ステップアップするための土台作りをしてほしいですね。

早希:私たちは、ビープルのバイイング業務だけではなく、サブディレクターとして3月に開催した恒例の展示会「ビープルフェス」ではコンセプト立案からVMDまで幅広く経験し、分からないことも多く大変でしたが終わってみると自信につながりました。みなさんにも自分に規制をかけずチャレンジしてほしいですね。そして壁にぶつかったときには一人で抱え込まずに話せる友人や先輩を見つけてもらいたいです。人とのつながりは本当に貴重なものですよ。

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NEWS 02

アパレル店長、コンサルを経てジョイン ワールドのシステム外販担当が「キャリアチェンジしても変わらないこと」【私が新入社員だったころ vol.9】

  「WWDJAPAN」は4月3日号で、ファッション&ビューティ業界の新入社員や若手社員に向けて、「プロになろうーー知っておくべき業界の今」と題した特集を掲載している。それと連動し「WWDJAPAN.com」では、業界で活躍するアラフォー世代以下のリーダーたちに、自身が若かった頃に心掛けていたことや、それが今にどうつながっているかを取材。連載形式でお届けする。 連載第9回は大手アパレルのワールドで働く加藤圭介さん。現在はシステムソリューション事業本部に所属し、同社の店舗運営やサプライチェーンのシステムを他社に外販する仕事に従事する。新卒から数年は「ユニクロ(UNIQLO)」で店長を務め、コンサルティング会社を経てワールドへ転職した、彩り豊かなキャリアの持ち主だ。

WWD:ワールドでの現在の仕事は。

加藤圭介・ワールドシステムソリューション事業本部 第2システムソリューション部:私が所属するシステムソリューション事業本部は、ワールドが既存のアパレル事業以外の収益源を拡大すべく、目下注力してる領域である「デジタル事業」を担うセクターの一つです。これまで自社で構築・運用してきたシステムを他社に販売し、業務効率や生産性の改善などに役立てていただいています。私がセールスしているソリューションは主に2つ。店舗とECの両販路で、いかにお客さまの満足度を高めていくかという「OMO対応」と、データに基づく需要予測・生産による「在庫の適正化」です。

WWD:前職の経験が生きているのか。

加藤:これまでアパレルの現場と本部、コンサルティング会社を経てきましたが、今も毎日勉強することばかりです。ワールドでのキャリアは4年目で、すでに2回の異動を重ねました。オフプライスストア「アンドブリッジ(&BRIDGE)」の立ち上げ、公式ECの「ワールド オンラインストア(WORLD ONLINE STORE)」の集客・企画にも携わりましたが、これらは経験したことのない領域です。異動のたびに、新入社員からやり直すような気分です(笑)。

WWD:元々キャリアのスタートは「ユニクロ(UNIQLO)」という。

加藤:新卒でファーストリテイリングに入社して、まず「ユニクロ」の店長として3年半ほど現場に配属されました。当時は自分が店長だった横浜エリアの店舗が、神奈川ブロックにおけるお客様満足度でトップになっていたりもしたんです。結果だけで見たらいいのかもしれませんが、当時の僕はどうやら、めちゃくちゃ「やなヤツ」だったみたいで。当時の店舗のメンバーから、僕や店舗運営に関してフィードバックしてもらったんですが、ほぼ全員のリアクションペーパーに「怖いです」「意見が言えません」と書いてありました。

 愕然としましたね。自分ってこんなふうに見られているんだ、と……。でも心当たる節もありました。店舗でジーンズなどの裾直しをする補正担当が不在の日があれば、経験もないのに「自分でできる」と思い込んでガタガタな仕上がりになり、お客さまからこっぴどくクレームが入ったこともありました。

WWD:なぜ仲間に頼ることをしなかったのか。

加藤:信頼関係を築けていなかったからですよね。プライドが高くて、自分のことを他人よりも優秀だと思い、壁を作っていたのだと思います。それから徐々に自分を変えていこうと、常に胸に留めていた言葉は“率先垂範(そっせんすいはん)”。まずは自分がチームの模範になる。そして一人一人と向き合って、自分の熱量で巻き込んでいけるよう対話を大事にする。もちろん、すぐには結果は出ませんでしたが、半年くらいかかって、徐々に売り上げにつながっていきました。

WWD:その後は本部に異動となった。

加藤:4年ほど需要予測やサプライチェーンといった商品計画に携わったあと、その経験を生かしてコンサルティング会社に転職しました。誰もが知る小売企業の部長クラスの担当者にMDシステムの改善提案をするのは、プレッシャーも大きかったですが成長も感じられました。

 「ユニクロ」の店舗で働いたリアルな感覚は、転職してからもずっと強みとして生きていました。現場と本部、どちらの事情も分かっているからこそ説得力ある提案ができたのだと思います。

WWD:コンサル会社での学びは。

加藤:「自分に矢印を向ける」のが大事だということ。何かを成し遂げたいと思った時には、人を巻き込む必要が出てきます。「なぜ思い通りに動いてくれないのか」と人のせいにしていては、いつまで経っても物事は進まない。だから人が気持ちよく動いてくれるために、まず「自分がどう動くか」を考えるようになりました。それから、一つの仕事に泥臭く粘り強く食らいつく精神力、時間とそれに対する成果へのシビアな感覚を身に付けられたのも大きかったですね。

 ただやはり、ユニクロを離れてからも「ファッションに携わりたい」という気持ちが自分の根っこにずっとありました。それをど真ん中でやっている会社でもう一度チャレンジしたいと思い、19年にワールドへ転職しました。

WWD:新しいチャレンジに抵抗はないのか。

加藤:ころころとジョブチェンジしてきたので、その度に自分を「リセット」することにはずいぶん慣れています。今でも年上・年下問わず、分からないことはまず人に聞いてみる。常に平身低頭でいたいですし、組織内でも自分をそんなふうに「キャラ付け」するように心がけています。

 もちろん、新しい挑戦のたびに失敗はつきものですが、成功するまでやり続ければいいだけの話。成功すれば、失敗も全ての糧に変わる。そんなマインドセットで、ある意味開き直って目の前の仕事に取り組んでいます。

WWD:さまざまな仕事を経験してきたキャリアをどう振り返るか。

加藤:ひとつのことにしがみついてがんばることも、すばらしいことです。僕もそうでありたかったと憧れます。最近はプライベートでも(楽器の)サックスを習ったり、デザイン学校に通ってみたりと、迷走しながらチャレンジを続けています(笑)。昔から好奇心が強いので、その赴くままに生きてきたらこうなってしまいました。ただ、これまでの僕のキャリアを振り返ってみても、ひとつとして無駄な経験はなく、今につながっていることばかりです。色々なことを片足跳びに経験してきた僕も、1つ大きな目標は決まっていて。新しいブランドや事業を、いつか自分の手でゼロから立ち上げたいと思っているんです。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。