100年後のファッションと車はどうなる? 「アンリアレイジ」森永邦彦が考える未来

2017/09/29

INTERVIEW

ファッションに新たな技術を取り入れ、サプライズを起こし続ける
「アンリアレイジ(ANREALAGE)」。
「BMW i8」の限定車“プロトニック・フローズン・ブラック”とのコラボレーションでも、
“光を吸収して色が変化する黒”という革新的なテクノロジーをウエアに搭載し、人々を驚かせた。

常に先を見据える森永邦彦デザイナーは、100年後の世界をどう想像しているのか。
また思い描く未来で、「アンリアレイジ」はどのようなクリエーションを発信しているのか。
気鋭のデザイナーに、未来のファッションと車について聞いた。

“カタチのあるファッションはなくなっているかも”

WWDジャパン(以下、WWD):新しいことに挑戦し続けているが、100年後のファッションをどうイメージしている?

森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナー(以下、森永):もしかすると、“カタチのあるファッション”はなくなっているかもしれません。すでにSNSなどでは、自分をどう着飾ったり、個性を出したりできるかという、“カタチの無いファッション”が存在します。今は物質的にファッションの機能を持っていなくても、グラフィックなどの触れられないモノをまとうことができる。こんな物質的ではないファッションが、この先もっと出てくると思います。

WWD:ファッションとしての洋服がなくなってしまう?

森永:いいえ。良くも悪くも、ファッションと形骸化して残っているモノが洋服の一端を担っているとは思います。ただシーズン、性別、ジャンルなど、あらゆる境界線がなくなり、フラットになっていくと考えています。今の時代は、ただのTシャツでもタップひとつでさまざまな色や柄に変えられますよね。“カタチのないファッション”では、スマホ画面などの2次元上でどう映えるかがベースなので、そういった技術の開発がもっと加速していくはずです。

“すべてのモノはファッションにできると思っています”

WWD:「アンリアレイジ」は100年後にどうなっている?

森永:100年後には、今は当たり前のことがそうではなくなっている可能性がありますが、僕たちのテーマは変わらず“日常と非日常”。日常のリアリティを主軸としつつ、その時代のアンリアルな要素を表現していくブランドでなくてはなりません。「アンリアレイジ」のロゴはAとZを重ねています。これは「距離があるモノでも、重なる部分がある」という意味を込めています。現実とバーチャル、着られないカタチと着られるカタチ、色があるものとないものなど、時代が変わっても対極の価値を融合するブランドでありたいです。

WWD:ファッションとテクノロジーの融合を得意としているが、特殊技術はどのように見つけてくる?

森永:新しい技術はどうしても“テクノロジー”という言葉にまとめられてしまいがちですが、ファッションに起こり得ていないというだけで、もともと存在する技術です。それを科学や物理に応用し、どう繊維にするか、ということ。例えば今回「BMW i8」とのコラボレーションで採用した反射の現象は、道路標識に光を当てて、400メートル先でも視認できるようにするための技術の応用です。それをファッションで表現できないかと、標識を作っている現場の人などに相談しました。日常で起こっていることも、自分の知覚をズラすとまったく違う雰囲気で見える。すべてのモノはファッションにできると思っています。

“当たっても人が傷つかない柔らかい車が登場するかも”

WWD:昨今注目されているサステイナブルは
ファッションになる?

森永:サステイナブルなモノ作りは確かに注目されていますが、結果として生み出されたモノがおもしろくなったり、これまでと異なる視点だったりすることが重要だと思います。ファッションはエゴに基づくものではありますが、それと同時に、シェアしたり、分かち合ったりする新しい価値観が生まれています。今後はそういうシェアの視点を持ったサステイナブルという考え方に可能性を感じます。

WWD:では、100年後の車はどうなっている?

森永:技術的には、当たっても人が傷つかず、細い道でも入れる柔らかい車が登場するかもしれません。車そのものでいうと、先ほど話したファッションと同じように、カタチも意味合いもフラットになっていくと思います。ただ服も車も、真ん中にいるのは人。人がいる以上は、感情や気分と向き合っていくべきモノであることに変わりはありません。そういった意味で、ファッションも車も、ずっと続いていくと思います。

高いデザイン性とサステイナビリティーを兼ね備えた「BMW i8」

WWD:「BMW i8」とコラボレーションした
ウエアの特徴は?

森永:限定車“プロトニック・フローズン・ブラック”の最大の特徴は“黒”。今回作ったウエアには、「アンリアレイジ」らしさと、「BMW i8」のイノベーションを表現するため、対極にある“色”を融合しました。黒のウエアに光を当てると、それぞれ4色に変化します。本来、黒は光を吸収する色なので、光を跳ね返すどころか他の色に変化させてしまうという、かなり難易度の高い仕掛けにトライしています。

WWD:車はどのようなデザインにときめく?

森永:「BMW」でいうと、“イセッタ”のようなクラシックなタイプです。あのへんの時代を駆け抜けていた車にはときめきます。でも時代を変えるモノ作りに挑戦する「BMW i8」のような最新型も好きです。“プロトニック・フローズン・ブラック”は、ベルベットのようなボディをはじめとする高いデザイン性と、水力や風力などの再生エネルギーを使用した製造過程など、サステイナビリティーの精神も兼ね備えているのが革新的ですごいと思います。

KUNIHIKO MORINAGA
森永邦彦/「アンリアレイジ」デザイナー

1980年、東京都生まれ。早稲田大学社会科学部在学中にバンタンデザイン研究所で服作りを始め、2003年に「アンリアレイジ」を設立。ブランド名は“A REAL(日常)、UN REAL-(非日常)、AGE(時代)”を意味する。「神は細部に宿る」という信念のもと、色鮮豊かなパッチワークや人間の身体にとらわれない独創的なフォームに加え、テクノロジーや新技術を積極的にデザインに取り入れている。15年春夏シーズンにパリ・コレクションデビュー。15年にはDEFI(フランス服飾開発推進委員会)主催のANDAMファッション・アワード(ANDAM fashion award)のファイナリストに選出される。

16年7月には「BMW」創立100周年を祝う式典で、新旧の「BMW」車とコラボレーションしたファッションショー“Reflect The Future – Runway to THE NEXT 100 YEARS”を行った。

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車の既成概念を覆す“PROTONIC FROZEN BLACK”と、ファッションの常識を打ち破る「アンリアレイジ(ANREALAGE)」がコラボレーションし、光で色が変化する“黒”という革新的なウエアが誕生した。両者の未来を見据えたクリエイションが交差するスペシャル・ファッションストーリー。

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既存の生産、設計、インテリアなどをすべて見直し、未来の自動車社会を見据える「BMW i8」。その技術を結集して完成させた“PROTONIC FROZEN BLACK”のコンセプトや特殊技術を紹介する特設サイト。

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PHOTOGRAPHS : KENTARO MATSUMOTO

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