4月3日にオープンした「イセタン サローネ」。「コスメ デコルテ」などが入る
3月3日、「RMK」と「THREE」の店舗がルミネ有楽町1階にオープンした。両ブランドによると、オープン直後1週間の売り上げは、「RMK」は予算通り、「THREE」は予算比2倍以上で推移しているという。あまり大きく報じられていないが、「RMK」のカウンターがルミネに出店するのはこれが初めて。この純国産のビッグブランド出店にビューティ業界の関係者は「ついに“百貨店コスメ”の代表格の『RMK』までもがルミネに出店する日が来てしまっ た。これからコスメブランドの駅ビル出店はさらに加速する」と感じたことだろう。
ルミネは2009年ごろから「RMK」の導入にトライしてきた。それは、ルミネの顧客から一番要望のあったブランドであり、洋服との買い回りから考えても、館にあってしかるべきだった。それまでもルミネは、館におけるコスメの重要性を認識しており、07年ごろから総合美容サイトの「@コスメ」の実店舗をオープンしたり、当時はまだ早かったビーガンという考え方を取り入れた、メイクアップコスメ「B」、09年には「M・A・C」「ジルスチュアート ビューティ(JILL STUART BEAUTY)」を導入したりするなど、コスメブランドを積極的に取り入れていた。そして次こそは「RMK」と考えていた。しかし、百貨店流通の壁は厚く、ルミネは伊勢丹の“売り場ごと”導入するという方法をとった。
「RMK」は12年3月、「イセタンミラー」に入店するという形で登場。他社も「阪急フルーツギャザリング」「コスメーム」「インクローバー」といった新業態を続々とオープンし、コスメのセレクトショップも当たり前になった。4月2日リニュアルオプンの「ルクアイーレ」(大阪三越伊勢丹跡)には、「イセタンコスメティックス」をはじめ、「イセタンメンズスタイル」、「イセタンアーバンマーケット」などの小型店を出店。百貨店、SC、駅ビルなどといった業態間の垣根はどんどんなくなっていく。
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ルミネ有楽町の「RMK」カウンター
館だけでなく、セレクトショップにおいても化粧品はいまや欠かせない存在になった。ファッションのワンブランドのショップ内でも、アパレルを減らしてコスメやアロマ製品を扱い始めるケースが増えている。それでも、ファッション系のショップで化粧品が売れているという話は聞いたことがない。なぜ、コスメは売れないか?それは接客がよくないからだ。店員にコスメのことを聞いても、ファッションと同じ熱量では接客してもらえない。販売員自身がその製品を使ったことがないとも聞く。これではファッションのショップでコスメが売れるわけがない。
このファッションとコスメのミックス接客に取り組んでいるのが、東京ミッドタウンに4月3日オープンした「イセタンサローネ」だ。ウィメンズに特化し、ファッションでは「サカイ(SACAI)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「マメ(MAME)」、シューズでは「マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)」「ジャンヴィト ロッシ(GIANVITO ROSSI)」、ビューティでは「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」(これまで「イセタンミラー」にも入っておらず初の出店)「コスメデコルテ」「THREE」「RMK」などが入る。ポイントは自主販売員がファッション、服飾雑貨、化粧品までを接客するということだ。たとえば、シューズの売り場では顧客の靴を選ぶとともに、フットケアの観点から「クラランス(CLARINS)」のボディケアアイテムなども一緒に提案する。そのため、販売員は化粧品ブランドの研修も受けるという。百貨店にはファッションと化粧品の双方がありながら、フロアを越えての買い回りが少ないという課題を長年抱えている。「イセタンサローネ」でカテゴリーを縦断する接客で成果が出れば、三越伊勢丹の各百貨店でも活用するだろう。ファッション系ショップでのコスメの売り方について、スタンダードをぜひ作ってほしい。
ライフスタイルを提案する今の時代、ショップ内でアパレルだけを販売する時代は終わり、化粧品、アロマグッズ、フード、インテリアとMDはどんどん広がっている。特に化粧品は高い利益率も魅力だが、スキンケアはリピート率が高い。顧客がショップに定期的に足を運ぶキッカケになる重要なアイテムだ。それが売れなければ、真の意味でライフスタイルを提案しているショップとは言えないだろう。
※文中の肩書き・事実関係などは2015年3月30日時点のものです