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100分の1になった企業価値
業績不振が伝えられていたとはいえ、米オールバーズの身売りは衝撃的でした。記事タイトルにある通り、一時はシリコンバレーの制服とまで呼ばれ、イノベーターたちがこぞって履いていました。米国ほどではないにせよ、日本でもテーラードジャケットで足元が「オールバーズ」のビジネスマンをよく見かけました。
その企業価値が4年前の約100分の1です。環境にやさしいサステナブルな(持続可能な)モノ作りを追求した企業が、ブーム的に消費されて凋落する。皮肉というよりも、ビジネスの舵取りの怖さを思い知らされます。
苦戦の「オールバーズ」、62億円で事業売却 一時は“シリコンバレーの制服”と呼ばれ一世風靡
苦境が続いていたサンフランシスコ発のフットウエアメーカー、オールバーズ(ALLBIRDS)は3月30日、全ての知的財産および一部の資産と負債を、アクセサリーメーカー兼ブランド管理会社のアメリカン・エクスチェンジ・グループ(AMERICAN EXCHANGE GROUP以下、AEG)に3900万ドル(約62億円)で売却することを発表した。清算も視野に入れた今回の取引は株主の承認を経て6月末までに完了する見込みで、金額は調整する可能性があるという。
一世風靡から数年で凋落
オールバーズは、元プロサッカー選手のティム・ブラウン(Tim Brown)共同最高経営責任者(CEO、当時)と、再生可能エネルギーの専門家であるジョーイ・ズウィリンガー(Joey Zwillinger)共同CEO(同)が2015年に創業。自然由来の素材を使用したミニマルなデザインのスニーカーが世界中で人気を博し、17〜18年ごろには“シリコンバレーの制服”と呼ばれるほどIT起業家や投資家たちにヒットした。これを受け、アパレルやアンダーウエア分野にも進出。21年11月には米ナスダック(NASDAQ)に新規上場(IPO)し、時価総額はおよそ40億ドル(約6360億円)だった。今回の取引額を踏まえると、同社の企業価値はおよそ4年で1%未満となった計算だ。
その後、22年12月期をピークに業績が悪化。専門家らによれば、これはシューズの耐久性が低くスポーツやランニングに向かない、アパレルの吸汗性が悪いなどの問題が次第に表面化した結果だという。事業再建を目指し、23年5月にはズウィリンガー共同CEOが単独CEOとなり、ブラウン共同CEOはチーフ・イノベーション・オフィサーに就任。24年3月には、ズウィリンガーCEOが同職を離れて特別顧問となり、ジョー・ヴァーナチオ(Joe Vernachio)最高執行責任者(当時)がCEOに昇格した。相次ぐCEO交代、リストラなどを経て、D2Cモデルから国・地域ごとにパートナー企業と提携する事業モデルに転換を試みていたものの事態は好転せず、26年2月には米国内の全ての直営店(アウトレットを除く)を閉鎖することを発表。25年7~9月期(第3四半期)の売上高は前年同期比23.3%減の3298万ドル(約52億円)と厳しい状況が続いていた。なお、今回の取引に伴い、同社は3月31日に予定していた25年12月期の決算発表と説明会を中止した。
日本ではゴールドウインと独占販売契約を締結し、同社が24年6月から事業を担っている。
オールバーズのCEOのコメント
ヴァーナチオCEOは、「商品開発や認知度の向上に尽力し、消費者を引き付ける顧客体験を提供してくれたチームに深く感謝する。設立から10年で『オールバーズ』はモダンなデザイン、革新的な素材、そして比類のない快適性で知られる、ライフスタイルフットウエアのブランドに進化した。AEGとともにスタートする次章は、今後ブランドがさらに成長するべく、すでに完成しているこうした土台の上に築いていくものだ」と語った。
AEGは、08年の設立。「エアロソールズ(AEROSOLES)」「エド ハーディー(ED HARDY)」「ジェシカ カーライル(JESSICA CARLYLE)」など、アクセサリー、フットウエア、レザーグッズ、ビューティなど多岐にわたる30以上のブランドを保有もしくは運営している。
ジンズの田中亮社長が語る銀座店が「グローバル旗艦店」である必要性
PROFILE: 田中亮/ジンズホールディングス 代表取締役社長

アイウエアブランド「ジンズ(JINS)」を運営するジンズホールディングスは2025年8月期、売上高972億円(前期比17.1%増)、営業利益120億円(同54.3%増)と過去最高業績を更新した。業績好調の中で、創業者の田中仁会長の息子である田中亮氏は、23年にはジンズの社長に就任し、25年11月にはジンズホールディングスの社長に就任した。先日オープンした銀座のグローバル旗艦店で、同店を軸としたグローバル戦略と今後の成長像を聞いた。
WWD:ホールディングスでの社長就任後、最も大きな変化は?
田中亮社長(以下、田中) 事業会社時代からやること自体は大きく変わっていない。ただ、ホールディングスの社長になったことで、グローバル化を見据えてより会社全体での人材戦略や成長のあり方を考えるようになった。
WWD:海外事業も含め、業績が好調な背景は?
田中:昨年グローバルで商品をある程度共通化したことは大きい。これまでは国ごとにローカライズさせ、商品構成が異なっていたが、日本基準の商品を軸に再設計した。その結果、販売効率や在庫運用が改善し、品質と価格のバランスも高まっている。
WWD:現在注力している地域は?
田中:今特に「ジンズ」が注力している地域は東南アジア。東南アジアは出店交渉の際に、ショッピングセンターでいかに良い区画を取れるかが成功の鍵を握っている。現地のディベロッパーの中には、銀座に定期的に足を運ぶ人も多い。今回オープンする銀座店は、そういう人達に向けてブランドの強さを示すショーケースとしての役割を担うと考えている。
WWD:あらためて銀座店が持つ戦略的な意味合いは?
田中:私たちは「ジンズ」を日本発の世界No.1アイウエアブランドにしたいという目標を掲げている。そのために世界中の人にブランドの良さや当社のビジョン「Magnify Life(アイウェアを通じて、見るものだけでなく、人々の人生も拡大し、豊かにしたい)」を伝えなければならない。銀座は日本の中でも特異な立ち位置を占める一流の場所。その中でも良い区画に出店できたので、ここでブランドの全てを表現し、訪れる人たちに「ジンズ」の価値を伝えたい。また私たちのような比較的低価格の業態が銀座で路面店を出すこと自体、極めて異例なこと。国内の他ブランドに対しても、一線を画していることを伝えていく。
WWD:今後の国内、国外での出店を見据え、この店舗で他に検証したいことはあるか?
田中:一度立ち止まって「今の『ジンズ』とはどんなものなのか」「今の『ジンズ』が大切にしたい価値とはなにか」を見直した上で、それを純度高く表現するのが銀座店。ここで生まれた要素を、グローバルの各店舗に展開していきたいと考えている。
WWD:創業者の田中仁会長との役割分担は?
田中:会長と私は、得手不得手の部分が異なり、補完し合える良い関係性だ。例えるなら、会長は、大きな物事を動かすのに長けたホームランバッターで、自分は打率を積み重ねるアベレージヒッター。私は、会長ほど大きなことはできないが、顧客のために会社としてやるべきこと、SPAとしての「ジンズ」のあり方、そしてグローバル展開に関する知見は、会長にも負けないと思っている。その点は自分がリードしていきたい。一方で、銀座店の出店にもつながった人とのつながりやクリエイティビティーは、会長が得意としている部分。今のところは互いの強みを生かしてやれている。ただし、自分も今後、クリエイティブな部分も磨いていきたい。
WWD:今年「ジンズ」は創業25周年をむかえる。4月にはすぐに新宿店がオープンするが節目に向けた取り組みは?
田中:顧客の支えなくして25周年はむかえられなかった。今年の半ばに向けて、これまで支えてくれた皆さんに感謝を伝える施策を準備している。詳細は今後になるが、順次発表していく予定だ。
WWD:あらためて、今後目指していくブランド像は?
田中:繰り返しになるが「ジンズ」は「Magnify Life」というビジョンのもと、「見ること」を通じて人々の生活をより良くしていきたいという思いがある。どの国でも「ジンズ」のメガネが当たり前に着用され、それによってユーザーの日常が少しでも良くなる状態を実現することが目標だ。