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IPを考えると、コレクションそのものも「納得」になりそう

ミヤシタパークは新区画「パーク イン パーク」の導入に伴い、「施設のメディア化」に舵を切るとのことです。これもまたIP(知的財産)の価値再考が進んだ結果と言えるでしょう。

話は大きく変わって、ミラノやパリ・ファッション・ウイークの話。特に新たなデザイナーが提案する新しいブランドの姿は大きく変わりましたが、アイデンティティー、つまりIPのようなものが盤石なブランドは、納得できるものなんだと痛感しました。「シャネル」や「ディオール」に至っては、ファッションのアイデンティティーをコスメやジュエリーにも応用していますよね。これもまた、IPの価値をフル活用している好例と言えるのではないでしょうか?

IPとは、コラボのみにあらず。自分達のIPを考えると、コレクションそのものも「納得」の存在になりそうです。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

オアシス一色に染まるミヤシタパーク 三井不動産「体験型メディア戦略」こけら落とし

三井不動産は東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」にポップアップスペース「パーク イン パーク(Park in Park)」を11日オープンする。こけら落としとして、英ロックバンドのオアシス(Oasis)の来日公演を記念した“オアシス ライブ'25 トウキョウ ファン ストア”を11月2日まで開く。

オフィシャルストアは完全予約制

日本唯一の公式ポップアップストアとして、東京ドーム公演で販売するツアーグッズのほか、アクリルスタンドや湯呑みなど日本限定アイテムを取りそろえる。江戸紫の“TOKYO”ロゴが入ったツアー開催地カラー限定Tシャツといった同店限定グッズも用意。店舗奥には、ビールとチップスを提供する英国パブを設けている。

イベントを運営するソニー・ミュージックエンタテインメントの武藤久美子・コーポレートビジネスマーケティンググループ企画戦略部プロューサーは出店理由について「サイネージや空間演出まで総合的に世界観を楽しめるファシリティに魅力を感じた。渋谷には、オアシスの日本初公演が30年前の渋谷クアトロだった縁もある」と説明する。

16年ぶりの来日公演を控え「ファンの熱量はかなり高い」と踏まえた上で、日本独自企画の商品も充実させた。「ツアーパンフレット以外に思い出として保管できるもの、持ち歩けるもの、ファッションとして取り入れられるものなど、多様に広がるファン心理に対応できる品ぞろえになった」。入場は事前予約制で、すでに会期前半の予約枠は埋まっている状況だという。すぐに品切れを起こさないように商品在庫を確保するとともに、一人当たりの購入点数の制限を設けたり、レジ10台も用意したり、万全の態勢で営業に備える。

一味違うリテールメディアの強み

開催期間中は、ミヤシタパークの館内外に新設した42面のデジタルサイネージをストアのビジュアルがジャックする。館内BGMをオアシス楽曲から選曲した30曲で構成し、アルバム「モーニング・グローリー」のジャケットを再現できるフォトスポットも用意する。2階ではアマゾン ミュージックがポップアップ「Amazon Music Room」をオープンした。明治通りに面した「アディダス(ADIDAS)」の店内にオアシスのトラックジャケットなどを売るエリアを設けたり、「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPÉ)」もTシャツやトートバッグを売るポップアップを開催しており、館全体がオアシス一色となる。明治通りを通行する人たちの目にも留まることになる。

ミヤシタパークは新区画「パーク イン パーク」の導入に伴い、「施設のメディア化」に舵を切る。三井不動産が推進する多様なサービスを掛け合わせて施設の価値を最大化する「コマーシャル・サービス・プラットフォーマー」戦略の一環だ。「不動産ビジネスから幅を広げて、収益源の多様化を目指す取り組み」(商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部アーバン事業部運営グループの國嶋航太氏)と位置付け、家賃収入にとどまらない新たな収益確保に乗り出す。三井不動産は東京ドームを傘下に持ち、船橋市の「ららアリーナ」などスポーツ施設も運営する。今回のオアシスのように、傘下の施設で開催される音楽ライブやスポーツのイベントと連携した企画ができるのも強みだ。

「パーク イン パーク」のギャラリーエリアは、大型イベントから日常的なイベントまで柔軟に対応できる空間に設計した。11月以降もアート、音楽、スポーツなどの企画を計画している。國嶋氏は「(屋上の)公園や館内、ホテルとも連携できるミヤシタパークならではの強みを最大に生かす。今後は他の施設でも同様にメディア化の取り組みを進める」とも明かす。

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NEWS 02

【早稲田繊維研究会】Vol.1“変わりゆくなかで変わらないもの” 流行の速度にどう向き合うか

早稲田大学発のファッションサークル「早稲田大学繊維研究会」は12月7日、科学技術館でショーを開催します。本団体では、さまざまな大学と学部から約100名が集まり、年に一度のファッションショーに向けて、日々活動を続けています。

1949年に創設された本団体は、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦や「ケイスケカンダ(KEISUKE KANDA)」の神田恵介といったデザイナーを輩出し、長い歴史の中で「ファッション批評」を理論の軸に据え、ショーという実践の場で活動してきました。その歩みを継承しつつ、学生という立場ならではの独立した視点と柔軟性を活かし、時代の変化に応答する表現を探り続けています。

今年のショーのタイトルは「それでも離さずにいて」。「変わりゆくなかで変わらないもの」をテーマに、新たな挑戦も取り入れて制作を進めています。本連載では全5回を通じて、公演に向けた取り組みや舞台裏を紹介し、ショーをより身近に、深く感じていただける視点をお届けします。第1回となる今回は、その軸となるコンセプトとタイトル、さらにそれを具体化する服造規定に込めた思いを語ります。

コンセプトは「変わりゆくなかで変わらないもの」

近年、流行のサイクルはかつてないほど加速しています。しかし、それは現代社会の構造がもたらす不可避なものです。学生団体という立場にある私たちが本当に批評するべきは、その速度ではなく、それに対する個人の向き合い方であると考え、コンセプト「変わりゆくなかで変わらないもの」を発案するに至りました。

たとえば、買っては使い捨てるといった刹那的な消費行動や、模倣品の購入、ファストファッションの抱える問題点から目を逸らすことーー変化の速さに無自覚でいるとき、私たちは気づかぬうちに大切なものを見失ってしまうかもしれません。個人の生活においても同様です。環境や人間関係をはじめとして、私たちの日々は変化に満ちており、人はしばしばそれに翻弄されてしまいます。

私たちがこのショーで問いたいのは、対峙する姿勢です。流れに無批判に従うのでも、拒絶するのでもなく、加速する社会のなかで自らの軸を立て、能動的に向き合うこと。変化を前提としつつも、自らが選び取る主体として立つこと。それこそがこれからの世界を生きていく中で必要なあり方であると考え、本コンセプトのもとショーを構成することとなりました。

ショータイトル「それでも離さずにいて」に込めた思い

今年度のタイトル「それでも離さずにいて」には、目まぐるしい変化の中で大切なものをつい見失いそうになるけれど、それでもどうかそれを離さずにいてほしい、という意味を込めています。コンセプトをもとに考案したタイトル案の中から最終候補を絞り、部員内で協議のうえ、本タイトルに決定しました。

タイトルを模索する中で、最も大切にしたのは「伝わりやすさ」です。先にお話したように、今年度はショーをご覧になる方一人ひとりに向けた問題提起を試みています。そのため、問いかけの語法を用いながら、伝わりやすい表現になるよう心掛けました。加えて、本ショーでは携行アイテムの制作を規定として定めているので、それに絡めて「大切なものをつかんで手離さない」といった言葉選びを行いました。また、ひらがなで構成される流動的な文字の流れの中に、「離」という密度の高い漢字をひとつ置くことで、視覚的な印象においても流れの中に立つ毅然とした態度を示しています。

考案は難しくもありましたが、大きなやりがいがありました。意味はもちろんのこと、ニュアンスや語感、字面も含めて、ショーの象徴として相応しいタイトルとなったと感じています。

挑戦としての服造規定
──制約ではなく、表現を導く枠組み

今年度の特徴のひとつとして、服をデザインから製造まで一貫して行う服造に関する規定を設けています。これはデザイナーを縛るための制約ではなく、コンセプトをデザインに反映させる方法を部分的に共有し、全体の方向性を明確にして一体感を生み出す枠組みです。

規定の中で代表的なのが「片手で携行可能なアイテム」の制作です。ルック本体には揺らぎや変化を示す「ぶら下げ・吊り下げ」の要素を取り入れる一方、携行アイテムには動きの生じない構造を求めています。この対比によって「変わりゆくもの」と「変わらないもの」が一つのルックに同居し、コンセプトが視覚的に浮かび上がる仕掛けを施しました。

ただ、ファッションショーの主役はあくまで服であり、小物が前に出すぎることには抵抗がありました。携行アイテムを必須とする規定には葛藤も伴いましたが、コンセプトを効果的に表現する手段として挑戦に踏み切ったことで、今年度ならではの独自性が生まれたと感じています。

こうした葛藤を経て、携行アイテムはルックの中に共存する要素の一つとして位置づけられました。小物が自己目的化することなく、ルック全体の一部として機能することで、大切なものを手に握りしめるというタイトル「それでも離さずにいて」とも呼応します。わたし自身、制作の中で服作りとは異なる難しさもありましたが、この枠組みを介して生まれる工夫や個性が、むしろ作品に広がりを与え、ショー全体をさらに確かなものにすると考えています。

次回は、ショーの世界観を映像や写真に置き換えていくルックブック撮影を取り上げます。“撮影”を通して、どのように「変わりゆくなかで、変わらないもの」を写し出そうとしたのか。構想段階から撮影当日までの準備、そして現場で生まれた瞬間の数々を振り返ります。

■早稲田繊維研究会ファッションショー「それでも離さずにいて」
日程:12月7日
会場:科学技術館
住所:東京都千代田区北の丸公園2-1
団体公式Instagramのプロフィールで近日予約フォームを公開

TEXT:MOMOKO NAGANO、KOHARU YANAGI

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。