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働く場所を見える化すると、いいこといっぱい

「シロ」がオープンした新工場は、丸見えです。

 丸見えって、結構いいことが多いみたいです。まず、それは企業の透明性の証だし、働いている人にとっては見られている緊張感とやり甲斐がモノづくりにつながります。加えて、工場がキレイに保てるそうです。確かに見られている施設で、道具を置きっぱなしにしたり、掃除を怠ったりはできませんよね(笑)。

 工場や工房も、オフィスも、見える化を進めると、良いことがいっぱいありそうです。「WWDJAPAN」も、毎週一度の校了日にオフィスをライブ配信でもしてみましょうか(笑)?

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

「シロ」がモノ作り現場を包み隠さず見せる“みんなの工場”をパトロール オリジナルのフレグランス作りに挑戦

 シロの体験型複合施設「みんなの工場」が28日に北海道砂川市でオープンした。場所は江陽小学校跡地で、敷地面積が2万332平方メートルと広大な敷地の中に佇む。同施設は「シロ(SHIRO)」の商品を製造する工場に、ショップやカフェ、キッズスペース、ラウンジを併設。建築家アリイイリエ・アーキテクツと共に、地域住民とディスカッションしながら設計計画を立案し、「子どもも、大人も、働く人も、くつろぐ人も、動物や植物にとっても、“みんなの居場所”に」なることをイメージした。100年後の未来を見据え、「“みんな”で時間をかけて完成させていく」(福永敬弘シロ社長)と、地球環境に配慮した循環型の施設を目指す。常にアップデートが止まらない「みんなの工場」は、訪れるたびに新しい発見がありそうだ。そこで、「グランドオープンはない」という“現在”の「みんなの工場」をレポートする。

自然と共存する「みんなの工場」

 「みんなの工場」は、JR砂川駅から車で10分の場所に位置する。砂川駅からは無料のシャトルバスも出ており、近隣からタクシー(北星三星交通など)を呼ぶことも可能だ。駅前から車で向かうと、江陽小学校で使われていた学校門が見えてくる。「これからも子どもたちが集う施設になってほしい」という思いから、正門と記念碑を残した。駐車場から見渡せる雄大な景色も圧巻で、この地では高い山を「男山(ピンネシリ)」、低い山を「女山(マツネシリ)」と呼ぶという。

 ピンネシリを横目に砂利道を通り抜け、同施設に足を踏み入れると、窓からたっぷりの自然光が降り注ぐ解放感のあるホールが出迎えてくれる。入り口の案内所では、施設のマップやシロが発行するフリーペーパー「シロ ペーパー」を貰うことができ、反対側には、同社のスタッフがおすすめする砂川周辺のカフェやラーメン、食堂などの「おでかけカード」を自由に貰えるコーナーを用意する。

全面ガラス張りの工場で
「モノ作りの醍醐味を伝える」

 同施設の目玉は、全面ガラス張りの工場でシロが誇る“モノ作り”を見学できることだ。研究開発室、素材処理室、調合室、充填室、包装室の5つの空間で構成し、手作業で行われている商品の製造工程を見ることが可能。「子どもたちにモノ作りの醍醐味を伝えたい」という思いから、“工場を開く”ことを実現した。日ごとに製造する商品が違うため、何度訪れても新しい体験や発見を提供してくれる。なお、公式サイトで製造スケジュールを掲載しており、出掛ける前に確認ができる。

 研究開発室と素材処理室の前にあるキッズスペースは、天井部分にジャングルネットを用意。子どもはもちろんのこと、大人も登ることができ、みんな「本気で」遊ぶことを提案する。それぞれの時間を安心して過ごせるように、地上から遊ぶ様子を見守ることができる。さらに、遊ぶ声が響き過ぎないように、天井にはショップスタッフの古いユニフォームをアップサイクルして作った吸音材を設置した。また、採れたての自然素材を扱う素材処理室の香りが感じられるように、ジャングルネットの天井付近に排気口を設置。ふんわりした優しい香りを楽しめる。一部の壁を黒板仕様にし、絵や文字を描いて遊べるようになっている。

「みんなの工場」限定の
“フルーツブーケ”はお土産にもおすすめ

 サークル状に配置されたショップは、「シロ」のフルラインアップに同ショップの限定商品や、スタッフが全国で出合ったおすすめのフードなどをそろえる。黄色のパッケージが目を引く同ショップ限定のフレグランス“フルーツブーケ”は、砂川の地で出合ったというハスカップやりんご、ぶどうなどのフルーツからインスパイアされた香りにフローラルが融合し、「フルーツの花束」を彷彿とさせる。ヘアバーム(税込3410円)、オードパルファン(同4180円)、フレグランスディフューザー(同5720円)の3種を販売する。

「シロ」の8つの香りを使って
オリジナルの香り作りを体験

 ショップ内にある「ブレンダーラボ」では、世界に一つだけの自分だけの香り“マイフレグランス”を作ることができる。まずはボトルを選ぶところからスタート。商品のリニューアルなどで使用できなくなったボトルを採用した「エシカルボトル」(40mL、同4180円/80mL、同5170円)とスクエアで限定仕様の「オリジナルボトル」(30mL、同4180円/80mL、同5830円)の4種からセレクト。ボトル選びが終わると隣のテーブルに移動し、ブレンドを決めるために8つの香りをテスターする。この8つの香りは、定番で販売しているフレグランスの“サボン”“ホワイトリリー”“キンモクセイ”“ホワイトティー”“アールグレイ”の5種に同店限定の“フルーツブーケ”に加え、過去の限定フレグランスから季節に合わせた香りを2種用意する。

 香りの強さも選ぶことができ、しっかり香らせたい人は「オードパルファン」タイプ、ふんわり香らせたい人は「ボディコロン」タイプから選べるようになっている。ここで注意したいのが、ボトルのサイズと香りの強さに応じて決められたスポイト回数(香料の容量)を確認すること。まずはその回数を把握してから、組み合わせたい香りをイメージするのがポイント。なお、ブレンドしたい香りをイメージするのが難しい人には、事前にブレンドした見本も用意してあるので安心だ。

 ブレンドのイメージが固まったら、次の工程で香料をブレンドする。香料をスポイトで吸い上げ、容器に入れる作業が終わったら、アルコールを注入。最後に香料の配合を自分で記したシールを貼って完成だ。所用時間は約15分と手軽に体験できる。なお、「ブレンダーラボ」は予約不要で、最終受付は18時30分。

「ローレル」時代のアーカイブと
1300冊の本が並ぶラウンジ

 ラウンジエリアには、同社のスタッフが選書した約1300冊の本が並ぶブックシェルフに階段状のベンチを設置。文学からビジネス書、漫画まで幅広いジャンルを扱う。特にスタッフが思い入れのある本にはコメント付きで紹介されている。全て自由に読むことができ、気に入った本があれば購入することも可能。奥には荷物を預けられるコインロッカーと授乳室、トイレを設置する。調合室の前の壁には、「シロ」の前身である「ローレル(LAUREL)」のアーカイブ商品を並べ、これまでの変遷を伝える。

地産地消のカフェで
北海道の旬の味に舌鼓

 「シロ カフェ」は、札幌市のイタリアンレストラン「TAKAO」の高尾僚将シェフ協力のもと、直接生産者を訪ねて出合った自然素材や、商品に使われている素材の魅力を料理を通じて伝える。メニューは、北海道産小麦にこだわったモチモチした生地が特徴の同店限定ピザ(税込1210円〜)や焼きカレー(税込1177円〜)、パンケーキ(税込1056円〜)、スムージー(税込各814円)など。テラス席や半個室のグループ席も用意し、窓からは雄大な景色を一望できる。

今後は宿泊事業に本格参入

 2024年春には、道内の夕張郡長沼町に一棟貸しの宿泊施設「メゾンシロ(MAISON SHIRO)」のオープンを控えている。宿泊事業への本格的な参入に先駆け、昨年5月にはアメニティ開発が運営する「砂川パークホテル」の事業を取得した。今井浩恵シロ会長は、「これ以外にも日本全国各地にアイディアの種を蒔いている。いろんなきっかけで出会った人たちと一緒に、その芽を育てていきたい」。

■みんなの工場
時間:10:00〜19:00(不定休)
工場/10:00〜17:30 (日・祝日休み)
ショップ/10:00〜19:00 (ブレンダーラボ最終受付18:30)
カフェ/11:00〜19:00 (ラストオーダー18:30)
場所:江陽小学校跡地
住所:北海道砂川市豊沼町54-1

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NEWS 02

「エルメスのプティ アッシュ」展が大阪で開催 各部門の“不要”素材に職人とアーティストが命を吹き込むファンタジー 

 「エルメス(HERMES)」は、展覧会「エルメスのpetit h―― プティ アッシュ」を4月29日から5月18日まで大阪中之島美術館で開催する。展示のほか、予約制フロアでは購入できる一点物も多数登場する。「プティ アッシュ(petit h)」は、エルメス家第6世代のパスカル・ミュサールが2010年に設立した部門(メチエ)であり、現在はゴドフロワ・ドゥ・ ヴィリユー=クリエイティブ・ディレクターのもと、30人のチームで運営している。

 「プティ アッシュ」のモノづくりは素材から始まる。他の部門で使わなくなったレザー、シルク、クリスタル、陶器、馬の毛、金属といった素材を職人やアーティスト、デザイナーがあらゆる方法で組み合わせ、調整し、対話を重ねて製作する。結果、思いもよらない形と素材の出会いが生まれるという。「エルメス」はそれを「使われず埋もれかけたさまざまな素材に命を吹き込み、“役割”を与える場所」と表現している。美しさと機能性、上質な素材、卓越した職人仕事、そして遊び心を創造力でもってひとつにする、まさに「エルメス」らしさを凝縮した存在だ。

 28日に開いた内覧会で有賀昌男エルメス ジャポン社長は、日本における3度目の「プティ アッシュ」開催について「念願だった」と語り、「すべての素材に価値があると考える『エルメス』と、すべてに魂が宿ると考えてモノを大切にする日本の文化には共通点があると思う。ぜひここに来て、物に宿る価値を一人一人の観点で探し出してほしい」と話した。

大きな鯉のぼりの中はまるでパリの素材庫

 会場は2層で構成され、2階の展示エリア中央では大きな鯉のぼりが来場者を迎える。トンネルをくぐるように中に入るとそこにはパリの「プティ アッシュ」のアトリエの素材庫が再現されている。プレタポルテやレザーグッズ、家具、ジュエリーなど各部門から集められた廃棄予定のパーツや生地がところ狭しと並んでいる。ヴィリユーは「アーティストたちはこの素材庫に入ると皆目を輝かせ、驚くほどの速さで自分のお気に入りの素材を見つけ出す。その“反応力”にはいつも驚かされる」と振り返る。

 また、鯉のぼりの周りでは「プティ アッシュ」がどのような素材、技術、そして発想から生まれるかを図解とともに解説。「プティ アッシュ」の特徴は、アートのような存在でありながら必ず実用的である点だ。欠けたティーカップから作った置時計“ティータイム”や、水着の素材を使ったマスキングテープ、プレタポルテのボタンから生まれた“塩入れ”など日常使いのアイテムがそろう。ヴィリユーは「ボタンの穴を見たアーティストは“こんなに小さい穴なら塩入れにぴったり”とひらめいた。アーティストの目と、そのアイデアを具現化する職人の技の両方があるから実現している」と説明する。

予約制フロアでは数え切れないオブジェ。購入も可

 1階ホールは「プティ アッシュ」の完成品の販売エリア(要予約)で、数え切れない多種多様なアイテムが並ぶ。開化堂との共創など、日本のクラフトやアーティストとの協業も多い。来場者を迎える大きな馬のオブジェは、ねぶたの技法を採用した。

 会場の空間デザインを担当したのは、長年「プティ アッシュ」の活動に関わってきたアーティストの河原シンスケだ。パリを拠点とする河原は、独自のジャポニズムを感じさせる表現で知られており、今回は舞台美術のような書割によって「プティ アッシュ」のための空間を描き、来場者が俳優となり物語に入るこむような演出を設けた。

 制作時はいつも物語を創るところから始めるという河原は、今回は鳥獣戯画からヒントを得て物語を設定した。猿が随所に登場するのは、彼らが案内役だからだ。「猿は日本ではポピュラーだが、フランスの生活では身近な存在ではない。日本で開催する展覧会の案内役を猿が担い、エルメスの象徴である馬、そしてカエルやウサギをこの世界へと案内することにした」と河原。そんな物語を念頭に会場内を進むとより一層楽しい。

 同展の説明に“サステナブル”という言葉はないが、その言葉が広く使われる前に始まり継続してきた「プティ アッシュ」の活動は、これぞサステナブルなモノづくりと言えるだろう。

■「エルメスのpetit hープティ アッシュ」
会期:2023年4月29日(土・祝)~5月18日(木)
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1大阪中之島美術館
開催時間:
・2階多目的スペース 展示エリア(入場無料) 10:00~18:00
・1階ホール 販売エリア(入場無料 / 要予約) 10:00~18:00
・2階芝生広場 プティ アッシュ カフェ 11:00~18:00
※展示エリアは混雑状況により入場制限
※プティ アッシュ カフェは天候により中止の可能性あり

PHOTO:MASASHI ASABA
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NEWS 03

京都・祇園の町屋に「ヴァレクストラ」が新コンセプトショップ イタリアのバッグ&家具が日本家屋や茶室に並ぶ

 イタリアのバッグブランド「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」は26日、京都・祇園の町屋に体験型のショップ「カーサ ヴァレクストラ」をオープンした。大丸松坂屋百貨店が大丸創業300周年を記念して立ち上げた町家プロジェクト「大丸京都店 祇園町家」に出店。この町屋にはかつて「エルメス(HERMES)」ガポップアップストアをオープンしたが、「ヴァレクストラ」は恒常的な店舗を構える。

 京都・祇園の花見通にある元2階建ての茶室を改装した「カーサ ヴァレクストラ」は、1階がショップ、2階が茶室やバースペース。いずれのフロアにも「カーサ ヴァレクストラ」の名前の通り、ジャンフランコ・フラッティーニ(Gianfranco Frattini)やガブリエラ・クレスピ(Gabriella Crespi)、フランコ・アルビニ(Franco Albini)、ルイジ・カッチャ・ドミニオーニ(Luigi Caccia Dominioni)ら、イタリアの著名な建築家やインテリアデザイナーによるアーカイブや復刻の家具を揃えた。暖簾をくぐると、右には地元の庭師が木や石を配置した小さな庭。左はガラス張りの店舗で、著名な家具の上に「ヴァレクストラ」のバッグや革小物、この店舗限定のシルクスカーフなどが並ぶ。

 1960~70年代のビンテージなどを眺めながら2階に上がると、伝統的なミラノのバーを思わせるプライベートバーが現れる。5月以降は京都市内のホテルが監修するクラシックなイタリアンドリンクを提供し、オーダーメイドを受け付けるプライベートサロンの役割を担う。その奥には、調度品として「ヴァレクストラ」のトランクを積み上げた茶室という空間だ。

 グザヴィエ・ルジュー(Xavier Rougeaux)最高経営責任者は、「『カーサ ヴァレクストラ』を通して促したいのは、日本とイタリアの対話。『ヴァレクストラ』の商品が並ぶ京都の空間は、巨匠たちによるミラノのデザインと、永続的な日本文化が融合する場所にしたかった。対話を促すのは、2階のバーや茶室などのインティメイト(親密な)空間。家具と『ヴァレクストラ』のバッグや革小物を通して、プロダクトに元来備わる本質的な美、エンジニアリング・ビューティを発信したい」という。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。