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今やお子さまと神戸嬢だけのものではない!
子どものころ、「ファミリア」のクマちゃんマークのお洋服は憧れでした。いわゆる“神戸嬢”的テーストの女性が「ファミリア」のトートを大人になってもサブバッグとして使い続けている(神戸の女子中高生の間ではサブバッグの定番になっている)という話は見聞きしていましたが、そうした状況を超え、今やこんなにも大人向け雑貨が充実したブランドになっているんですね!
すごいと思うのは、「元々ファンだった」「憧れだった」という層を取り込むだけでなく、「大人になってからブランドを知った」という層もSNS戦略でとらえていること。ニッチターゲットのブランドが一皮むけて成長を目指す際、非常に参考になる手法と思います。
半期で雑貨の売上高が8億円増 「ファミリア」の大人雑貨はSNS奏功で若い世代に人気高まる

子ども服ブランドの「ファミリア(FAMILIAR)」は11月19日まで、渋谷スクランブルスクエア2階で雑貨を中心としたポップアップショップをオープンしている。定番の手提げバッグや巾着袋などに加え、限定アイテムとして、トラベルグッズブランドの「トゥーアンドフロー(TO&FRO)」との3サイズ計54デザイン展開のポーチと、テーブルウエアブランド「ユミコ イイホシ ポーセリン(YUMIKO IIHOSHI PORCELAIN)」とのアップサイクル食器を発売。初日オープン前には、30人以上が列をつくり、その後も入場を待つ列が絶えない盛況ぶりだった。
「フラグメント」や「ミュベール」との多彩なコラボが話題に
「ファミリア」はここ数年、30代をコアターゲットにした大人向け雑貨に注力している。これまでに、藤原ヒロシ主宰の「フラグメントデザイン(FRAGMENT DESIGN)」、ニューヨーク生まれのバッグ「レスポートサック(LESPORTSAC)」、ラバーブーツで知られる英ブランド「ハンター(HUNTER)」に加え、日本の「ミュベール(MUVEIL)」や「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」といった同世代に人気のブランドとの多彩なコラボレーションがSNSを中心に話題を集めた。「ファミリア」のかわいらしさや懐かしさの中に、トレンド性やスペシャル感のある大人雑貨が、ブランドの新境地を開いている。
今では約6割を雑貨が占めており、今年上半期の売上高では、主力とする子ども服の横ばい成長に対し、雑貨は8億円増を記録。子ども服を主に置く常設店とは別に、関西や関東の駅ビル商業施設など、若い世代とのタッチポイントとなる場所を中心にポップアップショップを積極出店していることで、SNSやオンラインストアへの流入が急増。インスタグラムの公式アカウントは、この一年で10万フォロワーが増えたという。
SNS奏功のきっかけはコロナ禍
「ファミリア」がSNSマーケティング奏功の転機となったのは、創業70周年を迎えた2020年のこと。コロナ禍で緊急事態宣言が発令された年だが、アニバーサリー用に製作していた7つのテーマを掲げた7つのコレクションを予定通り発売。おうち時間のSNS利用率が高まったこの時期に、7回にわたり周年の連動企画を発表したことで、あらためてブランドストーリーを認知させることにも成功したという。以来「ファミリア」はデジタル戦略を強化し、インスタライブも積極的に実施している。
今回のポップアップショップでは、家族で代々「ファミリア」の子ども服を着ていたという40代もいれば、SNSでコラボ商品に関するニュース伝いにブランドを知った30代、ポップアップショップを通りがかって思わず入店した20代もいた。「ファミリア」が主戦場としてきた百貨店の高層階子ども服売り場ではリーチできなかった新たな層との出会いが広がっていることがよくわかる。
小山宏美・営業部部長は、「幅広い利用者が多い百貨店といえど、われわれが店舗を置く上層階を訪れる方は、ファミリー層または目的買いのお客さまといった限られた層になる。若い層が行き交うファッションビルの1階などでポップアップを展開することで、『ファミリア』の子ども服を知っていても雑貨で新たな魅力を再発見してもらえたり、ブランドを全く知らない若い層の方に認知してもらえたり、これまでとは違う可能性の機会が増えている。新たなお客さまとの出会いにより、主力の子ども服に関しても、スタイルの楽しみ方や持続可能の観点など見直しを図る時期にもあるのだろうと検討している。ただし、単サイクルで生み出してきたストーリー性のあるデザインやていねいなモノ作りについては、継続していく」と話す。来年は創業75周年を迎える「ファミリア」の次なる一歩に注目が集まる。
ベルリン・アート・ウィークで見たアートとファッションの交錯 国内外の気鋭ブランドが集結

ベルリンのアートシーンはファッションシーンと密接な関係にある。夏と冬の年2回開催されているファッションウィークは、ドイツ拠点の新進気鋭デザイナーを育成することを主な目的としているが、アートウィークはドイツ国内だけに限らず、インターナショナルブランドがアートと融合したインスタレーションや期間限定のポップアップ、ローンチイベントなど幅広く開催される。
そんな「ベルリン・アート・ウィーク」が今年の秋に開催され、100以上のギャラリーやミュージアムが参加し、300以上のエキシビジョンやイベントが行われ、13万人以上の来場者を記録した。
アンドレアス・ムルクディスのプロジェクトで日本のブランド「シハラ」が抜擢

ベルリンのコンセプトショップ「アンドレアス ムルクディス(ANDREAS MURKUDIS)」では、毎年アートウィークに合わせて、新規で取り扱うブランドのローンチを兼ねたグループエキシビジョンを開催している。今年は、2024年春夏コレクションよりルイーズ・トロッター(Louise Trotter)がデザイナーに就任した「カルヴェン(CARVEN)」や日本のジュエリーブランド「シハラ(SHIHARA)」のローンチ、コペンハーゲン発のデザインマガジン「アークジャーナル (ARK JOURNAL)」、ベルリン拠点のドイツ人アーティスト、クラウディア・ヴィーザー(Claudia Wieser)と家具ブランド「e15」とのコラボレーションによるテーブルコレクションの展示、1959年のニューヨークの若者を描いたブルース・デビッドソン(Bruce Davidson)の「ブルックリン・ギャング」に焦点を当てた写真展などが店舗を含めた3つのスペースにて開催された。
同ショップは、創設者で全てのバイイングを手掛けるアンドレアス・ムルクディスの独自の審美眼によって厳選されたブランドやプロダクトで構築されており、業界からのファンも多い。特に、近年は、日本のブランドやプロダクトに力を入れており、アートウィーク初日のローンチイベントでインスタレーションやコラボレーションプロジェクトを発表している。今年は「シハラ」が抜擢され、デザイナーの石原勇太が店頭に立ち、オリジナル什器やガラスケースに陳列されたミニマルなゴールドジュエリーや「パヒューマーH(Perfumer H)」設立者で調香師のリン・ハリスとのコラボレーションパフュームなどが披露された。
今月には、浅川喜一朗が手掛ける「シュタイン(SSSTEIN)」の取扱いもスタートした「アンドレアス ムルクディス」では、今後も他では見られない希少な日本ブランドが増えていくことだろう。
世界のギャラリーが一堂に集結したアートフェアで見せるファッション
「毎年テンペルホーフ空港跡地の格納庫を会場に開催されるのが「ポジションズ・ベルリン・アートフェア(POSITIONS Berlin Art Fair)」だ。世界24カ国から111のギャラリーが出展し、今年は特に韓国のアートシーンに焦点を当てたフェアということもあり、アジア人作家の作品が目立った。1万2000平方メートル、16メートルの天井高という敷地面積を誇り、飛行場を見渡すことができる開放的かつ非日常的な会場に設置されたオープンブースと作品点数の多さに圧倒される。
同フェアは、国際的なコンテンポラリーアートギャラリーのプラットフォームとして認知されているが、その一環として同会場内で開催されたのが「ファッション・ポジションズ(FASHION POSITIONS)」だ。第6回目となる今年は、「ファッションとアートのダイナミックな交差点に光を当てる」をコンセプトに、ベルリン拠点のファッションデザイナー20人が参加し、ギャラリー同様に各ブランドのオープンブースが設置され、作品が展示された。
台湾をルーツに持つ「#ダムール」は、生産過程で出る端材や余ったパーツを靴にコラージュしたアップサイクル作品を発表。デザイナーのダマー・チェンは「ハイファッションとアートをシームレスに融合させ、イギリスの伝統的な食事スタイル“ハイティー“の心遣いや創造性からインスピレーションを得た作品です」と述べている。

ベルリンのミッテ区に路面店を構える「クルーバ (CRUBA)」は、アカデミー賞授賞式のレッドカーペットでドナータ・ヴェンダースが着用し、話題となったVHSテープのアップサイクルドレスを展示。来場者の多くが足を止め、じっくり観察する姿や写真撮影する姿も見られた。また、会場内には期間限定のポップアップストアが開設されており、出展ブランドのコレクションの一部や現行の商品を購入することが可能となっていた。

「ファッション・ポジションズ(FASHION POSITIONS)」は、独立系デザイナーの芸術的なアプローチによって認知度を高めることを目的としており、デザイナーを支援し、チャンスの場を与えることによって、ベルリンのファッションシーンがクリエイティブで革新的であることを世界に伝えたいと考えている。
公式発表によると、同フェア全体の来場者は3万人を記録した。ギャラリストやプレスといった業界関係者だけに向けたフェアではなく、一般のアートコレクターが作品を購入するための場でもある。日本のギャラリーやアーティストも多数出展していたが、価格設定も良心的なこともあり、売れ行きも好調だったようだ。「ファッション・ポジションズ(FASHION POSITIONS)」に出展された作品もアートのひとつとしてコレクターの目に止まり、ブランドやデザイナーの背景を知ることによって、より多くの人に広がっていくきっかけになることが理想の形ではないだろうか。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。