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マッチズ終了 ラグジュアリーECは難しい

英ラグジュアリーECのマッチズ(旧マッチズファッション)が終わります。下の記事内にもある通り、高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)が経営破たんの瀬戸際にあったのも記憶に新しいところ。韓国の大手EC企業クーパンが買収したファーフェッチからは、ケリングが離脱を表明しており、“ファーフェッチがファーフェッチであり続けられるか?”は余談を許さない状況です。ラグジュアリーECって、難しいんでしょうか?ラグジュアリーは自社でコントロールしたい意向が強いし、ラグジュアリーではリアル店舗を好む傾向も根強く残ります。

カナダのSSENSEは、オンラインコンテンツを強化しながら、母国ではOMOも強化しています。日本代表はZOZO。両社の動向は、ラグジュアリーECの今後を占うでしょう。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

英小売フレイザーズ、傘下の高級ECマッチズを終了 買収からわずか2カ月半

英小売のフレイザーズ・グループ(FRASERS GROUP以下、フレイザーズ)は3月7日、傘下の英ラグジュアリーECマッチズ(MATCHES、旧マッチズファッション)の事業を終了することを明らかにした。同社は2023年12月、ラグジュアリー分野を強化するため、マッチズを英投資会社アパックス・パートナーズ(APAX PARTNERS)から5200万ポンド(約98億円)で買収したばかりだった。

フレイザーズがロンドン証券取引所に提出した文書によれば、「マッチズは事業計画の目標に届かないことが続き、損失が積み重なっていた。事業再建にはあまりにも多くの変更が必要であることが分かり、それにかかる資金は実現可能な範囲を超えている」ため、管財人の管理下に置くことを決断したという。

フレイザーズは、1982年にロンドン郊外にあるスポーツ用品店からスタート。後に名称をスポーツ ダイレクト(SPORTS DIRECT)に変更し、買収などによって事業を拡大。創業者のマイク・アシュリー(Mike Ashley)は大富豪となった。2018年には、破綻した英老舗百貨店ハウス・オブ・フレーザー(House of Fraser)を買収し、19年12月から現在の社名となっている。現在、スポーツ ダイレクトのほか、紳士服の「ギーヴス アンド ホークス(GIEVES & HAWKES)」などアパレルブランドを複数保有しているが、23年10月には傘下の英ファストファッションブランド「ミスガイデッド(MISSGUIDED)」をグローバルSPAの「シーイン(SHEIN)」に売却している。

マッチズは、1987年にロンドンでオープンしたセレクトショップ。2007年にオンラインストアを始め、業績を伸ばした。17年にアパックス・パートナーズが買収。ラグジュアリーブランドを含め、およそ650のブランドを取り扱っているが、近年は赤字が続いていた。なお、マッチズの23年1月通期決算は、売上高が1.7%減の3億8010万ポンド(約722億円)で、純損失は前年の3980万ポンド(約75億円)から7090万ポンド(約134億円)へと大幅に拡大している。

今回のマッチズの事業終了は、ラグジュアリーECビジネスの難しさや時流の変化を示す1つの証左だろう。23年12月15日には、高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)が経営破綻の瀬戸際にあることが明らかになり、18日に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収を発表。また、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)は、傘下のラグジュアリーEC大手ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)の株式の47.5%をファーフェッチに売却する予定だったが、ファーフェッチが買収されたことを受けて取引を中止。現在、YNAPの株式を100%売却することも視野に入れて新たな買い手を探しているという。

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NEWS 02

ビヨンセによる“カウボーイ・コア”がウエスタンウエア界に激震 「LV」効果でトレンド確実か

ビヨンセ(Beyonce)による“カウボーイ・コア”ファッションが、ウエスタンウエア界に激震を与えている。ビヨンセは2022年7月、6年ぶりにリリースしたアルバム「ルネッサンス(Renaissance)」で、磨き上げたボディーを露出し馬に乗るグラマラスな姿をジャケットで公開。大成功を収めた「ルネッサンス・ワールド・ツアー」でもステージ衣装にカウボーイハットやウエスタンブーツを着用するなど、彼女のニュールックに注目が集まっていた。

そんな中、今年2月4日(現地時間)にロサンゼルスで開催された第66回グラミー賞の授賞式に夫のジェイ・Z(Jay Z)と現れたビヨンセは、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)=メンズ・クリエイティブ・ディレクターによる「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のカスタムルックに身を包んだ。そしてアクセントにしたのが、「ステットソン(STETSON)」の白いカウボーイハットだ。ビヨンセの私物だったこともあり、「ステットソン」も驚きを隠せなかったという。

また、11日の第58回スーパーボウルでは「ルネッサンス」の第二章をサプライズ発表。CMでカントリー調の新曲を流し、ビヨンセのウエスタンムードはさらに高まりを見せた。新曲「Texas Hold'em」のジャケットでも、「ステットソン」の黒いハットを着用。13日の「ルアール(LUAR)」のファッションショーでは、「ガウラヴ グプタ(GAURAV GUPTA)」のキラキラブレザーに合わせてカウボーイハットをセレクトした。

ビヨンセは21年、「アディダス(ADIDAS)」によるコラボコレクション「アディダス x アイビーパーク(ADIDAS x IVY PARK)」第4弾でウエスタンスタイルをオマージュした「アイビーパーク ロデオ(IVY PARK Rodeo)」を発表していた。カントリーミュージシャンとのコラボレーションなども披露してきたビヨンセにとっては、大きなインスピレーションの一つといえる。

ピンタレスト(Pinterest)によると、“Cowgirl aesthetic”(カウガール風)のワード検索が過去12カ月で181%増加し、“Western outfit ideas”(ウエスタン衣装のアイデア)は166%、“Country glam outfit”(カントリーグラム風の衣装)は同期間に200%以上と急増した。

「ステットソン」マーケティング部門のタイラー・ソレンソン(Tyler Thoreson)=バイス・プレジデントは、「私たちの原動力となっている価値観、つまりアメリカン・クオリティーと時代を超越したスタイルへのこだわりは、その時々の流行を超越したものである。とはいえ、“カウボーイ・コア”のトレンドが、私たちのすばらしいストーリーをより多くの人々に伝えるチャンスを与えてくれるのであれば、とても喜ばしいことだ」と語った。

約400店舗を展開するウエスタン小売店のブート・バーン(Boot Barn)のイシャ・ニコル(Isha Nicole)=クリエイティブ・ディレクター兼マーケティング担当上級副社長は、今後、帽子だけでなく、ポロタイやケンタッキータイ、ウエスタンベルトのバックルなどの売り上げアップも予測している。

“カウボーイ・コア”は、「ディーゼル(DIESEL)」や「バルマン(BALMAIN)」「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」といったブランドが提案したことで、ここ数年のランウエイトレンドでもあった。今年1月には、ファレルによる「ルイ・ヴィトン」が2024-25年秋冬コレクションで“ラグジュアリー・ウエスタン”を打ち出し、話題となったばかり。ビヨンセから火が着いた“カウボーイ・コア”や、ファレルの「ルイ・ヴィトン」により、今年はさらにウエスタンブームの波が押し寄せそうだ。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。