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東コレが話題豊富です
東コレこと、24年春夏の「楽天 ファッション ウィーク 東京」が月曜から始まっています。長年、開催時期で模索が続く東コレですが、ニューヨークやロンドンよりも早い8月開幕で海外からも注目を集め、この時期で定着するのか期待したいですね。
今季の東コレ、昨日のこのメールの紹介記事にあったように、ウィメンズブランドの注目株「カナコ サカイ」が「JFW ネクスト ブランド アワード」の受賞でショーデビューしたり、「ア ベイシング エイプ」が設立30周年記念でウィークの冠スポンサー楽天のサポートで参加したりと、話題豊富な印象です。コロナが落ち着き、ショー会場にも活気が戻っているようです。
三原康裕の愛弟子「カミヤ」が大舞台に込めた思い ブランド改名と初の東コレ参加
メンズブランド「カミヤ(KAMIYA)」が、ブランド初のファッションショーを28日に行った。同ブランドは「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」を運営するソスウのブランドで、2016年に「マイン(MYNE)」の名で始動し、23年春夏シーズンに「カミヤ」に改名した。新たなブランド名は、ディレクター神谷康司の名前から採用している。
神谷ディレクターは1995年生まれ、愛知県出身。高校卒業後に販売員としてファッション界でのキャリアをスタートさせ、2016年に大阪の「マイン」直営店のスタッフとしてソスウに入社した。その後、東京店の店長などを経て、18年にブランドのディレクターに就いた。
当時の神谷ディレクターは、生産・企画は未経験だった。しかし、「お前しかいない」と三原社長に指名されたという。それまでの同ブランドは、グラフィックや色使いを売りにしたストリートウエアだったが、神谷ディレクターは色落ちやクラッシュ加工など、ビンテージ風のムードを加え、ブランドに新たな個性をもたらした。現在は東京・中目黒に直営店を構え、取り扱いアカウントは約30と堅調なビジネスを続けている。
ブランドの改名は、「よりパーソナルなクリエイションに挑戦するため。ビジネスに本腰を入れるため。そして、その覚悟を決めるため」と神谷ディレクターは言う。「当初はブランドらしさと自分らしさのバランスで苦労することもあった。長く向き合ってきた結果、今、ようやく胸を張って自分のブランドだと思えるようになった」。ショーは1年前に、改名を決断したタイミングで計画したという。「ブランドを知っている人にも、知らない人にも、これからの『カミヤ』の姿勢を感じてもらえたら」。
師匠から継いだエンタメ精神
会場は国立競技場の大型駐車場。広々とした空間の端に、ブランドロゴを乗せたモニュメントを2つ置いた。観客の多くは、モニュメントの間からモデルが登場すると思っただろう。しかし、大きなBGMが流れてショーがスタートすると、トラックがモニュメントをぶち壊し、貫通した穴からモデルが登場した。師匠である三原デザイナーの系譜を感じる、サプライズ演出だった。「変える部分と変えない部分」
ショーに挑み、初めて見えた景色
一方で、ブランドの新たな挑戦として、カジュアル一辺倒にならない工夫も行った。クラッシュニットはハイゲージのものをレイヤードして味付けしたり、ワークパンツはナイロン素材で機能性を盛り込んだり。強みの加工技術も進化させ、ナイロンとポリエステルの混紡生地を二浴染めした自然な色落ちや、真っ白のレーヨンをシャツやパンツに縫製した後、黒やオレンジで製品染めし、その上からブリーチして色落ちさせるテクニックなどを取り入れた。フィナーレでは雪を降らせて、ドラマチックに演出した。
ランウエイ後に神谷ディレクターは、「ショーに挑むことで始めて気づくことも多かった」と話した。「ブランドとして変える部分と変えない部分、両方を意識して、自分たちにしかできないものづくりを追求していきたい」。さらに大きな収穫は、ファッションをピュアに楽しむ心を再発見したこと。「とにかく楽しかった。ファッションのワクワクを再認識できた。チームとともに、新しいことを吸収して、ステップアップしていきたい。がむしゃらにファッションを楽しんでいた、あの頃のように」。
「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」
舟山瑛美デザイナーによる「フェティコ(FETICO)」が28日、2024年春夏コレクションのランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で行った。過去2シーズンのショーはアワード受賞による支援での開催だったが、今回はブランド独自でショーを実施。公式会場の渋谷ヒカリエを離れ、東京・品川の寺田倉庫へとキャパシティーを拡大した。
夜8時半のショーには多くの来場客が私物の「フェティコ」の服を着用して集まっていた。会場は白いジョーゼットのカーテンで覆われており、ショー前までは赤いライトに染まっていた。席には「DO NOT DISTURB」と書かれた、ホテルのドアノブに掛けるカードが置かれており、この「邪魔をしないで」という意味を持つ言葉が今季のテーマになった。
「DO NOT DISTURB」に込めた思い
“自由に生きる女性を邪魔しないで”
コレクションの出発点は、舟山デザイナーが今年3月に訪れたパリでの所感にあった。「東京ファッションアワード」受賞の特典で、パリでの展示会を開くチャンスを得た彼女は、4年ぶりの海外渡航である気付きがあった。「旅先で解放感を得たことで、日常ではいかに抑え込んで生きているのかを考えるきっかけになった。周りには性別や年齢、肩書きなど、他者から見られる視点を気にする人も多い。でもそれは、心地良く生きるためには必要のないこと」と舟山デザイナーは言う。「ファッションだけでも身に付けたいものを着て、自分らしさを大切にすれば、人生はもっと豊かになるはず。自由に生きようとする女性を邪魔しないで」。
ソフィ・カルの「HOTEL」から
ノスタルジックな色や柄を抽出
インスピレーション源の一つが、舟山デザイナーがパリ出張中に手に取ったフランスの現代美術家ソフィ・カル(Sophie Calle)の写真集「THE HOTEL」だった。同作品はカルがホテルで働きながら宿泊者の客室を記録するという実験的な一冊で、他者のプライベートな空間を覗くスリルと、ホテルのノスタルジックで華やかなインテリアを楽しめる。今季はホテルの壁紙の花柄や木製家具の色やモチーフをはじめ、ベッドフレームやカーテンの装飾などの要素を抽出し、あらゆるアイテムに彩りを加えた。
フェイ・ウォンの
挑発的であどけない雰囲気
また香港のシンガーソングライターで俳優のフェイ・ウォン(Faye Wong)を今季のミューズに選んだ。彼女は、ウォン・カーウァイ(Wong Ka wai)監督作品「恋する惑星」(1994年)でヒロインを演じ、アジアン・ポップスの女王として一世を風靡した人物だ。「フェティコ」はフェイ・ウォンが1990年代にまとったアバンギャルドなステージ衣装と、当時の空気感のあるミニスカートなどをオマージュした。
またソフィ・カルの「THE HOTEL」のアイデアとも融合し、 “フェイ・ウォンがツアー中にホテルで過ごしているときの服”を想像した、パジャマシャツとパンツのセットアップやニットドレスなども提案した。
アクセサリーも充実
初のバッグとサングラスが登場
今季はアクセサリーも拡充。「フェティコ」初のバッグ2型と、日本のアイウエアブランド「ブラン(BLANC)」とのコラボレーションによるサングラスが新登場している。
シューズは、ラインストーンとスタッズがきらりと光るクロッグを披露。シューズと同様のラインストーンとスタッズの装飾を施したベルトもスタイリングのポイントに。新作の水着やブラは、シースルーのドレスやトップスなどに合わせてレイヤードを楽しめるアイテムとして打ち出している。
ショーの続編は香港で
海外強化のフェーズに
「フェティコ」は今シーズンの東京でのショーを終えた後、9月6日にはブランド初となる海外ショーを香港で開催する。香港の最大のファッションイベント「センターステージ(CENTRESTAGE)」の招へいによるもので、このショーでは東京で発表した内容と異なる演出とスタイリングで挑む予定だ。東コレでのラストルックになった赤いドレスは、「香港への含みを持たせて登場させた」と舟山デザイナー。
設立から3年の「フェティコ」は、早くも50を超える全国の人気セレクトショップや百貨店で取り扱われ、これからは積極的に海外ビジネスへ向き合うフェーズに入った。昨シーズン、初めて行ったパリ展示会では、新たにフランスやイタリアなど海外5社での取り扱いが決まり、今季はより海外市場を意識してドレスを増やしている。
女性の身も心も解放する洗練されたコレクションは、海外でも共感を生むだろう。「フェティコ」の名がアジア、そして世界中に知れ渡る日もそう遠くなさそうだ。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。