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レジェンドはなぜ、こんな過ちを?

 皆が数多の失敗を繰り返しているにも関わらず、ナゼ、未だに、こんなに大企業の、しかもレジェンド的な存在のビジネスパーソンが、初歩的な過ちを犯すのでしょうか?

 これまで特権的な優遇を受けてきた人たちの、認識の甘さがあるような気がしてなりません。いじめられっ子はイジメの辛さを知っているけれど、イジメっ子はそのキツさを「分かっている」とか「知ってるよ」とは言いながら甘く見ているのと同じような気がします。

 こうした過ちを防ぐためにも、優遇を受けてこなかった人たちの可視化や登用、想いや意見のすくい上げが必要なのでしょう。
 

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

エスティ ローダーの役員がSNSへの差別的投稿で解雇

 エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は自身のインスタグラムアカウントで差別的な投稿をしたとして、ジョン・デムジー(John Demsey)=エグゼクティブ・バイス・プレジデント(EVP)を3月4日付で解雇する。デムジーEVPは黒人に対する差別発言に加え、新型コロナウイルスにまつわるジョークを投稿し、SNSで多くの批判を集めていた。

 デムジーEVPはインスタグラム上で謝罪文を投稿。無給の出勤停止の懲戒処分を受けていたが、SNSでの炎上の末に解雇に至った。米「WWD」のコメントには応じなかった。彼はメイクアップブランドを筆頭にいくつかのブランドを監修していたが、後任については不明だ。同社の広報は「デムジーEVPが担当していたブランドはそれぞれのグローバル・プレジデントが当面は監修し、ファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者(CEO)の管轄になる」と発表している。

 同社のウィリアム・P・ローダー(William P. Lauder)=エグゼクティブ・チェアマンとフリーダ社長兼CEOは「デムジーEVPのインスタグラムの投稿は、エスティ ローダー カンパニーズの価値・倫理観と合致しない内容で、多くの人に不快な思いをさせた。われわれはダイバーシティ&インクルージョンを推し進め、多様性と平等性は全世界的に真剣に大切にしている。特に(BLM運動後の)ここ2年で人種の多様性の向上に向けて真剣に取り組んできた。今回の彼の行動は当社のそうした努力を裏切った」とコメントしている。

 実際、同社はここ数年でダイバーシティ&インクルージョンの施策を強化しており、BLM運動直後の2020年5月には黒人の従業員を増やすことを社内に宣言した。21年9月には黒人の詩人、アマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)をグローバルチェンジメーカーに任命し、彼女が率いるリテラシー(識字)基金に300万ドル(約3億4500万円)を寄付した。また年に2回、男女間の所得差の撤廃やサステナビリティといった社会問題への進捗レポートを出している。
 
 デムジーEVPは1991年に同社に入社し、2015年に現職に就いた。最近は「M・A・C」「クリニーク(CLINIQUE)」「トゥー フェイスド(TOO FACED)」「スマッシュボックス(SMASHBOX)」「グラムグロウ(GLAMGLOW)」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」など、主にメイクアップブランドを監修。ポップカルチャーのコラボレーションが得意で、「M・A・C」はリアーナ(Rihanna)やサウィーティー(Saweetie)、マライア・キャリー(Mariah Carey)、ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)、レディー・ガガ(Lady Gaga)、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)といった大物セレブと協業してきた。「M・A・C」の成長をけん引し、同ブランドを担当するようになった1998年は卸の売り上げが1億4000万ドル(約161億円)ほどだったが、今や数十億ドルになるまでなった。またデザイナーのトム・フォード(Tom Ford)と「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」のメイクアップコラボレーションをスピンオフさせ、「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」をスタート。売上高10億ドル(約1150億円)を超えるほどのメガブランドに成長させた。

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NEWS 02

「一度ぶっ壊す」外部出身社長が荒療治 ワールドのSCブランド子会社

 ワールドの子会社でショッピングセンター(SC)向けブランドを運営するスタイルフォース(東京)は、黒字化に向けて荒療治を断行する。昨年5月に就任した飯高宏社長のもと、主力ブランド「ザ ショップ ティーケー(THE SHOP TK)」「オペークドットクリップ(OPAQUE.CLIP)」などの運営体制やMDを刷新。同社はワールド傘下でも多くの店舗を持つ中核企業のため、苦戦するアパレル事業の再生事例になれるか注目される。

 飯高社長が屋号長(ブランド責任者)を兼ねる「ザ ショップ ティーケー」は、2月からブランドロゴを変更し、既存店の改装を順次進めている。合わせて社内の中堅スタッフをディレクターに抜擢した。それまでのブランディングの骨格であるディレクター職は、外部の専門家に業務委託していた。内製化によって権限を明確にし、社内のスタッフ一人一人の変革マインドを高める。同時に他部署や外部からも人材を集めた。

 新しいチームによるMDではウィメンズを強化した。もともとメンズに偏りがちだったが、SCのファミリー層をしっかり捉えるために、商品構成比をメンズ45%、ウィメンズ45%、キッズ10%に改めた。新常態を踏まえてスーツなどのキレイめな商品を減らし、カジュアルなスタイルに軸足を移す。

 この数年「ザ ショップ ティーケー」は効率化と売り上げ確保のため品番数を絞り、1品番あたりの生産量を増やしてきた。だが、集約した品番がヒットするとは限らず、品番の奥行きのなさが店頭での機会損失を生み、結果として在庫が積み上がる悪循環に陥る。飯高社長は品番を1.6倍に拡充しつつ、1品番あたりの生産量をほぼ半分に絞った。セールを前提にした仕入れ計画も撤廃した。セールでの販売が予算化されると、どうしてもプロパー期の商品計画が甘くなる。本部の作り過ぎを抑制し、店頭もプロパー販売で売り切る姿勢を明確にし、粗利益率のアップにつなげる。

 店頭接客もあまり声がけないスタイルから、積極的にコーディネート提案するスタイルに変えた。飯高社長は「SCの集客力に頼った事業モデルはもう通用しない。店頭では“一客入魂”の接客でブランドのファンを地道に増やす必要がある」と話す。

 飯高社長はベイクルーズ出身。前職では20年以上にわたって「ジャーナルスタンダード」やアウトレット事業などで要職を担ってきた。

 スタイルフォースに転じた際の第一印象は「ブランドビジネスとして成立していない」だった。自らトレンドを作り出す気概に欠け、他社の売れ筋の後追いが目立つ。結果、同質化し、コストパフォーマンスの勝負を強いられる。かつての稼ぎ頭だった「オゾック」「ハッシュアッシュ」は撤退に追い込まれ、販売不振と構造改革によって赤字が続く。「ザ ショップ ティーケー」も店舗数をほぼ半分の80店舗に削減した。飯高社長は「社員が負けに慣れしてしまっている」との危機感を持った。

 社長就任以来、社員の80人前後と面談を重ね、問題意識を共有することに努めた。コロナ下で途絶えていた全国の店舗、販売員とのリアルなコミュニケーションの機会も増やした。「市場の変化もあるけれど、まだ最善を尽くせていないと自省するスタッフが多い。私に課せられた使命は、従来のやり方を一度ぶっ壊し、新しい成長ステージに乗せること。誇りと自信を持って働けるようにすること」との思いを強めた。

 ワールドはアパレル事業の再建のため、経営幹部を含めた外部人材の登用を積極的に進めている。子会社で「ドレステリア」などを運営するインターキューブの社長には三陽商会やファーストリテイリングで要職を務めた靏博幸氏、D2Cなど新規事業を担当するグループ執行役員にはサボン日本法人や米国で起業の経験を持つ中條亜耶氏、そのほか商品企画やデジタル部門でもこの1年で多くの外部人材を入れた。ワールドの鈴木信輝社長は「違う価値観を持ち込んで組織を刺激する」と話している。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。