Fashion. Beauty. Business.

TOPICS

「若者ソリューションカンパニー」を目指す渋谷109

 SHIBUYA109エンタテイメントの新ビジョンには納得。同社はこれまでも若年層を取り込むためにさまざまな施策を打ち出してきましたが、個人的にはZ世代のインサイトをリサーチする「渋谷109ラボ」の調査結果がいつも面白くて、プレスリリースを読みながら「ふぅ〜ん」「知らなかった!」「確かに、そうかも」と驚きや発見をたくさんいただいています(笑)。

 各社がZ世代を筆頭に若年層の獲得に必死な中、同社のそういったデータは大きな財産でしょう。それを生かしたプロジェクトを外部にも“ソリューション”として提供するならば、需要はかなりあるはず。“モノを売るだけ”では足りなくなっている今の時代、納得のビジョンですし、可能性は無限大にあると思いました。どのような取り組みでジェンダーの問題と向き合うのかも、注目です。

北坂 映梨
NEWS 01

渋谷109が目指す「若者と社会の架け橋カンパニー」への道

 ファッションビル「渋谷109」を運営するSHIBUYA109エンタテイメントは、商業施設デベロッパーから脱皮する。新ビジョンは、4月1日に着任した石川あゆみ社長が策定した。前任の木村知郎・前社長の「若者の夢を叶える」という企業理念を引継ぎつつ、「若者ソリューションカンパニー」を掲げ、商業施設運営だけにとらわれないマーケティングカンパニーへの進化に挑む。

 石川氏は1977年10月13日生まれ。名古屋大学経済学部を卒業後に新卒でNTTドコモに入社。その後KADOKAWAを経て、2008年11に東急電鉄(現東急)に入社した異色の経歴を持つ。SHIBUYA109エンタテイメントに出向する直前は東急グループのリテールを管掌するリテール事業部のリテールグループの課長を務めていた。ドコモ時代に当時スタートアップだったサイバーエージェントやDeNAなどのIT大手とのつながりを有しており、東急本体に在籍時にはサイバーエージェントとDeNA、GMOインターネット、ミクシィ、渋谷区教育委員会と共同でプログラミング教育プロジェクト「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト」の立ち上げにも関わった。

 SHIBUYA109エンタテイメントは17年4月の設立以来、渋谷109を拠点にZ世代のインサイトをリサーチする「渋谷109ラボ」、飲食業態の「イマダキッチン(IMADA KITCHEN)」、韓流アイドルやユーチューバーのグッズを販売する超高効率の独自編集ショップの「ディスプ!」などの新プロジェクトを立ち上げてきた。今後はこうした新プロジェクトを積極的に外部の企業や商業施設に展開するとともに、渋谷109自体でも22年度までにIT大手とコラボレーションした新業態を立ち上げる考え。石川新社長は「ファッションはもちろん、エンタメの分野でもすでに数多くの実績がある。こうした新規プロジェクトを商業施設の運営と同等、あるいはそれ以上に力を入れて外部にも“ソリューション“として提供する。一方でゲームや音楽、eスポーツ、SNSなどのデジタルプラットフォームとの連携は弱かった。こうした分野との連携も深め、渋谷109をデジタルとリアルが融合した場に進化させたい」と意気込む。

 渋谷109はコロナ禍で2020年は後退したものの、2019年には“ギャルの聖地”だった過去のピークを超え、970万人の来客数を獲得していた。新生・渋谷109は2024年度に1000万人超えを目指す。「渋谷109は、ファッションからエンタメ、飲食、文化、ビジネスまでさまざまなカルチャーが混合した渋谷の代名詞にもなり得る稀有な空間であり、かつ今では珍しい“若者に特化した商業施設”でもある。決して大きな商業施設ではないものの、知名度やブランド価値のポテンシャルは非常に大きい」。

 若者とファッションを掲げる渋谷109らしい施策の一つとして、“ジェンダーギャップ”も積極的に取り上げる。「これまでの調査で、過去に例がないほど若者はLGBTQを筆頭にジェンダーへの関心が非常に高い。真剣に若者の声に向き合い、未来を考えるためにもジェンダー問題に関しても果敢に情報発信していく」考え。

トップページに戻る
NEWS 02

「無印良品」生活圏に出店拡大 地方・郊外のスーパー隣接地など

 「無印良品」を展開する良品計画は、地方や郊外での出店を加速する。これまで大都市の商業施設や繁華街を主戦場にしてきたが、より消費者の生活圏に近い場所に店舗を増やす。スーパーマーケットの隣接地や店舗内を有力な出店先にする。

 14日にオンラインで行われた決算説明会(2020年9月〜21年2月期)で、24年8月期を最終年度とした中期経営計画の骨子を発表した。登壇した松崎暁社長は「日本と中国大陸、台湾、タイで出店戦略と店舗機能を刷新する」と話した。最終年度に日本で純増100店舗を出店できる体制を作る。国内店舗数は16年2月期末が414店舗、21年2月期末が443店舗だった。緩やかだった出店ペースが一気に上がることになる。

 出店先として地方都市やベッドタウンの生活圏を開拓する。スーパーマーケットやホームセンターのような近隣商圏に向けて営業する店舗の隣接地、あるいはスーパーマーケット内に出す。立地環境によって売り場面積や商品構成も柔軟に変えていく。

 「無印良品」は衣料品、日用品、雑貨、食品など7000品目以上の幅広い生活必需品を扱っているため、アパレル専門店やインテリア専門店などに比べて消費者の来店頻度が高い特徴を持つ。さらにこの数年は、購入頻度が高い食品を戦略的に強化してきた。消費者が週に何度も利用するスーパーマーケットとの買い回りが期待できる。

 すでに一部で検証を進めている。19年4月には石川県野々市市に初のロードサイド店舗を開いた。北陸を地盤にするスーパーのアルビスと組んで、スーパーの隣接地に約2000平方メートルの大型店を構える。20年7月には新潟県・直江津のGMS(総合スーパー)跡地に日本最大店舗をオープンした。同店は商品を詰め込んだバスで山間部での移動販売も行なっている。東京都板橋区の光が丘団地内には小型店を出店し、忙しい子育て世代や遠出のできないシニア世代の需要に応えている。

 同社は近年、地域に根ざした「個店経営」を掲げてきた。生活圏への出店拡大は、画一的なチェーンストアではなく、地域の課題に商品とサービスで貢献する新しいタイプの小売業モデルの模索といえる。

トップページに戻る

最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。