
3時間におよぶ組み立て作業で森永が作り上げたのは、「SCREEN」をテーマに掲げた「アンリアレイジ(ANREALAGE)」2025-26年秋冬コレクションの3ルック。クリアカラーのブロックを組み合わせることで、色と光の重なり合いを表現した。
Never Stop Playing - 心が動く方へ――。
レゴグループが掲げるその言葉は、ルールや常識にとらわれず、自分が信じる“楽しさ”を選ぶ勇気を後押ししてくれる。自身のインスピレーションの根底にレゴ®︎ブロックがあるというファッションデザイナー・森永邦彦は、ストイックに可能性を追求しながらも遊び心を忘れない。その姿勢は、レゴグループが大切にする「創造の自由」と共鳴する。

「アンリアレイジ」の集大成とも言える、2025-26年秋冬コレクションから3つのルックを再現していただきました
森永 「SCREEN」をテーマに掲げたこのコレクションでは、LEDを組み込んだテキスタイルに無線でデザインを飛ばすことで、ショーの間に色や柄が変わり続けるという演出をしました。
衣服に落とし込んだのは、光が透過したステンドグラスや万華鏡をのぞいた世界のきらめき。レゴ®ブロックのクリアパーツを使えば、うまく表現できるかもと思いチャレンジしました。チェック柄のルックはもともと4色を組み合わせてつくっていたのですが、透明のブロックは光の当たり方の差で色の彩度が変わることに気付いて。表面に凹凸をつける工夫によって、3色だけで色の絶妙なニュアンスを出すことができました。

現在、「アンリアレイジ」渋谷パルコ店の什器にはレゴ®ブロックが使われています。ファッションと結び付きがないようにも思えるレゴ®ブロックをどのように捉えていますか?
森永 子ども時代は、ピアノや少林寺拳法を習ったり、バスケットボールをしたりと、ある程度「型」が決まったものに取り組んできました。
ファッションに関心を持ったのは大学生になってから。今までの既成概念や常識などに縛られず、型からはみ出した表現ができることに感銘を受けたのがきっかけです。そのときに思い出したのが、レゴ®ブロックで人型ロボットなどの大作をつくっていた幼少期の自分。僕自身を形づくる原風景の1つに、レゴ®ブロックで遊んだ思い出が確かにあります。
大人になれば、レゴ®ブロックから離れてしまうじゃないですか。けれど、クリエイティビティーを追求するほど、レゴ®ブロックのすごさに気づかされるんです。こんなにもシンプルなのに、無限の可能性を秘めていて、つくれるものに際限がない。大人になってまたその魅力に惚れ込んでいます。
「可能性は無限大」というレゴ®ブロックの本質と、森永さんの服づくりには通ずるものがある気がします。「アンリアレイジ」の洋服を通して、伝えていきたい価値観とは?
森永 日常にもファッションにも“当たり前”があふれていますよね。例えば、ボタンだったら丸い形が一般的で、このくらいの数がついていて……というふうに、多くの人が気づかずに通り過ぎるような事柄に「アンリアレイジ」は着目し、その“当たり前”を更新したり、再構築してみたりする。そこからクリエイションが始まります。
当たり前だと思っていたことが覆される瞬間って、誰もがドキドキするものだと思うんです。僕らが見つけた小さな価値観が、ファッションを通じて誰かの心を動かせるかもしれない――これからもそんな想いを大切にしていきます。

思うようにいかないときや苦戦するとき、どのようにスランプを乗り越えますか?
森永 「こんな洋服があったらいいな」「これが洋服になったらいいな」と常々考えていますが、現実的ではないことがほとんどです。今回制作した秋冬コレクションでいえば、洋服を完全に液晶化し、デザインデータをアプリでコントロールしたいとひらめきましたが、それを実現するのはとてもハードルが高い。けれど、諦めてしまえば何も生まれません。0.1%でも可能性があれば、2度や3度失敗するのは覚悟のうえで、僕らはとことん粘ってみたい。LEDはあるし、服を縫うこともできるし、無線を使えばデータを送ることもできる。それぞれを少しずつ工夫し調整し、試行錯誤の末に完成しました。
過去にはとても大きな失敗をしたこともあり、うまくいかないときは毎回、すごく落ち込みます。けれど、「本当にだめかもしれない」と絶望しているうちに、背中を押してくれるようなことが起こったりして、また新しい視点で考えられるようになってくる。
それはレゴ®ブロックを組み立てるときも同じで、思うようにいかないこともあれば、もどかしい気持ちになることだってあります。けれど、繰り返し手を動かしているうちに、だんだん早くつくれるようになり、より良いアイデアも生まれてくるはず。より高く跳ぶためにも、一度かがんだり屈伸したりするステップが必要だと考えています。
自分自身やブランドの可能性を信じ挑戦を続ける中で、どんなことを大切にしていますか?
森永 半年に1度新しいコレクションを発表するファッションの世界は、評価や消費のスピードがとても速い。ですが、22年間この業界に身を置いて分かったのは、短距離走ではなく長距離走に近いということ。長く続けて初めて、自分たちのこだわりや価値観が人に届いていくのだと実感します。
最近では、ビヨンセ(Beyonce)がツアー衣装として僕らのドレスを着てくれていますが、そのデザイン自体は15年ほど前からあったもの。点と点が時間をかけてつながり、驚くようなことが実現しました。長く続けることで、絶対何かになる――「続ける」ということが、何よりも大切なのだと思います。
ファッションブランド「アンリアレイジ」のデザイナー。1980年生まれ。早稲田大学在学中に服づくりを始め、2003年にブランドを設立。14年からはパリ・ファッション・ウイークに参加。以降、「フェンディ」との協業やビヨンセの衣装制作を手掛ける。実験精神あふれる服づくりで、常に新しい視点を模索し続ける