Life with Jewelry

今、パリのファッション業界が熱いラブコールを送る女性DJがいる。その名はルイーズ・チェン。ファッション・ウイーク中は「シャネル」「ディオール」「ナイキ」など数々のファッションブランドのイベントで活躍し、海外からのオファーも絶えない人気DJだ。フランス人の母、台湾人の父という2つのカルチャーを併せ持つ彼女が、音楽、ジュエリー、そしてパリについて語る。

きっかけは父から贈られた
1本のカセットテープ

 7歳の時、台湾で歌手として活躍する叔母のカセットテープを父親がお土産として持って帰ってきたことがルイーズ・チェン(Louise Chen)の音楽人生をスタートさせた。彼女はそのテープをすり切れるまで何度も聴いたという。そこからDJの原型であるカセットテープ作りに目覚める。

 「子どもの頃、自分で好きな曲を集めてオリジナルのカセットを作ることが一番の遊びでした。同時に、音楽が自分の感情を表現してコミュニケートする手段でもありました。私が生まれ育ったフランス北東部のストラスブールは、パリのような大型のCD&レコードショップがなく、自分で集めた世界各国の音楽を聴いて過ごしたのです。大学進学のために17歳でパリに来た時はもう連日コンサート三昧で、お金が貯まったら“三度の飯よりレコードを買う”という、音楽に明け暮れた生活を始めました。大学に通いながら音楽雑誌でインターンをして、人脈と、無料でCDやコンサートの招待状がもらえるという環境を手に入れたのです!当時の私にとっては本当にありがたかった。そしてバーでDJをしている友人に少しずつDJの技術を教えてもらい始めたのです。

 パリとロンドンの大学で計6年間マーケティングの勉強をするかたわら、常に音楽業界での研修を続けて、卒業後はDJのマネジメントオフィスに就職しました。そこで初めて遊びや趣味ではなく、本格的にプロとしてDJの仕事をしている人たちを知りました。働き始めて2年目、オーナーに自らDJとしてイベントをプロデュースするチャンスをもらいました」

お気に入りのレコードショップとの出合い

 彼女がプロとしてDJを始めた当時、フランスではまだ女性DJの存在は認められていなかった。業界は男性主導で、女性がフィーチャーされる環境がなく、また女性DJは遊びや趣味であって真面目に取り組んでいるわけではないと思われがちだった。ルイーズはそんな状況を打破しようと立ち上がる。

 「『Girls Girls Girls』という女性 DJだけを集めたイベントを立ち上げました。それがきっかけでラジオ番組からオファーがきて、ファッションブランドから脚光を浴びることになったのです。マネジメントする側からマネジメントされる側になり、プロのDJとして活動するようになってからは、常に女性DJの存在を高めることを目的にしたイベントを開催しています。そんな中、DJの友人にレコードショップ『ハートビート・ビニール(HEARTBEAT VINYL)』を紹介されました。

 オーナーのメリックのセレクションはパリの中で最もとんがっていてクオリティーが高く、そして他で見つからないマニアックなレコードばかり。私にとってまさに宝箱でした!週に1度通い始めて、レコードを探しに行ったり、ただメリックとコーヒーを飲んで話したり、今ではすっかり良い友達です」

ジュエリーは家族の「きずな」

 台湾人の血を引くルイーズは、子どもの頃からお守りとしてジュエリーを身に着けていたという。「ブシュロン」の“キャトル”や”セルパンボエム”を着けこなす彼女のジュエリーへのこだわり、そしてパリへの特別な想いとは?

 「母から、私が生まれてすぐ枕元にゴールドのジュエリーが置かれたと聞きました。台湾でゴールドは繁栄を意味し、そういう習慣があるそうなんです。記憶に残っているジュエリーというと、8歳の時に叔母にもらった翡翠の指輪ですね。お守りとして大切に保管するように言われて、今でも私の宝物です。アクセサリーはおもちゃやファッションでいいけれど、ジュエリーは家族とのきずなとして本物だけを着けていたいですね。私が着けているジュエリーは全て家族や自分の思いがこもった大切なものです。この左手に着けている“キャトル”は上品で、着けた瞬間に私の手にすーっとなじんだのを覚えています。買うのは1つと決めていたのに、いざ試着をしたら『重ね着けしたい!!』と思って、結局2つ持って帰ることになりました(笑)。このリングもいずれは、将来生まれてくる子どもに託したい大切なジュエリーです。

 若い頃はロンドンやニューヨークに憧れていたけど、今はパリが一番好きです。なぜって?ほら、天気がいいと皆カフェのテラス席へ行っておしゃべりを始めるでしょう。それって本当の豊かさだと思うのです。大人になって、ロンドンやニューヨークは時間の流れが速くて、仕事とお金を中心に物事が動いていると思うようになりました。私たちフランス人は仕事とプライベートのバランスを大切にしていて、豊かさとは時間であることを知っています。この豊かさはけっしてお金で買うことができません。友達や家族と過ごす自由でゆったりとした時間こそが、何よりも愛しく素晴らしいものだと、パリの街が私に教えてくれました」

オーナーのメリック・ベンシェイク(Melic Bencheikh)が世界中から集める個性的なレコード店。ソウル、ファンク、ディスコ、ロック、ジャズ、ハウス、ポップ、テクノクラシックなど、さまざまなジャンルの珍しいレコードをそろえ、プロのDJや音楽家たちが足しげく通う。日本にも年に3回訪れ、面白いレアなレコードの発掘に余念がない

HEARTBEAT Vinyl
26 Rue Godefroy Cavaignac, 75011 Paris France

Boucheron Makes You
Excited

(左)翡翠をはじめ緑色が好きだというルイーズの耳に輝くのがこちら。ストーン使いが印象的な“セルパンボエム”コレクションから、美しい緑色のマラカイトとイエローゴールドが上品にマッチしたピアス (右)不死のシンボルでもあるスネークをモチーフにしたリングはバリエーションも豊か。今春はカラーストーンの種類も数多くラインアップ
(左)ピアス“セルパンボエム”(YG、マラカイト)44万6000円 (右)左のリング“セルパンボエム”(スモールモデル、YG、マラカイト)20万6000円、右のリング“セルパンボエム”(YG、マラカイト)47万5000円
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Secret Story of Boucheron

1968年の登場以来、「ブシュロン」のアイコンとして愛される“セルパンボエム”コレクション。不変の愛を象徴するスネークの美しさを表現したコレクションは、メゾンの自由でボヘミアンな精神を宿し、美しく、そして時に官能的に女性を彩ってくれる。誕生50周年を迎える2018年、さまざまなカラーストーンをまとった新たなコレクションが発表された。写真は、1970年代のデッサン画

Profile

ルイーズ・チェン(Louise Chen) : DJ。ドイツとの国境近くのストラルブールでフランス人の母と台湾人の父の間に生まれる。DJとしてのクールな一面と、レコードを探す好奇心いっぱいの表情が印象的。ファッションブランドからのオファーも多い。ハイ&ローをミックスしたファッションスタイルがお気に入り

photographs : Yusuke Kinaka
text & coordination : Keiko Suyama

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