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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド WANGHONG and Chinese Power:“ワンホン”を制するものがマーケットを制する

 ニューヨークで活躍する名物クリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第3回。月に1、2度はお気に入りのレストランでランチをしながら情報交換するのが楽しみな2人。“You’d Better Be Handsome”は、2人がときにゲストを交え、ニューヨークのトレンドや新常識について雑談するコラム 。Vol.3となる今回は、どこに行っても影響力のあるチャイニーズパワーを分析。知らないでは済まされない“ワンホン(WANGHONG)”の重要性についてトーク。

 チャイナタウンを一歩出ると、中華料理店がそんなにないのがニューヨークの実情。特にゆっくりできる空間がないなか、トライベッカの外れにある「チャイナブルー(CHINA BLUE)」はコロニアル時代の上海風な内装で、ゆっくりおしゃべりが楽しめる。夏になると、窓が全開されて気持ちがいい。ニューヨークでは珍しく静かなエリアなのも◎。点心も充実、ランチセットは12〜15ドル(約1300~1600円)。CHINA BLUE, 135 Watts Street, 973 860 3865

メイ:ロンドン、パリ、ソウル、上海、東京を回って先日戻ってきたばかり。

スティービー:上海にも行ってきたのに、上海風チャイニーズで大丈夫だった?

メイ:ニューヨークのチャイニーズって、そんな繊細じゃないから別物(笑)。

スティービー:確かに。でも「チャイナブルー」って随分前からあるけれど、味付けも優しいし、寒いときには熱々のスープが体に沁みるよね。ところでどの都市がいちばん元気があった?

メイ:どこもそれなりに元気だったけど、共通しているのは、どこの国でも中国人が大活躍ということ。買い物をしている人という意味だけではなく、情報発信源として。韓国でも、ビューティブランドのマーケティング部が考えているのは“ワンホン”のことばかり。パリのビューティ発表会でも、やっぱり“ワンホン”が主役のようだし。

スティービー:“ワンホン”?

メイ:あっ、ここにも“ワンホン”を知らない人が!でも、日本でこの話をしたときも、 知らない人が多くてびっくりした。お隣りの韓国では、そのことばっかり話しているというのに。

スティービー:インフルエンサーのこと?

メイ:アメリカで言うならばYouTube Starかな。ただご存知だろうけど、中国ではYouTubeやインスタグラムといったアメリカのSNS にアクセスできない。だから彼ら独自のプラットフォームが生まれたりする。ウェイボー(微博、WEIBO)、タオバオ(TOBAO)、ティックトック(TIK TOK)などなど。そこで大活躍する“ワンホン”は、直訳すると“インターネット有名人”という意味らしい。専門知識を持ったKOL(キーピニオンリーダー)もインフルエンサーだけど、“ワンホン”は動画を活用することが大前提。

スティービー:中国は人数が多いうえに、購買欲があるから強いよね。

メイ:例えばニューヨークで新しい香水を発表するとき、中国本土からエディターを招くのではなくて、PRはニューヨークに住んでいて英語も普通に話せる“ワンホン”を招待するのが普通。この人たちに宣伝してもらうことで、売れるかどうかが決まるから。ビューティやファッションはもちろん、車専門、テクノロジー専門の“ワンホン”も重宝されている。

スティービー:そういえば、先日出席した新商品発表会でも、最前列に座っていた中国人らしき人たちは、ライブで発表会の様子を伝えていた。次々とコメントが携帯のモニターに出てきて驚いた。それにお互いが助け合っている風で、とても効率よくオーガナイズされていて、無駄がなかった。世界中にいるチャイニーズとコミュニケーションを取っているのかも?想像をはるかに超えるすごい人数なのかも。

メイ:“ワンホン”も人気が上がったり下がったり激しいみたいで、人気をキープするには、独自の視点と商品知識が大事。それに企業からお金もらってPRしている感が出てくると、一気にリスペクトがなくなるみたい。

スティービー:そこはインスタグラマーと同じなんだね。でも彼らの収入源は、インセンティブとか広告料だろうから難しそうだけど。

メイ:だからこそ提携するときは、商品を細かくチェックしているみたいだよ。

スティービー:“ワンホン”だけじゃなくても、長く仕事を続けてリスペクトを維持していくためには、基本中の基本だね。

メイ:それにしても、中国人の勢力というか威力は年々強くなっていくのをニューヨークにもいても感じる。

スティービー:中国人のカルチャーを維持しながらも、その地域で根を張っていく。そういえば3年くらい前からニューヨークの公立学校では、中国人が多いからだろうけど旧正月は祝日扱いになったときは驚いた。まだまだユダヤ教関連の休みの方が多いけれど。

メイ:私がニューヨークで小中学校に通っていた頃には、想像もつかなかった事態!大学生の頃は、当時はフランス語、スペイン語に続いて日本語がある学校もちらほらあったけど、今では日本語はほぼ消滅。公立の高校でもスペイン語の次に中国語のクラスがあったりするくらいだから。

スティービー:そういえば、トム・クルーズ(Tom Cruise)とケイティ・ホームズ(Katie Holmes)の娘スリ(Suri Cruise)ちゃんも、中国語教育を推進する私立に小さい時から通っているし。普通にマンダリン語を話せたりして?

メイ:そういえば、この秋にはアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)の息子マドックス(Maddox Jolie Pitt)君がソウルのトップの大学に入学して韓国中がわいていたよね。

スティービー:噂によると、ほかにもイギリスやアメリカのトップ大学が決まっていたらしいけど、Kポップ好きが高じて韓国の大学を選んだらしい。アンジェリーナ自身もソウルに行ったり。Kポップの影響力って計り知れない。

メイ:日本の大学にハリウッドスターの子どもたちが来ることはなさそうだね。ジャニーズ好きなアメリカ人とかあんまり聞いたことがないし。授業料も良心的で穴場かもしれないのにね。

スティービー:どちらにせよ、アメリカ人が中国語をマスターする前に、その何万倍の中国人が英語をマスターしていくんだろうね。実際、ニューヨークのトップと言われる公立高校は70%近くがアジア人だから。アジア人枠の中でも、やっぱり中国人がダントツ多い。

メイ:70%?じゃ、アジア人がマジョリティーってこと?とうとうそういう時代に入ったってことか。

スティービー:いや、けっこう前からすでにそうなっていたらしいけど、 僕も最近気づいたよ。黒人1%、ヒスパニック3%という学校もあって、社会問題になっているくらいだから。

メイ:とはいえ、高級ブランドをいちばん買っているのはアメリカ人らしいけど!

スティービー:2020年はいったいどんな展開になるんだろう。どちらにしても中国人パワーから見習うことはまだまだありそう。

メイ/クリエイティブディレクター:ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター:アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

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