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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド DECODE Z : 人口もダントツのジェネレーションZこそ、トレンドセッター

 ニューヨークで活躍する名物クリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第2回。月に1、2度はお気に入りのレストランでランチをしながらトレンド話に花が咲く2人。“You’d Better Be Handsome”では、2人がときにゲストを交え、ニューヨークのトレンドや新常識について雑談する 。今回はファッション業界の未来を背負う、ジェネレーションZにフォーカス。日本と違って、人口も多いこの世代の価値観、興味の対象、分からないことだらけだが、実にダイナミック!

 シカゴ発祥のバーガーレストラン「オーシェヴァル(AU CHEVAL)」がトライベッカに進出したのは、今年の春。トライベッカからチャイナタウンに抜ける道を1本入った小径に位置し、隠れ家的。重厚な内装で落ち着ける インテリアに、ウォールストリート系の人々の姿も多い。地下にはバー、1階には日本人バリスタによるシカゴ発「サワダコーヒー SAWADA COFFEE」もある。AU CHEVAL, 33 Cortland Alley

メイ:ここはオフィスから近いからか何度か来ているけれど、シカゴのバーガーって何が違うのか、いまだによく分からない。でも、テーブルもシートもシカゴサイズだから、ゆったり落ち着く。

スティービー:シカゴといえば、オバマ元大統領の本拠地だし、カニエ・ウェスト(Kanye West)の故郷というイメージだったけど、最近はシカゴ大学のニュースに驚かされたよね。

メイ:というと??

スティービー:アメリカの大学の学費が高いのはみんな承知だと思うけど、2025年には、なんと年間10万ドル(約1090万円)を超える大学が登場するらしい。その第1号がシカゴ大学なんだって。そのあとに、コロンビア大学などが続く予定と書いてあった。

メイ:一流大学とはいえ、高過ぎるよね。住居とかも入れると今でも年間6万ドル(約654万円)くらいなのに。5年後にそこまで上がるって……。今の大学生、そしてこれから大学に行くジェネレーションZたちは大変だ。

スティービー:ジェネレーションZって、最近よく耳にするけど、年齢でいうとミレニアルズよりは下だから、いまの20代前半以下?

メイ:そう。「ビジネスインサイダー(BUSINESS INSIDER)」によると1997〜2010年に生まれた子たち、だから今の10〜23歳が、ジェネレーションZのことだね。分け方は、いろいろな説があるみたいだけど。

スティービー:ミレニアルズは、すでに研究され尽くした感があるけど、ジェネレーションZはまだまだ未知数。生まれたときから、または物心がついた頃には、すでにスマートフォンが存在して、YouTubeと共に育った子たちだから。そして大学の授業料が10万ドル台の!

メイ:米国では5人に1人がジェネレーションZで、20年には8500万人に達するらしい。この世代の考えや行動パターンを把握できないと、今後のマーケティングを制することはできなくなる。

ジェネレーションZの代表格は?

スティービー:ジェネレーションZの代表って誰だろう?

メイ:思い浮かぶのは、カイリー・ジェンナー(Kylie Janner)かな。1997年生まれ、現在22歳。

スティービー:確かに。それでいて、すでにビリオネア!

メイ:11月にコティ(COTY)がカイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)の株を51%取得したのは記憶に新しいね。

スティービー:6億ドル(約650億円)でね。

メイ:なにしろあのコスメブランドは、いま1.2ビリオンダラー(約1300億円)の価値があるらしいから。もう子どももいるし、スピード感がすごすぎる。

スティービー:ほんの数年前までは、雑誌のカバーにカイリーはどうか?と何度か名前があがっても、気が乗らないでパスしていたら、その後すごい勢いで人気が上がって、今では雲の上の人になってしまったよね(笑)。

メイ:確かに最初はキワモノだった気がするけど、今はメインストリーム。スーパーモデルの姉ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)も、ファッション界では最頂点にいるはずなのに、収入がカイリーの50分の1くらいらしいし。ちょっと悲しいような。

スティービー:うちのティーンエージャーの娘もカイリーを崇拝している。というか、カーダシアンから環境問題に至るまですごい物知り風だけれど、全部YouTubeから学んでいるというのもこの世代の特徴かな 。いちばん不思議なのは、友だちといつも一緒にいなくてもさほど寂しくないらしい。ネットでつながっているからなのか?

メイ:私たちがティーンだったときって、一人でいるとなんだか孤独な気がしたけれど、あの感覚ってティーンエージャー特有のものじゃなくて、もしかしたら世代特有のものだったのか?

スティービー:まったく違う感覚だから。郊外だと、もっと友だち同士で時間を過ごしているかもしれないが、ニューヨークの子どもたちは何かと忙しそうだし。

アメリカで話題のテレビドラマ
「ユーフォリア」

メイ:郊外とジェネレーションZのコンビといえば、最近話題のHBOテレビドラマシリーズ「ユーフォリア(EUPHORIA)」って観てる?

スティービー:ディズニーあがりのゼンデイヤ(Zendaya)主演の話題作か。ドラッグ中毒の中高生は観ていて楽しくないけど、あのドラマはファッションとビューティにすごい影響力あるよ。髪がピンクで、 ラメ入りの青や緑のアイシャドウがたっぷり塗られている、みたいな。

メイ:そうそう。撮影でもよく話に出てくる。特にメイクはインパクトあるから。

スティービー:最近かかわったビューティ撮影2本とも、「これはすごく『ユーフォリア』っぽい」とか、「『ユーフォリア』な気分で」みたいな会話が飛び交ってたよ。

メイ:あのドラマを観ると、ジェネレーションZのファッションも分かりやすい。

スティービー:基本はストリートっぽいけど、なんていうかエレクトロ的な要素とかもミックスされている。ドラマの中では、一人の女の子のスタイルを、「セーラームーンに影響されている」と説明されていたけど、確かに日本のアニメの影響もあるかも?

メイ:ジェネレーションZのファッションって、名称はあったりするの?

スティービー:これも娘に教えてもらったけど、e Girlとかe Boyというスタイルが人気らしい。要するにティックトック(TikTok)で人気の子たちの格好がそういう系。 スケボーっぽい格好をベースに、ゴス的な要素が加わっている、というか。言葉にすると不思議だけれど、90年代の匂いがする。

メイ:ブランドでいうと?

スティービー:「シュプリーム(SUPREME)」みたいなストリートブランドもまだ人気だけれど、ジェネレーションZを狙ったブランドも登場していてユニーク。例えば「ユニフ(UNIF)」とかは、90年代にこういう格好していた人いたっていうルックが陳列されている。レトロでテクノ。わざとダサさを残しているような。「ドールズ キル(DOLLS KILL)」とかも人気らしい。これもテクノとゴス、それにヒップホップの粉をかけた、みたいな。

ティックトックの新星、
ノエン・ユバンクスって?

メイ:おしゃれリーダーはどういう人たち?

スティービー:ティックトック上では、ノエン・ユバンクス(Noen Eubanks)。

メイ:ま、まったく分からない……。

スティービー:18歳のかわいい男の子で、よくアイメイクもしたりする。フォロワーが750万人いる。例えば、 ミレニアルズの代表、現在25歳のジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)はかわいい顔だけど、メイクする感じではなかったし、どちらかと言えば全身タトゥーを入れて、途中からは男っぽさをがんがんアピールしていたよね。

メイ:ジェネレーションZは、自分のセクシャリティーは自分で選ぶ、みたいなスタンスだから、そういうジェンダーを越えることが自然にできる世代なのかも。自分が気に入れば、他人の意見は大事じゃない、という、その自信はうらやましい限り。

スティービー:ミレニアルズやその上の世代のように、セクシャリティーがパッと見て分からないのも、Z世代の特徴。

メイ:確かに、最近初めて聞くようなパンセクシュアルとか、カテゴリーもたくさんあるから、分からないじゃ済まされないし。セクシャリティーとジェンダーをミックスしたら、怒られるし。ちょっと前まで普通に使われていた言葉が差別用語になっていたり!

スティービー:この分野に関しては、常にアップデートが求められるよね。ところで、2年に1度行われる高校生の健康を対象にしたアンケート調査、YOUTH RISK BEHAVIOR SURVEYの17年度の報告によると、全体の23.6%の約4人に1人は、自分のことを「ゲイまたはレズビアン(3.1%)、バイセクシャル(7.6%)、分からない(3.8%)、どれにも当てはまらない(9.1%)」のカテゴリーに位置付けているらしい。

メイ:今どきの高校生というか、ジェネレーションZが、セクシャリティーについてのボキャブラリーをよく理解していて、ストレート以外のチョイスがあることを小さな頃から知っている、という証し。

スティービー:考えてみたら、この世代が生まれた頃にはすでにiPhoneがあって、上の世代がものすごく努力して手に入れた黒人大統領や同性愛結婚が現実になっていたわけだから、感覚が違って当たり前かも。

メイ:ウィスパー(WHISPER)みたいに、アカウントを作らなくても完全匿名でつぶやけるアプリが普通な時代の子どもたちだからね。

スティービー:この世代がこれからのトレンドをつくっていくわけだから、彼らの思考や行動から目は離せない。

メイ:またいろいろリポートしてね!

メイ/クリエイティブディレクター:ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター:アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住