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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド 「ヴィクトリアズ・シークレット」にみる、ダイバーシティー時代の勝敗

 ニューヨークに拠点を置くクリエイティブエージェンシー兼コンサルティング会社のスタジオハンサム(STUDIO HANDSOME)による新連載“You’d Better Be Handsome”がスタート。

 名物クリエイティブディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)が、月1、2回お気に入りのレストランでランチをしながら、ニューヨークのトレンドやニュース、そして新常識についてトークを繰り広げ、ときにゲストを交えて、 最近聞いたことや見たあれこれについて語り合う。連載タイトル“You’d Better Be Handsome”にもなっている“ハンサム”とは、見た目はもちろん、洗練されたテイストがあること、丁寧に心を込めて作られていることを指す。初回はファッション業界の未来がかかっている、ダイバーシティーについてトークが盛り上がった。

 すでに雪が散らつくニューヨーク。今月は、「バルタザール(BALTHAZAR)」のシェフが昨年オープンし、すでにトライベッカの名店となったレストラン「フレンチェッテ(FRENCHETTE)」でランチ。メインのほか、ナチュラルワインとチョコレートムース、そしてエスプレッソが付く“ロケット”ランチセットがおすすめ。FRENCHETTE, 241 West Broadway, 212.334.3883

メイ:オープンから1年ちょっと過ぎて、ようやく普通に予約が入れられるようになってきたよね。

スティービー:新しい店もたまにはいいけど、間違いがない店というのが少ないニューヨークで「フレンチェッテ」は大事な一軒。メイのオフィスからも近いしね。

メイ:ファッション・ウイークのときは、「WWDジャパン」のチームともここでディナーをしたよね。みんなでがっつり食べたステーキも何もかもがパーフェクトだった。

スティービー:でもオススメは、“ダックコンフィ”がメインのときの“ロケット”ランチセットだけど。

メイ:ところで最近、本当にダイバーシティーに関する価値観が変わってきているなぁって実感することが多いけど、なかでもランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET以下、VS)」のイメージ急降下には驚かされるよね。

スティービー:細い白人モデルを中心とする、今となっては偏った“美しさ”を追求したのが長過ぎて、ダイバーシティーの時代に完全に乗り遅れてしまった感じ。つい先日、定例のショーを中止することを決定したね。例の派手なショーをテレビ放映しないだけでも大きなニュースだったのに。

メイ:スタジオハンサムでも、「VS」のランウエイに出ているモデルをランジェリーキャンペーンで過去に何度か起用しているけれど、年々“エンジェル”の格が落ちていくのを感じる。

スティービー:「VS」エンジェルは、他のランジェリーブランドのモデルはできないんじゃなかったっけ?

メイ:これまではそうだったけど、「VS」の社会的位置付けが危ういので、モデルエージェントはアジアや南米など異なるテリトリーの契約は維持しようということらしい。「VS」は絶対的だった時代もあるのにね。

スティービー:最近はアジアやヨーロッパでショーをやっていたから行けてないけど、過去の「VS」のショーにはリアーナ(Rihanna)やジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)らの豪華なエンターテインメント付きだったから、あれがなくなるのも寂しいけど。

メイ:ニューヨークの秋の風物詩だったからね(笑)。あのチケットを入手するために、大金を払った人々の話とかもよく聞いたよね。

スティービー:そんな時代もあったってことだね。今回のニューヨーク・ファッション・ウイークも、ダイバーシティーを体現するようなショーが目立った。ハーレムのアポロシアターで開催された「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」のランウエイはほぼ全員が黒人モデルだったし、堂々としたプラスサイズモデルも数名出ていたのが印象的。

メイ:ニューヨークのトップモデルエージェンシー、IMGのホームページも、最近大々的にリニューアルされているのに気づいた?プラスサイズモデルも増えているけれど、彼女たちは別枠ではなくWOMENのセクションにミックスされて並んでいる。黒人モデルも豊富にそろっているし、その堂々とした感じがクール。

スティービー:エディトリアルの撮影のときも、フォトグラファーやスタイリストも意識的に個性的なモデル、いわゆるきれいな白人モデルじゃないモデルを起用しようとしている。これは気のせいじゃなくて本当に実感しているよ。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」がその先駆者。年齢の枠も広がっている。

メイ:需要に合わせて供給が増えているってことか。

スティービー:ダイバーシティーって皮膚の色だけの話じゃなくて、 セクシャリティーの枠にまで及んでいる。 そういえば、「VS」の広告にもとうとうトランスジェンダーやプラスサイズが出ることになったようで。

メイ:遅過ぎる気もするけど。行動しないと、責められる一方だからね。

スティービー:それとドラァグクイーンの位置付けも急上昇中。今回のショーで確信したけど、いまどきドラァグクイーンをフロントローに呼ばないショーはない。「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」といったビッグメゾンも例外じゃなかった。

メイ:もうメインストリーム、という位置付け。

スティービー:ファッションやビューティのキャンペーンにもドラァグクイーンが起用されているのは日常的。彼女たちの美意識からは学ぶものは多いから。

メイ:実際に今のティーンエイジャーなんて、地方の子たちもドラァグクイーンのチュートリアル(動画)を見てメイクを練習しているからね。例えばユーチューバーのジェフリー・スター(Jeffree Star)も、化粧品メーカーがどうやっても売れないような数のプロダクトを一瞬にして売ってしまうほどの人気だし。YouTubeからの収入を合わせると年間200億円以上はあるらしい。

スティービー:そういえば、「VOGUE.COM」の人気ビデオシリーズ、“Beauty Secrets”にも、ルポール(RePaul)をはじめとするドラァグクイーンの大スターたちが登場しているよね。

メイ:最近ドラァグクイーンのようになっているマーク・ジェイコブス(Marc Jcobs)も出てた!

スティービー:本来の自分を出して、自由に生きる。個性の多様化もここまでくると、トレンドを読むのがますます難しくなっていくのかな。

メイ/クリエイティブディレクター:ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター:アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住