ビジネス

ルミネで初日1875万円を販売した「スナイデル」の店舗を徹底解剖

 マッシュホールディングスがルミネ新宿2の「スナイデル(SNIDEL)」を、サステイナブルをテーマにリニューアルオープンした。

 「#SNIDEL_FOR_SUSTAINABILITY」プロジェクトの一環で、今後の新店舗を含め、その時々に応じてリファインしながら、国内34店舗と海外の約90店舗も順次刷新していく。

 1カ月間の改装準備を経て8月29日にリニューアルオープンしたが、当日の売上高は1875万円となり、2月に半年間の期間限定店舗としてオープンした初日日売上高の1208万円を上回った。春夏商材と秋冬商材で単価が違うということもあるが、同店限定商品である「スヌーピー」のワンポイント刺しゅう入りのニットやスエット、佐々木希をモデルに起用して撮影したワンピースやニットセットアップなどが特に好調だった。マッシュホールディングスの近藤広幸社長は「基幹店であり、サステイナブルな新店装の世界1号店のオープンに合わせて、本社に顧客の方々をお招きしてパーティーと先行予約会を開いたり、ルミネでの2週間のポップアップイベント会場で販促をかけたり、さらには顧客に手紙をお送りするなど、さまざまな準備を進めてきた。それでも目標の2000万円に届かなくて泣いているスタッフもいた。ただし、お取り置きの商品などを全員が受け取りに来てくださっていたらクリアできていた。みなよくやってくれたと思う。かつては業者によるまとめ買いなどの姿も多かったが、今は個人のお客さまが増えている実感もあり、よい傾向だと感じている」と語る。

 新店舗は全体の80%以上にエコ・リサイクル素材を使用しているのが特徴で、「使用済みの蛍光灯やプラウン管の廃材を職⼈の技でよみがえらせ、現代に昇華させた素材を、店内の⾯材や什器にふんだんに使⽤した。床・壁・天井にはリサイクル素材を使用。その中にオニキスや天然の無垢板などを調和させ、⾃然が持つ神秘的な⽣命⼒や温かさを感じられる、世界第1弾となる新店装ができあがった」と、自ら陣頭指揮を執った近藤社長が語る。記録的な売り上げとなった新店舗を詳細レポートする。

壁・天板などのガラス部分:リサイクルガラス

 使⽤済みの蛍光灯やブラウン管を回収し、脱⽔銀化処理を経て、原料になるまで安全に適正処理して得られたリサイクルガラスを使用。溶かして透明な板やテーブルに加工したもので、蛍光灯はほのかなグリーンに、ブラウン管はほのかなグレーみがかった色合いに仕上がる。ルミネ新宿店で使った蛍光灯は約7000本分に及ぶ。金沢の職人(サワヤ)が手がけたもので、特別に作った花瓶が好評で、現在は非売品だが販売も検討するという。サワヤによると「私たちの⽣活に⽋かせない蛍光灯は、さまざまな素材が組み合わさってできており、⾮常に廃棄しにくい製品だ。また、⽔銀を含む蛍光灯はきちんとした処理をせず埋め⽴てられてしまった場合、⼟壌汚染を招く⼀因となる。当社では廃蛍光灯を⼿作業で素材ごとに分別し、ガラス部分に含まれている⽔銀を適正に処理できる機械を開発し、各素材のリサイクルと脱⽔銀化処理を実現している。これにより、使⽤済み蛍光灯の廃棄による環境汚染防⽌を⽬指している」。

床:テラゾータイル

 セメントを主原料にする⼈造⼤理⽯の一種。セメントに⼤理⽯チップを混ぜ、⾊粉とともに40cm角のタイルに成形し、研磨して仕上げる。今回は⼤理⽯チップとともに、廃棄ブラウン管由来のリサイクルガラスをミックスすることで、エコながらもキラッと光る質感を演出している。

天井・壁:タイガーボード

 原料は主に「石膏」と「紙(ボード原紙)」。紙は主に、回収された古新聞や雑誌、段ボールなどからの再⽣紙を使用。石膏は天然の鉱⼭から採取される「天然石膏」、⽕⼒発電所などから化学的に生成される「副⽣石膏(化学石膏)」、新築住宅などから発⽣する「廃石膏」の3種をリサイクル使用。⼤気汚染の防止や森林保全などに寄与。

レンガ:リサイクルブリック

 再⽣原料を50%以上使⽤したレンガで、見た目はバージンレンガと変わらない仕上がりに。

階段・⾯:パーチクルボード

 廃棄パレット、梱包廃材、型枠合板などの⽊質廃棄物を、焼却・埋め⽴てせずに再利⽤しており、質感はコルクそのもの。

ミラー:サンミラー

 ⼟壌汚染、海洋汚染、⼈体にも悪影響を及ぼす有害物質として指定されている鉛(なまり)を使用していない鏡を海外から調達。

 マネキンは土に還る生分解性の素材を使用。ラックやハンガーは従来から使っていたものを再利用している。

 いずれもディテールのデザインについては、「『バウハウス』から学び、シンプルかつミニマムな店内に遊び⼼を加え、『スナイデル』の⼥性らしく洗練された洋服の魅⼒を楽しさとともに引き出せるようにした」(近藤社長)という。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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