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アパレルはAIをどう使うべきか、AIベンチャーのファッションポケットに聞く

 ファッション業界にもAIの波が押し寄せている。弊紙「WWDジャパン」でも9月24日号でファッションAIに関する特集を行ったが、その中で日本国内におけるファッションAIの現状について先進企業5社を紹介した。ウェブでは先進企業5社に聞いたAIに対する考え方をインタビュー形式で紹介する。第2回は、今年創業したばかりのファッションポケットをピックアップ。アパレル企業と組んでAIによる生産の効率化を図る他、AIをフル活用した新感覚のファッションECモールを構想する同社が考えるファッションAIの現在とは。

WWD:まず、ファッションポケットの事業内容は?

重松路威ファッションポケット社長(以下、重松):われわれは18〜40歳の流行に敏感な女性をターゲットに、画像情報とそれに紐づく付属情報といった大量のビッグデータからトレンドを分析・予測するAIを作った。具体的にはすでに複数の大手アパレルと組んで19年次シーズンの商品需要予測を立て、MDに生かすという事業を行っている。今後はアクセサリーや美容にまでジャンルを広げ、ライフスタイル全般での需要予測をしたいと考えている。同じAIテクノロジーを使って、これまでにない商品との出合い体験ができる新感覚のECモールも構想中だ。

また、このAI技術に動体検知のAIを掛け合わせて、ショッピングモールや街中における消費者動態分析を行っている。こちらもすでに大手ディベロッパーと組んで実証実験中だが、ショッピングモールでどういう服を着たどんなタイプの顧客がどういった動きをしているのかを分析する仕組みで、これまで入店時・購入時にしか把握できていなかった顧客動向の中間部分を全て可視化し、売り場作りに生かしていくという考えだ。

WWD:自社の強みとは?

重松:人工知能の解析は非常に難しく、AIエンジニアにはエンジニアリングの技術に加えて非常に高度な数学の知識が必要になる。だからこそ、日本に90万人いるといわれるプログラマーの中でもAIを開発できるのはたったの500人程度。当社にはそんなAIエンジニアが10人いて、独自のAI技術を生み出すことができる強みがある。

また、AIビジネスにおいて最も重要なのはビッグデータの作り方。大量の独自データを使ってAIに学習させることで、自社専用のライブラリを作ることが必要だ。すでに世の中にはたくさんのモデルがあって、それを活用すれば誰でもAIを作ることはできる。だが、それらには汎用性がない。自社で独自サービスを作る場合には独自データの集め方がポイントとなる。詳細は非公開だが、当社でも世界中に社外メンバーがおり、もっとも効率的かつ大量のデータを収集することができる仕組みを作った。こうした独自ライブラリ構築のための体制こそが強みだ。

WWD:独自ライブラリの重要性とは?

重松:独自のライブラリを持っていないと、サービスの応用が利かない。企業としてAI技術を商用化することを考えれば、提携する企業によって分析内容は異なるわけで、そのためには独自のビッグデータとその解析方法、加えて分析結果のまとめ方が重要になってくる。いくら分析ができても、企業に対して意味のある分析結果を提示できなけば、AIを使う意味がまるでない。AIを使った仕組み作りなら誰にでもできるが、商用化のためにどんなデータをどのように学習させ、得られた分析結果をどうまとめるのか。この全てを網羅できている企業はほとんどないはずだ。

WWD:独自で集めたデータの使い方も企業によって異なる?

重松:当社では独自手法で集めた500万枚の画像データがあるが、これら全てをトレンド分析のためのAIに学習させると、世界中のマストレンドがわかる。しかし、例えばラグジュアリー企業のトレンド予測を行うのであれば、その中のアッパー層のデータだけを分析しなければ意味がないように、企業ごとに分析の仕方が全く異なるわけだ。

WWD:企業としてはどのような姿勢でAIに向き合えばいいのか。

重松:AIを使って本気で収益を改善しようと思うのであれば、社長や幹部自らが意思を持って向き合わなければいけない。導入コストは億単位でもちろん高価だし、基幹システムのようなものとは違って、精度が高いとはいえ、100%ミスが起きないかといえば、そうとも限らない。一定の失敗リスクを許容しながら、両社で成長していける体力を持っていなければ厳しいだろう。2020年にはAIは当たり前の技術になる。そこに向けて、今から取り組むかどうかが企業の分かれ道になると考えている。