ファッション

“真のニューヨーク・スタイル”を求めて 現役美大生が手掛けるストリートブランド「シュガーヒル」

 文化学園大学からここのがっこう、ニューヨークファッション工科大学(FIT)を経て、武蔵野美術大学に編入したという異色の経歴を持つ現役美大生、林陸也によるストリートブランドが「シュガーヒル(SUGARHILL)」だ。ニューヨーク・ハーレムのシュガーヒルという地区に住んでいたことから名付けられた同ブランドは、昨年6月に始動したばかりだが、すでにKID FRESHINOといった気鋭ラッパーがMVで衣装として着用するなど注目を集めている。3シーズン目を準備中の林デザイナーに、ファッション業界を志したきっかけやブランド立ち上げの経緯、今後の展望について話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):ファッション業界を目指した理由は?

林陸也(以下、林):中学2年生頃から洋服が好きで裁縫の授業などを受けていました。高校在学中にはカナダのバンクーバーに留学したのですが、現地で知り合ったカッコいい大人がみんなデザイナーやクリエイターで、モノ作りへの刺激を受けて火がつきました。それから文化学園大学の舞台衣装科に進学し、ここのがっこうとニューヨークのファッション工科大学(FIT)にも通いました。

WWD:ニューヨークではどのようなことを?

林:FITで1年間、メンズウエアとテーラーリングについてデザインと商業的なことを学びました。周りの友達が「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」や「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」「ランバン(LANVIN)」といったメゾンでインターンやアルバイトをしていたので、そこから学ぶことも多かったですね。学校外では、ここのがっこうの時に知り合った落合宏理さんの「ファセッタズム(FACETASM)」のインスタレーションのお手伝いや、川西遼平さんの「ランドロード(LANDLORD NEW YORK)」の立ち上げから1年間インターンをしていました。

WWD:「シュガーヒル」を立ち上げたきっかけは?

林:ブランドを立ち上げたい気持ちは元々あったんですが、きっかけは川西遼平さんの一言ですね。帰国前に「ここで学んだことを形にしてみろ」って(笑)。さらにそのタイミングで「リーバイス(LEVI’S)」の“506XX”を使ったつなぎを作って着ていたら周りの大人たちに「そんな良いものが作れるならブランドとして形にしなさい」と勧められて。KID FRESINOくんともその時に出会って「このつなぎ着たい!MVで着る!」と言われ、実際に2つのMVで着てもらっています。僕にとっては最初の“お客さん”です。まぁいろいろタイミングが重なった結果ですね。なのでファーストシーズンは、型数は少ないんですが自分が見てきたもの、作りたいものをギュッとした感じで、つなぎとチェックシャツは定番アイテムとしてこれからもやっていくつもりです。

WWD:ブランド名にこだわりはなかった?

林:特にこだわりはないですね。響きがキャッチーだし、何よりも住んでいた時に立ち上げたのが大きいですね。ソーホーとかブルックリンの世界の最先端なスタイルに比べて、シュガーヒルは昔からずっと同じ人が住んでいる古き良き街で“真のニューヨーク・スタイル”みたいな。クラシカルな感じがブランドイメージとも合っていたので。後付けですけど初めてヒップホップの存在を知らしめた、シュガーヒル・ギャング(The Sugarhill Gang)ともかけています。

WWD:帰国してからは?

林:ブランドを立ち上げたこともあり、学校のカリキュラムをこなしていくよりも個人的な制作に時間を割くことができる武蔵野美術大学に編入しました。編入してからは学生とデザイナーの両立がうまくできていて、コレクションの準備もスムーズに進められています。あと落合さんに誘われて「ファセッタズム」でアルバイトをしています。

WWD:2シーズン目のルックブックはニューヨークで撮影したと聞きましたが?

林:2シーズン目のテーマが環境を転々としている自分と重ねた“JUST NEED NEW FRIENDS”だったので、モデルはニューヨークのスケートパークで15人くらいをストリートキャスティングしました。そこで声をかけた子たちが実は地元ではちょっとしたプチ有名スケーター達だったみたいで、お礼にあげたTシャツを着て滑っているのを他のスケーターが見て、「『シュガーヒル』ってブランド、イケてるね」みたいに認知されたらいいなって(笑)。撮影も兼ねて向こうに種を蒔いてきた感じです。

WWD:3シーズン目を控えた今後の展望は?

林:形はどうであれ卒業までにファッション・ウイーク正式参加が目標です。が、まだまだ認知度が低くECのみでの取り扱いなので、インスタグラムで拡散される施策なども考えて、7月に3シーズン目を発表します。学生のノリで製作していくつもりはありませんが、学生のノリでしかできない企画が強みだと思っています。調子にも乗っているので海外メンズと同じようなスケジュールで来週展示会を開きます(笑)。冷やかすつもりでも構いませんので是非来てください!

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

東京デザイナーがさらけだす“ありのまま”【WWDJAPAN BEAUTY付録:「第7回 WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」結果発表】

3月25日発売号の「WWDJAPAN」は、2024-25年秋冬シーズンの「楽天ファッション・ウィーク東京(RAKUTEN FASHION WEEK TOKYO以下、東コレ)」特集です。3月11日〜16日の6日間で、全43ブランドが参加しました。今季のハイライトの1つは、今まで以上にウィメンズブランドが、ジェンダーの固定観念を吹っ切ったことでした。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。