花王の「エスト(EST)」は、新商品“クラリファイイング スカルプジェル”(250mL、6050円)を6月13日に発売する。“スカルプ”という名称がついてはいるものの、実はこの商品の主眼は「スキンケア」に置かれているという。3月4日、都内で商品および開発背景についての発表会が行われた。
「肌のくすみは、実は頭皮が原因でした」。
登壇した研究員の言葉に、驚いた参加者も少なくなかったはずだ。発表内容の要点を整理すると、頭皮から顔には「皮脂酸化伝播のメカニズム」があり、頭皮の角栓が顔のくすみの原因になっている。そして新商品“クラリファイイング スカルプジェル”は、この頭皮の角栓を分解・洗浄することで肌のくすみを防ぐという、新しいアプローチを採用している。
顔と頭皮はつながっている。であれば……
一連の研究成果は、花王スキンケア研究所に所属する中村恭子研究員の発想の転換から生まれた。
まず顔のくすみは、皮脂が酸化し、肌のタンパク質と結びつくことで生じる。また、皮脂を分泌する皮脂腺の数は、顔よりも頭皮の方が約2倍多いことが分かっている。顔と頭皮は一枚の皮で繋がっていることから、中村研究員は「顔のくすみの起点が頭皮にあるのではないか?」という仮説を立てた。
仮説を検証するため、定量データを分析した結果、「頭皮の酸化が進んでいる人ほど、顔のくすみも進行している」ことが明らかになった。さらに、頭皮が酸化する原因は主に「角栓」であり、そこから皮脂を伝わって、酸化が顔へと波及していくという現象が確認された。つまり角栓は、顔のくすみの隠れた要因だったのだ。
また加齢とともに頭皮の角栓が増加することも判明し、エイジングケアの一環としても、頭皮の角栓を洗浄することが重要であると示された。
こうした知見を元に開発した“クラリファイイング スカルプジェル”は、「エスト」の既存の洗顔料である“クラリファイイング ジェル ウォッシュ”(130g、4950円)の角栓洗浄技術を応用し、酸化したタンパク質を含む古い角質まで分解・洗浄する。毛髪が密集する頭皮の毛穴にも行き渡るよう、とろみのあるローション状の剤型にこだわった。
製品化前のテストでは、使用者から「頭皮のかゆみが減った」「髪がふんわりした」というヘアケア効果に加え、「顔色のくすみが気にならなくなった」という声が聞かれたという。
スキンケアに向き合ってきた「エスト」の角栓ケアに関する知見と、研究員の発想力の融合により生まれた“クラリファイイング スカルプジェル”。まさに大手メーカーならではのイノベーションの賜物だ。
スキンケア文脈で提案する
頭皮ケアの新しい価値
スカルプケア市場は近年拡大傾向にある。女性用スカルプケア商品国内市場規模は、2020年の320億円から23年には562億円に成長した(出典:富士経済「化粧品マーケティング要覧2023」)。しかし、国内スキンケア市場(23年:1兆1550億円)と比較すると、まだまだ小規模にとどまる。
髪に覆われた頭皮のケアは、第一印象を左右する顔のケアに比べて優先度が低く、大ヒットも生まれにくいのが現状。その点、「エスト」の“クラリファイイング スカルプジェル”は、あくまで「スキンケア」文脈での提案であることがミソだ。頭皮ケアは肌のシワやたるみケアにつながることは知られつつあるが、肌のくすみケアにも効果的という事実には、新鮮な驚きがある。頭皮ケアを「肌美容の習慣」として捉えるきっかけを作る商品になるかもしれない。